「老齢化」する森林、温室ガス吸収量6年で2割も減少…背景に林業の衰退

「老齢化」する森林、温室ガス吸収量6年で2割も減少…背景に林業の衰退

 全国の森林面積はほとんど変わっていないのに、森林が吸収する温室効果ガスの量は、2020年度までの6年間で2割も減った。林業の衰退で、光合成量の少ない老木が増えたのが要因だ。温室効果ガスは排出削減にばかり目が行きがちだが、吸収量を維持しなければ、政府の削減目標の達成はおぼつかない。(中川慎之介)

老齢化5割に

 高級木材の「山武(さんぶ)杉」で知られる千葉県北東部の山武(さんむ)市。森林に一歩足を踏み入れると、幹回りが細く、立ち枯れている木が目に付く。「間伐が行われていないから、幹が細いまま成長が止まってしまった。伐採すべき時期を迎えているが、木材需要や林業の担い手不足のため放置されている」。市農政課副主幹の男性(49)はため息をつく。

 市によると、市面積の4分の1を占める森林(3900ヘクタール)のうち、間伐や伐採などの経営計画が立てられているのは12%にとどまる。2019年には台風15号の強風で衰えた木々が倒れ、約2週間に及ぶ大規模停電となった。

 日本の人工林は、多くが戦後や高度経済成長期に植樹され、伐採時期とされる50年を迎えつつあるが、手入れがされずに放置されるケースが増えている。林野庁によると、全国の人工林の面積は1980年代以降、1000万ヘクタール余りでほぼ変わっていないが、植樹から51年以上の老齢化した林の割合は、2007年が2割(215万ヘクタール)だったのに対し、17年は5割(510万ヘクタール)に達した。

吸収量2割減

 森林の老齢化は、地球温暖化防止の面でもマイナスとなる。二酸化炭素(CO2)の吸収量は、光合成が活発な若木と比べて老木は少ないからだ。

 環境省によると、老齢化の影響で森林のCO2吸収量は、14年度の5220万トンから20年度は4050万トンと、わずか6年で22%も減少した。一般家庭の年間排出量に換算すると400万世帯分に当たる。

 政府の温室効果ガスの削減目標は、人類の活動による排出量から、森林による吸収量を差し引いた実質的な排出量で算出している。今のペースで老齢化が進めば、数年のうちに30年度の削減目標(13年度比で46%削減)で想定する森林の吸収量3800万トンを割り込む恐れが大きい。林野庁幹部は「なんとか下げ止まらせなければならない」と危機感を口にする。

 林業の衰退は、安い外国産木材の輸入や就業者の高齢化など複数の要因が絡み合い、「特効薬」は見当たらないが、森林の健全化に向けた地道な取り組みも進む。

 政府は24年度、地球温暖化防止を主な目的とした森林環境税を導入する。個人住民税に年間1000円を上乗せして徴収し、年間約600億円と見込まれる税収を自治体に配分して森林整備の財源に充てる仕組みだ。

 すでに対象となる自治体には先行して、別の財源を使って配分を始めている。山武市はこれを元手に、林政に詳しいコンサルティング会社から助言を受け、森林整備に向けた新たなプランを検討している。

 昨年10月には、改正木材利用促進法が施行され、公共施設だけでなく、民間の建築物でも木材の積極的な利用が進められることになった。

 豊かな森林の資源を生かし、吸収量の増加と排出量の削減の「一挙両得」を狙うのは岡山県真庭市だ。市出資の新電力会社が運営する木質バイオマス発電所の燃料として、地元の間伐材を積極的に活用する。化石燃料を使わずに発電することで温室効果ガスの排出を抑制できる。さらに売電利益の一部を山林所有者に分配して間伐や植林を促し、森林を若返らせて吸収量を増やすのも狙いだ。

 市の担当者は「脱炭素に向けて森林資源を適切に循環させていくことが欠かせない」と話す。

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