大規模接種センター モデルナ製ワクチンを使用へ 防衛省

大規模接種センター モデルナ製ワクチンを使用へ 防衛省

 新型コロナワクチンについて防衛省は、近く再開する予定の自衛隊による大規模接種センターでモデルナ製のワクチンを使用する方針を決めました。18歳以上を対象に接種を行います。

 また、東京と大阪にセンターを設置する方向で調整を進めています。

大規模接種センター モデルナ製ワクチンを使用へ 防衛省(2022年1月12日)

「追加接種」ファイザーとモデルナどちらが正解?

各社が開発急ぐ「オミクロンワクチン」の是非

南アフリカ共和国から広がった「オミクロン株」が、新型コロナウイルス変異株の勢力地図を塗り替えようとしている。日本国内でも市中感染が報告され始めた。

一番の気がかりは、ワクチンの効果の低下や、接種を完了していても防ぎきれない「ブレイクスルー感染」だ。

同じワクチンの「追加接種」に意味はある?

現時点での最善策は「追加接種」――というのが世界の共通認識だ。イスラエルは世界に先駆け、4カ月間隔で4回目接種の実施を発表した(12月22日AFP通信)。

「同じようなワクチンを繰り返し打つだけで意味があるの?」と思う人もいるかもしれない。しかし最新研究を見る限り、ファイザー製もモデルナ製も、3回接種を受ければオミクロン株にもギリギリ対抗できそうだ。

ファイザーについては12月14日、イスラエルの共同研究の成果が示された(査読前論文「medRxiv」)。ファイザー2回目接種から5~6カ月経った人の血液では、オミクロン株に対する十分な「中和抗体価」(無力化し予防する能力)は確認できなかった。

それが3回目接種で100倍に回復。デルタ株への効果に比べれば4分の1にとどまるが、それでも十分との見方だ。

モデルナ製についても12月15日、研究結果が公表された(査読前論文「medRxiv」)。やはり2回接種者の血液では、オミクロン株の中和能力は従来株と比べて1/84~1/49と、大幅に減少した。

3回目接種後はワクチン半量だったが、従来株比1/6.5~1/4.2で踏ん張り、減少スピードも緩やかで、十分と判断された。

つまりモデルナの3回目接種では、ワクチンの量が半分で済む。同社ワクチンは「モデルナアーム」(2週間後に接種部位に現れる局所的な炎症。T細胞の反応とされる)が起きやすいことも指摘されてきた。半量だとこうした副反応もマイルドになると期待できる。

問題は、追加接種の時期と、ファイザー製 or モデルナ製の選択だ。

国内ではすでに両方のmRNAワクチンが追加接種の薬事承認を受けている。その時期について厚生労働省は当初から、「原則2回目接種から8カ月後以降」としてきた。

だが、この「8カ月」という数字は科学に基づくものではない。

「8カ月後以降」は科学を無視した大号令

ワクチン2回接種で得た新型コロナへの抗体の効力は、オミクロン株でなくても半年で大幅に減ることが世界中から報告されている。

アメリカのブラウン大学他の研究チームの報告では、ファイザーワクチン接種完了の半年後、抗体価は80%以上減少していた。国内でも同様の報告が続々上がってきている。

当然、国内でもファイザー製とモデルナ製ともに、追加接種は2回目接種の日から「6カ月」以降として薬事承認されている。

実際の運用はどうか。世界的には最新の研究結果等を踏まえ、6カ月すら待たないところも多い。オミクロン株の急拡大を受けた迅速な判断だ。

EU医薬品庁(EMA)は加盟国に対し、接種完了から6カ月以降の追加接種を推奨してきた。12月7日には最新データに基づき、「最初の接種完了から、早ければ3カ月後に実施することは安全で効果的」と説明した。

オミクロン株の出足が早かった英国も、ジョンソン首相が同12日、2回目接種から「3カ月」以上を経た18歳以上の国民全員を対象に、追加接種の年内前倒しを表明している(12月13日「BBC」)。

対してわが国では、一時は11月早々に「6カ月」の例外を設ける方針も示されたものの、あっさり厚労省通知によって骨抜きにされた。例外の対象を、クラスターが発生した医療機関に限定し、事前に厚労省に相談を求めたのだ(11月17日厚生労働省自治体向け説明会資料「新型コロナウイルスワクチンの接種体制確保について」)。

すったもんだの末、岸田首相は12月17日、医療従事者や高齢者施設の職員・重症化リスクの高い利用者の合計3100万人分に限り、接種間隔を「6カ月」以降とする前倒しを表明した。

