補償規定は「24時間不通」 KDDIが検討表明、対応に注目
通信障害を起こしたKDDI(au)の高橋誠社長は3日の記者会見で、利用者への補償を検討すると語った。ただ個人向け携帯電話サービスの契約ルールを定めた約款では、サービスを全く利用できないか、それと同程度の状態が24時間以上連続した場合に「損害を賠償する」と規定。今回の「利用しづらい状況」が当てはまるかどうかは不透明で、実際の対応が注目されそうだ。
KDDIの約款は、24時間以上続けて不通であれば、基本使用料の日割り額や、直前6カ月間の1日当たりの平均通話料・データ通信料などを基に24時間単位で損害額を算出し、契約者に支払うとしている。
「全面復旧は5日夕めど」 KDDI、つながらない場合「再起動を」
KDDIは4日夜、オンラインで会見を開き、大規模な通信障害について全面的な復旧は5日夕方をめどにしていると発表した。障害は2日未明に発生。4日夕に音声通話とデータ通信ともに全国的に「ほぼ回復した」としている。つながりにくい場合は電話機の再起動などを試すよう促している。最大で約3915万回線に影響したという。
「責任を果たしていない」閣僚から批判相次ぐ KDDI通信障害
通信大手KDDI(au)の大規模な通信障害を巡り5日、閣僚からは批判が相次いだ。
金子恭之総務相は5日の閣議後記者会見で、通信大手KDDI(au)の大規模な通信障害に関し「復旧作業終了と公表した後も通話が利用しづらい状態が続いた。利用者目線で責任を果たしたとはいえない」と述べ、KDDIの情報周知に問題があったとの認識を示した。
金子氏は「前例にない大規模な障害。同様の事案が二度と生じることがないよう抜本的な検討が必要だ」と指摘。利用者への通知方法を含む一連の対応についてKDDIに報告を求め、外部有識者を交えて検証を進めると強調した。
KDDIの通信障害は2日午前1時35分ごろに発生。全国で音声通話やデータ通信が利用しづらい状況となり、携帯電話の利用者など最大3915万回線に影響が出た。KDDIは4日午後に音声通話、データ通信とも「全国的にほぼ回復した」と公表したが、その後も顧客の利用状況の確認が続いており、完全復旧したかどうかは5日夕をめどに判断するとしている。
通信障害の影響で気象観測データの収集や物流など幅広い分野に混乱が広がった。119番通報にも支障が出たことに対し、金子氏は「命に関わりかねないことに影響が出たことは極めて遺憾。事態を深刻に受け止めている」と述べた。
大垣共立銀行(岐阜県大垣市)の現金自動受払機(ATM)の一部も利用できなくなるなど決済機能にも影響が広がり、鈴木俊一金融担当相も同日の閣議後会見で「大変遺憾だ」と批判した。【加藤美穂子、高田奈実】
医療現場でトラブルも
後藤茂之厚生労働相は5日の閣議後記者会見で、KDDIの大規模通信障害の影響で、一部の医療や介護の現場でトラブルが生じたことを明らかにした。固定電話や別の通信会社の携帯で代替し、対応したという。
厚労省は現在、各都道府県から情報を収集している。それによると、当直医師や、新型コロナウイルス感染症の療養者が利用する酸素飽和度を測る機器「パルスオキシメーター」を配送する運転手、訪問看護ステーションなどと連絡が取れなくなったという。
通信障害を受け、厚労省は4日、各都道府県に事務連絡を出した。リスクの高い在宅患者と連絡が取れない場合の連絡手段の確保や、訪問による安否確認などの体制整備を求めた。後藤氏は「医療や介護の提供に重大な支障がないよう、日ごろから体制を取っていく」と強調した。