椎茸ラーメンもう一度 あきらめかけた再建、74歳店主の挑戦

椎茸ラーメンもう一度 あきらめかけた再建、74歳店主の挑戦

 宮城県丸森町で名産のシイタケをたっぷり使った名物ラーメンが今春から復活した。2年前の台風19号水害で被災した中華料理店の元店主が、阿武隈ライン舟下り乗船場の食堂で提供。しょうゆベースで酸味を利かせた「昔と同じ味」が、町の復興を後押しする。

 丸森町の中心部にあった中華料理店・味一の名物は「椎茸(しいたけ)ラーメン」。二十数年前、町が地元産シイタケを使ったメニューづくりを依頼し、店主の白木寛一さん(74)が試行錯誤の末に酢豚をイメージして商品化した。テレビ番組で紹介されると、一時は店の前に行列ができるほどの人気になったという。

 しかし、台風19号水害で店舗兼自宅は床上浸水。冷蔵庫はなぎ倒され、調理道具や丼物用の秘伝のタレは、茶色い雨水とともに流れた。「油断していた。まさか自分が災害を経験するとは」と白木さん。いったん町を離れ、2カ月後に町内の仮設住宅に入った。年齢や資金面などから、店の再建はあきらめた。

 そんな時、町観光物産振興公社理事長の横山博昭さん(71)らから声がかかった。「味一の味を出してみないか」。阿武隈ライン舟下りが今年4月に再開し、乗船場の食堂も週末と祝日の午前11時から午後2時まで開くことになった。その厨房(ちゅうぼう)への誘いだった。

 ブランクから、最初は自信がなかったという。それでも「自分のラーメンが丸森に残るのは大変うれしい話」と引き受けた。中華鍋を振っているうちに、作り方を思い出してきた。シイタケ、タケノコなどの野菜をたっぷり。豚肉とともにいため、あんかけにする。「素材を生かすため、炒めすぎず、食感を残す」のがコツだ。1杯750円(税込み)で出す。

 「最近いい味になってきた。お客さんに『昔と同じだよ』と言われて満足。1杯1杯大事に作るので、リピーターになっていただければ」

 最近は、従業員4人とともにメニューを増やしている。従業員の中鉢弘子さん(60)は「やさしく料理のコツを伝授してくれる。椎茸ラーメンは暖まるから、寒くなる時期に食べに来てほしい」と話す。

 白木さんは来月にも再建した自宅に移り、仮設住宅暮らしを終える。それでも「まだ2年かあ。まだまだ復興復旧は終わっていない」。通れない道路に出くわすたび、そう思う。(三井新)

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