それ以外の高齢者も来年2月以降、2回目から「7カ月」経った人から順次接種を受けられるようにするという。自治体は振り回されっぱなしだ。

国内のドタバタ劇はひとえに、ワクチン供給・配送が追いついていないことによる。上記3100万回というのは、今あるファイザー製・モデルナ製を合わせた在庫分と見られる(ちなみに岸田首相は「6カ月」表明の前日、同社CEOに電話で直談判し、供給の前倒しを依頼したようだ。だが、確約が取れたという話は聞かない)。

ファイザー・モデルナともに在庫が限られている中での見切り発車なら、両ワクチンをちゃんぽんに打つ「交互接種」の必要が出てくる。

例えば、これまで自治体を通じた個別接種はファイザー製だったが、3回目ではモデルナ製も使用されることになる。職域接種や集団接種でモデルナ製を打った人が、3回目はファイザー製ということもありえる。

1・2回目の交互接種については、すでに9月17日の第24回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で了承されている。追加接種での交互接種も、11月15日開催の同分科会で認められ、厚労省がリーフレットまで準備して盛んに推し始めた。

同省がその根拠としているのが、10月に公開されたアメリカの共同研究(査読前論文「medRxiv」)だ。それによると、組み合わせによって、3回目接種から15日後の中和抗体量(平均)の増加が、以下のとおり違ってくる。

●1・2回目ファイザー + ファイザー追加 → 20倍

●1・2回目ファイザー + モデルナ追加 → 31.7倍

●1・2回目モデルナ + モデルナ追加 → 10.2倍

●1・2回目モデルナ + ファイザー追加 → 11.5倍

興味深いことに、追加接種では1・2回目とは違うワクチンを選んだほうが、同じ種類を選ぶよりも免疫の強化につながりうる結果となった。

交互接種を後押しするようにもみえるが、一方で、先にモデルナ製を接種した人たちがファイザー製を希望する理由ともなり、その不足を助長する可能性もある。

各メーカーが開発急ぐ「オミクロンワクチン」の是非

そもそも新型コロナワクチン2回接種を完了すれば、私たちは晴れて“自由の身”になれるはずだった。

日本国内ではファイザーもしくはモデルナのワクチン接種を2回完了した人が、約8割に到達しようとしている(12月22日時点)。スマホでのワクチンパスポート「新型コロナワクチン接種証明アプリ」の運用も開始された。

そこへオミクロン株の登場である。番狂わせもいいところだが、仕方ない。従来ワクチンの効果を揺るがす変異株の出現は、科学者たちが当初から予想していたことだ。

ワクチンメーカーは現在、オミクロン株に特化した「オミクロンワクチン」の開発を急いでいる。

ファイザー社は、来年3月にはオミクロン株対応ワクチンを供給できるとしている(12月9日「ウォールストリートジャーナル」より)。モデルナ社も、今後数カ月のうちに大規模製造が可能という(11月30日「フィナンシャル・タイムズ」)。

WHOによると、従来ワクチンに限界をもたらしたのは、50個にも上る変異だ(11月30日「国連」)。そのうち32個は、免疫システムがウイルスを察知し、見分ける目印ともなる「スパイクタンパク」上に生じている。

変異1つひとつは、いわば“プチ整形”にすぎないが、32カ所もあればウイルスの顔つきはすっかり変わる。「免疫からの逃れやすさ」を促す変異も生じており(11月29日「COVID-19 South African Online Portal」)、過去の感染や従来のワクチンの情報に基づく “顔認証システム”は、容易にすり抜けられてしまう。

データベースにオミクロン株の情報を追加させよう、というのが「オミクロンワクチン」だ。

だが、オミクロンワクチンが本当に必要かどうか、科学者の間には疑問の声もある。実用化される頃には、オミクロン波が収束している可能性もあるからだ。

世界3大学術誌の1つ『Science』では、オミクロンワクチンよりもむしろ、いかなる変異にも耐えうる「汎コロナウイルス感染症ワクチン」に注目している。人類と新型コロナとの「いたちごっこ」に終止符を打つ切り札になるかもしれない。

すでに複数の汎コロナワクチンが、霊長類などの動物実験で良好な成績を上げ、臨床試験に入っている。

それでも新型コロナは「ただの風邪」?

