京王線殺人未遂容疑者「死刑になりたくて、小田急事件を参考に」
31日午後7時55分ごろ、東京都調布市の京王線布田―国領間を走行中の京王八王子発新宿行きの上り特急電車(10両編成)内で、男性(服部恭太、24歳)が突然刃物を振り回した。その後、男性は6両目(5号車)に移って油のような液体をまいた後に火を放ったとみられる。車内で火災が発生し、床と座席が焼けた。
東京消防庁や警視庁によると、10~70代の乗客の男女17人(男性8人、女性9人)が病院に搬送され、このうち先頭から8両目で右胸を刺された70代男性が意識不明の重体。他の16人は液体をかけられるなどして目やのどの痛みなどを訴えているが、命に別条はないとみられる。
特急電車は通過予定だった国領駅に緊急停車した。警視庁は9両目にいた男性を確保し、殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。「服部恭太、24歳」と名乗り、「人を殺して死刑になりたかった。2人以上殺せば死刑になると思った。(8月に起きた)小田急線の事件を参考にした」と供述しているという。男性は刃物(刃渡り約30センチ)を所持しており、同庁が詳しい状況を調べている。
事件発生直後から一時、京王線つつじケ丘―飛田給間と、京王相模原線調布―若葉台間の上下線は運転を見合わせた。
京王線刺傷事件 「小田急線事件を参考に火をつけた」と容疑者供述
東京都調布市内を走行していた京王線の車内で乗客の10~70代の男女17人が刃物で刺されるなどして重軽傷を負った事件で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された自称住所・職業不詳の服部恭太容疑者(24)が「(8月に起きた)小田急線の事件を参考にしてライターオイルで火をつけた」と供述していることが警視庁への取材で判明した。同庁は調布署に捜査本部を設置。1日に車両を検証するなどして詳しい経緯を調べる。
8月6日に小田急小田原線の車内で乗客10人が重軽傷を負った事件では、殺人未遂容疑などで逮捕された男性容疑者がサラダ油をまいて火をつけようとしたものの着火しなかった。服部容疑者は「小田急線の事件ではサラダ油で火がつかなかったから、ライターオイルでやった」と説明しているという。
逮捕容疑は10月31日午後8時ごろ、布田―国領間を走行中の京王八王子発新宿行きの上り特急電車(10両編成)の3号車(前から8両目)で、座席に座っていた70代男性の右胸を刺し、殺害しようとしたとしている。男性は意識不明の重体。
捜査本部によると、服部容疑者はその後、5号車(同6両目)に移って油のような液体をまいた後に火を放ったとみられる。車内で火災が発生し、床と座席が焼けた。他に10~60代の男女16人(男性7人、女性9人)が液体をかけられるなどし、目の痛みなどを訴えて病院に搬送されたが、軽傷とみられる。
特急電車は通過予定だった国領駅に緊急停車。2号車(同9両目)にいた服部容疑者は、70代男性への殺人未遂容疑で駆けつけた捜査員に現行犯逮捕された。容疑を認め、「人を殺して死刑になりたかった。2人以上殺せば死刑になると思った」と供述。所持していた刃物(刃渡り約30センチ)は「ネット通販で買った」と説明しているという。
事件発生直後から、京王線つつじケ丘―飛田給間と、京王相模原線調布―若葉台間の上下線計168本が1日午前1時20分ごろまで運転を見合わせ、約5万2000人に影響が出た。
相次ぐ刺傷事件に恐怖…「護身術」は身につけておくべき? その現実とリスク
10月31日、京王線車内で刺傷事件が発生しました。この原稿を執筆している段階では、事件の詳細はまだ明らかになっていない点が多いですが、容疑者の供述によると、8月に発生した小田急線車内での無差別刺傷事件を模倣した犯行のようです。身勝手な理由で、面識のない相手に平然と刃物を向ける理解不能な凶行に多くの人が恐怖を感じたと思います。また、「護身術」の必要性を考えた人も少なくないでしょう。
相手の攻撃から身を守るための護身術は身に付けておくことで、いざというときに役立ちそうなイメージがありますが、実際のところ、本当に役に立つのかどうか疑問に思ったことはないでしょうか。ボディーガードである筆者の観点で結論からいうと、どれほど護身術の稽古を積んでも身を守れる保証はありません。
仮に、目の前に刃物を振り回す通り魔が現れた場合、身を守るための最も確実な方法は「素早く、その場から離れること」です。しかし、「逃げるが勝ち」とはいかない場面が少なからずあるのも事実です。被害に遭った人の多くも「逃げられるなら逃げた」のではないでしょうか。
自分なりの「警戒基準」を持つ重要性
護身術には、使うに至るまでのプロセスがあります。「いち早く異常に気付く」→「素早く離脱する」→「無理な場合は闘う(護身術)」です。これが正しい順番であり、「闘う」から始まることはありません。他に方法がない状況で初めて、護身術を使うべきなのです。
当然ですが、危険な相手から遠ざかれば、護身術や護身用品を使う必要はありません。早めに危険を察知する力こそ、最高の護身術なのです。まずは怪しい人物を見分けるためのシンプルな方法をご紹介します。次の4つは、筆者が無意識に観察している他人の特徴です。
(1)声のボリュームがおかしい
(2)距離感が近い
(3)しぐさや挙動が速い
(4)真っすぐ一点を見つめている
これらの特徴を満たしている人が必ず危険というわけではありません。当てはまるからといって危険人物と決めてかかると、別のトラブルや偏見を生みます。大事なのは自分なりの警戒基準を持つことです。それがないと、いくら周りに目を凝らしても、誰が危険か判断できません。
警戒すべき相手を取捨選択する力は「人間観察」で養われます。まずは自分の“アンテナ”をつくり、それに引っ掛かる人間がいたら観察してください。結果、危険がなければそれでよいのです。アンテナができあがると、注意して周りを見なくても、不審な人間が自然と目に飛び込むようになります。ここまでを前提として、いざというときに身を守るための現実的な方法を考えてみましょう。
護身術を使うと何が起こる?
