選挙の投票用紙、実は「紙ではありません」…文具マニアも熱視線

選挙の投票用紙、実は「紙ではありません」…文具マニアも熱視線

 選挙で投票に行くたびに感じていた投票用紙の書き心地の良さ。四角く区切られた記入スペースで、投票用紙と相対し、「よしっ」と鉛筆で候補者名を記入する。ツルツル、スベスベの紙に小気味よく鉛筆の黒が移り、その紙を折りたたんで投票箱に入れると、なんだか自分も「大人としての責任」を果たしたような気分になってホッとした気持ちになる。投票に行った人ならそんな感覚になったことがあるだろう。

 あのステキな書き心地の投票用紙を作っているのは、合成紙メーカー「ユポ・コーポレーション」(東京)だ。その担当者に書き心地を実現する秘訣(ひけつ)をオンライン取材で聞いた。

 「あの紙はどうやって作られているのですか?」

 「紙ではありません。合成紙『ユポ』です」

 質問するや否や、投票用紙を担当する加工品部の鹿野民雄部長はすぐにピシャリと言った。そして、こう付け加えた。「紙ではなく、フィルムに近いものと思ってください」。一体、どういうことだろうか。

 「紙」には明確に定義がある。紙とは、木材の繊維をほぐした「パルプ」をシート状にしたものだ。一方で、投票用紙の原料に木材は使われていない。使用するのは、「ポリプロピレン樹脂」で、これに無機充填剤を混ぜて熱で溶かし、紙のような厚さになるまで引き延ばす。そうすると、微細な穴が無数に開いたフィルムができる。この穴に鉛筆の黒鉛が削れて入ることできれいに黒が移る仕組みになっている。これが、投票用紙に使われる合成紙「ユポ」の正体だ。

 このユポを投票用紙として販売しはじめたのは1986年のこと。そこから36年の時間をかけて、全国の自治体から口コミで絶大な人気を勝ち取っているのだ。2021年に行われた衆議院選挙では、なんと全ての都道府県でユポの投票用紙が使われたという。その理由は「折りづらさ」にあるという。

「即日開票」が生んだ逆転の発想

 現在、国内の選挙の大半は「即日開票」で行われる。公職選挙法の第65条で、開票は「すべての投票箱の送致を受けた日又はその翌日に行う」と定められているからだ。

 次の参院選でも投票日の午後8時に投票が締め切られる。投票箱に入った投票用紙たちは、期日前投票分も含めて、大きな体育館などの開票所に運び込まれ、開票作業が行われるのだ。この作業で、自治体職員らが投票用紙に記入された候補者名を確認しながら、得票状況を明らかにしていく。開票作業は日をまたいで行われることもしばしばだ。とにかくスピードと正確性が求められる。

 これを普通の紙で行うとどうなるか。紙が折りたたまれたまま投票箱から出され、1枚ずつ開票作業をする人が紙を開かなければならない。だが、ユポは違う。樹脂で作られているため「折れにくい」という特性を持つユポは、実は投票箱に入った瞬間、勝手に開いているのだ。そのため、開票所で投票箱から出された瞬間、書かれた候補者名が一目瞭然で分かるのだ。そのまま、すぐに「計数機」にかけることができるため、大幅にスピードアップすることができるという。

 もともとユポは、登山の「山地図」に使われていた。雨にぬれてもへたることなく、破れることもほとんどない――。そんな特性がアウトドアにピッタリだと採用されていたが、折れ目が付きにくいのが地図を作る上での悩みの種だった。そこを「逆転の発想」(鹿野部長)で、投票用紙に転用したことがヒットにつながった。今では選挙のたび、文具マニアらが「書き心地が良い」とSNSに投稿する人気ぶり。破れにくい特性を利用して、投票用紙だけでなく、選挙ポスターにも使われている。

投票用紙で選挙に貢献

 ユポ・コーポレーションは、小・中学校が行う選挙の「模擬投票」にもユポを提供し、本番さながらの書き心地で選挙について考えてもらうという活動もおこなってきた。選挙の一端を担う会社の使命感は強い。

 ここ数年、選挙の投票率は低調の一途をたどっているが、鹿野部長は「ご注文いただいた分は、選挙に影響が出ないように遅滞なく供給していきたい」と引き締まった表情で語り、「一人でも多くの方に投票所に足を運び、書き心地を実感していただきたい。そういう形で投票率アップに貢献していけたら」と話した。

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