「Excelどれくらい使える?」と聞かれたら…気になる初級~上級の目安とは?
「君、どれくらいExcelを使える?」と聞かれたときに、自信を持って「私は上級(中級・初級)レベルです」と答えられる人はどれくらいいるだろうか。また、Excelの講座を受けようとしたときなどに、ふと「自分はどのレベルを申し込むべきだろう」と悩んだことはないだろうか?Udemyのオンラインレッスンの他、企業でのExcel研修を多数行い、またExcel関連の著書も多い熊野整氏に「Excelの初級、中級、上級レベルとは?」という質問をぶつけてみた。
Excelのスキルが分からない
オフィスでは多くの人が使っているExcel。そのスキルは人によってさまざまだ。
Excelのスキルレベルを明確に定義しているものとしてはMOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト。ExcelやWordなど、マイクロソフトのオフィス製品の利用資格を証明できる資格)があるが、この資格試験は「一般レベル」「上級レベル(エキスパート)」の2段階になっていて、世間でいうところの初級・中級・上級が指すものとはややズレている印象がある。
何ができれば上級、何ができれば中級といったルールがはっきりと明確に決まっているわけではないのだが、私が研修を担当している企業でよく使われている区分と、具体的なスキルを紹介する。
(1) 初級レベル
Excelの基本操作ができる。仕事をする上で最低限必要なレベルのスキル。
・基本計算(足し算、引き算など)
・検索・置換
・印刷
・保存
・パスワードの付け方
(2) 中級レベル
見やすく、ミスなく、速いExcelスキル。
・見やすい表グラフの作成
・計算チェック(F2、トレース)
・基本的な関数(SUM、IF、VLOOKUP、SUMIF、COUNTIF)
・ピボットテーブル
・フィルター
・絶対参照
・基本的なショートカットキーが使える(コピー&ペースト、Ctrl + 矢印キーでセル移動、Altキーの使い方など)
(3) 上級レベル
業務に合わせたExcelスキル。
初級、中級と違って、「これができればOK」と言いづらいのが上級レベルだ。一口で「Excelで行う作業」といってもかなり広範囲にわたり、業務によって必要なスキルが変わってくるため「これができればExcelマスター」といった広く使える基準はない。
Excel上級者は、仕事の内容に合わせたExcelのスキルを身に付ける必要がある。例えば人事労務系であれば時間に関する書式(hh:mm)は必須だろうし、プロジェクトマネジャーであれば日数を計算する関数(NETWORKDAYS関数)、営業が売り上げの集計をするときはSUMIFS関数、SUBTOTAL関数など、仕事や業界に応じて頻出する関数は使いこなせるようになっておきたい。
なお、投資銀行、コンサルティング会社や、新卒用のExcel研修ではどんな内容を教えているかについては明日公開の記事でまとめているので、そちらも参照してほしい。
マクロは習得すべき?
「Excelスキルの最高峰といえばマクロやVBAでは?」と思っている人も多いだろう。実際、企業のExcel研修でも、「マクロを社員に学ばせたほうがいいでしょうか?」といった相談を受けることがある。
もちろん学ぶのはいいことだし、使えるに越したことはないが、どういうときにマクロが有効なのかを理解しないと、仕事の現場では生かせない。
マクロとは、ソフト(Excel)上で行う作業を自動化することを指し、面倒な繰り返し作業を1クリックで可能にする。特に威力を発揮するのは、例えば「行の挿入を100回繰り返す」「100個のExcelファイルのデータを1つのExcelファイルに集約する」といったケースだ。手作業でやると長い時間がかかる単純作業は、マクロでプログラムを組むことで、効率的に処理できるようになる。
仕事でマクロを使うケースとしては、例えば「売り上げデータを基に、顧客50社それぞれに請求書をExcelファイルで作成して、さらにPDFに変換する」「ある集計の計算を、30個のシートそれぞれ行うという処理を、毎月やる」といった作業が挙げられる。一回マクロを組めば、後は格段に作業がラクになる。
下のExcelシートを見てほしい。ある企業の商品A、Bについて、1~4月までの販売数をExcelにまとめたものだ。全ての支店について行を挿入し、商品A、Bの販売数の合計を月ごとに算出、終わったら全体の合計を計算。さらに背景色を付けて見やすい表にする。
【作業前】
【作業後】
難しくはないが、それなりに手数が多く、時間がかかって面倒だ。しかしこれを、マクロで行うと一瞬で終了する(動画参照)。同じ作業を何回も繰り返すのであれば、操作を自動化できるマクロは威力を発揮する。業務に必要だと思うことが多ければ、身に付けるのは悪くない選択だ。
MOSは必要なのか
最後に、冒頭で紹介したMOSについて。MOSはマイクロソフトのオフィス製品の利用資格を証明できる資格で、Excelの場合は「Excel 365&2019」「Excel 2016」「Excel 2013」のそれぞれに「一般レベル」と「上級レベル(エキスパート)」があるので、全6種の試験がある。
私が研修を担当している企業でいえば、例えば総合商社などでは社員にMOSを受験させている。ただし全社員必須というわけではなく、新卒社員などこれからExcelを仕事で使う人が、その前準備としてMOSを取得して基礎スキルをマスターしておこうという使い方をしている。
新入社員や転職時など、「これから仕事でExcelを使うのか、どれくらいのスキルが求められるか不安だな」と思う人は、MOSを取得すれば「Excelの基本はできます」と胸を張れる。自信を持って仕事に取り組めるだろう。