注文できない「架空商品」メニューに掲載 ドミノ・ピザ「需要調査」に客困惑、識者が指摘する改善点

注文できない「架空商品」メニューに掲載 ドミノ・ピザ「需要調査」に客困惑、識者が指摘する改善点

 宅配ピザ大手「ドミノ・ピザ ジャパン」が一部の客に実施しているインターネット調査が、消費者視点に欠けているとしてひんしゅくを買っている。

 同社は需要予測のため、実際には販売していない新商品候補をそれとわからない形でメニューに紛れさせる場合がある。客が注文を決めると「ネタばらし」し、"お詫び"にクーポンを提供する。結果的に、おとり広告のように客をだます形となる。

 こうした手法は「fake door test」と呼ばれ、識者は反発を招いた原因を「偽扉が精巧すぎた」と分析する。

■「この商品はお客様ニーズの調査で...」

 ドミノ・ピザはマーケティングリサーチの一環として、「架空商品」を定期的にウェブサイトに掲載している。

 最近では、好みの味を4種類組み合わせられるピザ「お好きにクワトロ」が対象だった。J-CASTニュース記者が5月中旬、ドミノ・ピザのトップページから「配達注文」を選択し、受け取る住所、日時を指定すると約50あるメニューの中にこの商品があった。

 商品の見せ方は他と同じで、紹介文、展開サイズ、価格が並ぶ。「詳しく見る」を押下すると、商品がポップアップされ「カートに入れる」「利用しない」の二択を迫られた。

 前者を選ぶと、カート画面には遷移せず「プレゼント ポテトフライMケチャップ付き」と書かれたバナーが表示された。「お選びいただきありがとうございます。ご協力の感謝とご不便をおかけしたことへのお詫びとして今回のご注文限定で、即時ご利用可能なクーポンをご用意させていただきました」と説明しており、小さく「この商品はお客様ニーズの調査で、実際にはご注文いただけません」と注釈があった。

 「お好きにクワトロ」はツイッターで注目を集めた。遭遇した客が体験を共有すると、1000以上リツイートされ議論を呼んだ。悪い印象はないとの受け止めがある一方、不快な調査手法だと感じる人も少なくなかったようだ。

買意欲の低下&ブランド毀損に

 SNS投稿を精査すると、この施策は数年前から複数の商品で行っている。22年1月ごろには、存在しない「産直ドミノ」シリーズの目撃談が複数投稿されており、3か月後に4種類の味が楽しめる「クワトロ・産直ドミノ」が発売された。味の絞り込みの参考にしたと考えられる。

 ドミノ・ピザとしては調査費用を抑えられるうえ、データの精度が高く、クーポンによる販売促進にもつながるメリットがあるとみられる。

 実際に体験者に話を聞くと、30代の男性は「最初に『ありがとうございます』と出るので、注文に成功していると思っていたのにカートを見ると何も入っておらず、意味がわからず何度も注文を繰り返して10分以上費やしてしまった」と振り返る。状況を理解すると苛立ちを覚え、空腹だったためなおのこと強く感じたという。

 結局、競合他社で注文し、以降はドミノ・ピザを利用していないと答えた。購買意欲の低下ばかりか、ブランド毀損も招いた格好だ。男性は「吟味した上で選んだものがないというのは、こちらに選び直しの手間・時間が発生してしまうので、ユーザーのことを考えた施策ではない」と指摘する。

 40代の男性も「率直に不快に感じました」と苦言を呈す。「最初から『ニーズ調査』と言われて選択していたら納得できたかもしれません」とし、改善を求めている。

諸刃の剣となったFDT

 ドミノ・ピザの手法は、海外で「fake door test」(FDT)と呼ばれる。IT業界でよく知られており、新製品のアイデアを検証する際などに使われる。

 FDTに詳しいデータサイエンティストのTomi Mester氏はJ-CASTニュースの取材に、FDTは非常に効率的な手段で、一般的には否定的な反応はほとんど寄せられないと明かした。

 しかし「ブランドが大きいほどリスクも高まる」とし、客が騙されたと感じないようコミュニケーションの専門家を交えた設計を勧める。多くの人が望む重要な機能を偽造するのは摩擦を生みやすいとも注意を促した。

 そのほか、購入ボタンを待機リストの登録フォームに置き換え、十分な人数が集まったら製品を作ると告知する――といった術も紹介した。

 プロダクトマネージャーのClement Kao氏は、ドミノ・ピザの誤りは精巧すぎる「偽扉」だと取材に指摘する。

「ユーザーフローが非常に細かいステップを踏んでおり、客の期待値が高くなりすぎます。客はフローの後半でこの商品が存在しないことを知り、ひどく落胆することにつながった」

 Kao氏はより早い段階でテストである旨を案内すれば、客の失望感を減らせると助言する。

 ドミノ・ピザ ジャパン広報は6月1日、取材に対し「今後の商品開発の参考とさせて頂いております」と調査の狙いを明かした。「このようなお客様調査の手法は、米国で近年採用が広がっている新しいタイプの調査手法で、お客様が求める最高の商品とサービスを提供することを目的としています」と補足する。

 客の個人情報は収集しておらず、改善の意向の有無については回答がなかった。

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