「ネット中傷」法務省が削除求めても、3割は消されず…接続業者の理解難しく

「ネット中傷」法務省が削除求めても、3割は消されず…接続業者の理解難しく

 インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷を巡り、法務省が「違法性がある」と判断して国内外のプロバイダー(接続業者)などに行った削除要請のうち、3割が応じられていなかったことがわかった。法務省や総務省などが参加する有識者検討会は実効性を高めるための議論を進めており、今夏にも要請の法的根拠を明確化する報告書を取りまとめる方針だ。

 法務省のまとめでは、2019年1月から昨年10月までに削除を要請した件数は1173件。このうち、818件(69・7%)はプロバイダー側が全部または一部の削除に応じたが、355件(30・3%)は全く削除されなかった。

 類型別では、元交際相手らの裸の画像を勝手に公開する「リベンジポルノ」を含む性的画像は80・8%が、プライバシー侵害は72・3%が削除されたものの、被差別部落に関する情報は54・8%にとどまっていた。こうした違いは、刑事罰が科されうるリベンジポルノの場合、接続業者側も要請を受け入れやすい一方、日本固有の歴史や経緯が関係する被差別部落の問題は、海外の事業者を中心に理解されにくいことなどから生じているとみられる。

 法務省の削除要請は、まず被害者の相談を受けた各地の法務局が、外部の弁護士に見解を聞くなどして違法性を判断。さらに本省で法曹資格を持つ担当者数人がプライバシー侵害や名誉毀損(きそん)などの裁判で違法性が認定された判例に照らし、要請の必要性を判断するという2段階の審査体制をとっている。要請に強制力はないものの、法務省はその投稿が裁判の対象になった場合、削除や賠償が命じられる可能性が高いとみている。

 法務省の要請に接続業者側が応じない場合、自ら削除を求める裁判を起こさなければならないなど被害者側の負担が増える。一方、業者側も安易に削除に応じれば、憲法が保障する「表現の自由」を軽視しているとの批判を招きかねず、対応に苦慮している面もある。このため、法務省内外から「要請に応じやすくするため、根拠を明確に示すべきだ」との意見が出ていた。

 有識者検討会は昨年、どのような投稿だと法的に削除が認められるのかについて、検討を開始。▽「バカ」「死ね」といった文言の大量投稿▽集団へのヘイトスピーチ▽被差別部落に関する書き込み――など、過去の判例を基に違法性の有無や線引きを議論している。取りまとめた報告書は接続業者側に公表して、要請への理解を求める方針だ。

 検討会の座長を務める宍戸常寿・東大教授(憲法)は「海外事業者の場合、日本の法制度や判例への理解が十分でないため、削除に応じないケースもある」とした上で「法務省の削除要請は信頼に足るものだと事業者が受け取れるよう、根拠を分かりやすく整理する必要がある」と話している。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