護身について考える前に必ず理解していただきたいことがあります。「護身術や護身用品によって生じた結果は全て自己責任である」ということです。自分や大切な人を守った結果として、相手(暴漢)がけがをすることは想定の範囲内ですが、ここで問題になるのが「正当防衛」と「過剰防衛」です。
殺意をむき出しに突然、暴力で襲いかかってくる相手に対して手加減などできるのでしょうか。どう考えても現実的ではありません。つまり、正当防衛になるのか、過剰防衛になるのかを自分でコントロールするのは不可能といえます。いうなれば運次第で、むしろ、過剰防衛になる可能性の方が高いと考えるべきでしょう。
しかも、仮に正当防衛が成立したとしても、それまでには1年、もしくはそれ以上の係争期間が待っています。結果的に正当防衛が認められたものの、その間に仕事や家族など大事なものを失った人は珍しくないのです。襲われた側である被害者がこんな不合理にさらされるのはとても納得できません。だからといって、反撃しなければ、命の危険すらあり得るという2重の理不尽さです。
こうした背景から、どんな理由であれ、暴力は巻き込まれた時点で何らかのダメージが確定している“悪夢”です。しかし、これが現実である以上、少しでも被害を抑える方法に目を向けるしかありません。
護身術の効果と現実
個人的には「護身目的で護身術を習うこと」はおすすめしませんが、「護身術を習うこと」自体は賛成です。矛盾していると思われるでしょうから、少し説明しましょう。「護身術」という名称の格闘技はないので、実際に習うのは空手、柔術、合気道、キックボクシングなどになるでしょう。道場では体力づくりや基本動作から始まり、徐々にレベルアップしていきます。
空手など、帯に色がつく競技もあるので、努力の成果を実感できるのも喜びの一つです。近年、子どもの習い事として人気の理由もここにあると思います。つまり、武道の価値もその他の趣味と同じく、実用性だけでは測れないのです。見方を変えると、護身術は武術の目的というよりも「副産物」といえます。
では、道具を使うのはどうでしょうか。例えば、いすやペンなど、身の回りには武器や盾として使える物が多く、身辺警備でも、それらの利用を訓練しています。ただ、これらは格闘技の応用なので、未経験者にはなかなか難しいのが実情です。そのため、さまざまな護身用品が市販されています。
現在、日本国内で主に入手可能な護身用品は「警棒」「スタンガン」「催涙スプレー」などです。しかし、これらを所持・使用する上で忘れてはならないのが軽犯罪法です。護身用品の携帯は法律で禁じられているため、かばんに入れているときに職務質問を受ければ、ペナルティー必至です。また、実際に使えば、正当な理由であっても逮捕・拘留される可能性があります。
法律が絡んでくることもあり、催涙スプレーなどの所持をすすめることはできません。しかし、体力に差がある相手や武器を持つ者の攻撃を道具なしに防ぐのは難しいのも現実です。結局のところ、闘いを有利にするのは「体重」「筋力」「武器」です。多くの格闘技が階級制なのは、体格の差はいかんともしがたい壁だからです。
その差を補うには大変な稽古を積むか、優れた道具を手にするかになります。最終的に、護身用品を持つか否かの判断は自己責任です。身の安全と軽犯罪法違反、この2つの側面を踏まえて決めるしかありません。
防犯ブザーは効果ある?
護身用品とは少々異なりますが、身を守るために持つ道具としてよく知られているのが「防犯ブザー」です。筆者は職業柄、防犯ブザーの有用性について質問されることがあります。防犯ブザーというと、小さなお子さんが持つイメージがあると思います。
防犯ブザーは周りにSOSを知らせる道具なので、それ自体に攻撃力はありませんが、大人が持っても有効なので、女性で深夜の帰宅が多い人にもおすすめできるグッズです。一方、防犯ブザーに対しては「鳴らしても意味がない」「相手が逆上しかねない」など否定的な意見もあるようです。しかし、筆者は持つだけでも意味があると考えます。
防犯ブザーを有効に使う方法の一つに「夜道ではあらかじめ握る」というものがあります。いざというときにすぐ鳴らせることはもちろんですが、手に握ることで、警戒心が立ち振る舞いに現れるのです。犯罪者は無差別に獲物を選びません。周囲を警戒している人と警戒していない人を見分けているからです。
「防犯ブザーを握る」という行動は意識を切り替えるきっかけになります。「狙われにくい人になる」ことは立派な“護身術”といえます。
日頃からシミュレーションを
そもそも、護身や防犯に100パーセントの正解はありません。想定しきれない状況の中で、模範解答を求めること自体が無理なのです。小田急線内の刺傷事件、先日の京王線内の事件、いずれの容疑者も「停車駅が少なく、犯行に適している(逃げ場が少ない)から(快速急行や特急を)選んだ」という趣旨の供述をしています。
もし、この電車に乗り合わせたとして、狭い車内で数分間も刃物から逃げることは不可能です。つまり、闘って身を守るしかありません。護身術を使う状況はいうなれば、野獣との闘いです。武器を持った相手は誰にとっても心底恐ろしいのです。そのような状況に遭遇しないように、また、最悪でも素手で立ち向かう必要のないように、可能な限り、日頃からシミュレーションするのがよいと思います。