とはいえ今この瞬間、オミクロン株の勢いは猛烈だ。

12月22日、世界保健機関(WHO)のハンス・クルーゲ欧州地域事務局長は、オミクロン株は英国、デンマーク、ポルトガルですでに置き換わり、「向こう数週間で」欧州全体で主流になるとの予測を示した(12月23日「ロイター」)。

英国では新型コロナ新規感染者が1日あたり10万人を超えた。オミクロン株の初報告から1カ月足らず、もちろん過去最悪の記録を更新中だ。

アメリカCDC(疾病対策センター)も、12月18日時点でオミクロン株の割合が感染者の73.2%に上ったことを公表。その2週間前には0.7%、1週間前にはまだ12.3%だった。ワシントン州、ニューヨーク州、フロリダ州などでは、すでに9割超となっている。

だが一方で、新型コロナはこの数年で「風邪」レベルに落ち着く、という話も絶えない。

WHOは12月9日、南アの初期データに基づき、オミクロン株に「感染しても重症化しにくい傾向」が見られると指摘した。

「しだいに感染力は高く、毒性は低くなっていく」のは、“ウイルスあるある”だ。

変異はウイルスにとって有利・不利を問わずランダムに生じる。ヒトを即死させるほどに強力な毒性を持つこともあるが、それは自滅と同義だ。ウイルスは細菌などと違って自力では存在も増殖もできず、宿主(ヒト)の細胞に入り込み、その機能や材料を拝借して増えていくからだ。

むしろただの風邪のように、宿主を「生かさず殺さず」程度の毒性に変異したものが、駆逐もされないままゆるゆると生き延びていく。

オミクロン株では、科学的な裏付けもそろい始めた。

12月22日に査読前論文が公開された英国スコットランドの研究では、オミクロン株の入院リスクはデルタ株よりも3分の2低下していた。11~12月の新型コロナ入院患者を調べたもので、ワクチンの追加接種者では、2回目接種から25週以上経過した人よりも症状が抑えられていた。

同日公表されたインペリアル・カレッジ・ロンドンによる英国イングランドの研究でも、オミクロン株ではデルタ株に比べて入院リスクが40~45%低。受診の割合も20~25%低かった。

岸田政権の迅速な判断と行動力に期待

もちろん当面はまだ油断できない。汎コロナワクチンも第Ⅲ相までの臨床試験をクリアしなければならならず、ここ数カ月で実現するものではない。

最新の『Nature』によれば、重症化を防ぐ抗体医薬も、オミクロン株に対してはほとんどが無力だという。抗体カクテル治療薬の中和効果は低く、もっとも優秀なGSK社のモノクローナル抗体薬「ソトロビマブ」でも、他の変異株と同等の中和効果を得るには3倍の濃度が必要だった。

重症に至らずとも、医学的な見地でいう新型コロナの「中等症」は、普通の感覚からすれば想像以上に苦しく厳しい。呼吸困難に陥り、人工呼吸器を導入するギリギリ手前の段階だ。

合併症や後遺症も風邪の比ではない。合併症は呼吸不全にとどまらず、発熱など全身に炎症症状が現れ、心臓から腎臓、肝臓などさまざまな臓器で次々発生することも多い。軽症や無症状だった人でさえ、後遺症(いわゆるロング・コビッド)の生じるリスクもある(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き)。

光が見えてきたとはいえ、新型コロナは現状まだ「全力で回避したい病気」に変わりない。まずは「今できること、すべきこと」を直ちに実行していくことだ。

例えば、ワクチンの追加接種は、各自治体の裁量で前倒しして当然だ。先に厚労相から「自由に前倒しを認めるものではない」といった発言もあったが、ナンセンスでしかない。

振り返れば、1・2回目接種だって実質的に「一律」でも何でもなかったのだ。具体的な実施方法は自治体に丸投げされ、その力量差が進捗状況に顕著に表れた。

すでに各自治体の在庫や接種体制に差がついている中で、中途半端な「原則」の提示がかえって混乱を招いている。

他方、岸田政権が12月23日、オミクロン株の市中感染が確認された大阪・京都と、感染拡大の懸念される沖縄で、希望者全員への無料PCR検査を早々に決めたことはおおむね高評価だ。

新型コロナとの闘いでは、これまでになくスピーディーで柔軟な対応が求められる。政府内で足並みをそろえるのも難しいに違いない。それでも、新たなワクチンや治療薬の導入等はもちろん、海外との往来再開も、タイミングを逸すれば大きな社会・経済的ダメージにつながる。

世界の動向を注視しつつ、科学をベースに適宜判断していくしかない。引き続き岸田政権の行動力に期待したい。

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