正式リリース前のWindows 11事情まとめ

正式リリース前のWindows 11事情まとめ

 Windows 11の一般リリースが10月5日に迫っている。以前のレポートにもあるように、基本的にはローリングアップデート方式を採用し、既存のWindows 10を利用するWindows 11のハードウェア要件に「Eligible(適合した)」なデバイスに対して順番に配信が行われる。また、先日のハードウェアイベントで登場したSurface新製品群など、最新のOEMハードウェアについてはWindows 11をプリインストールされた形で出荷される。

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●Windows 11のインストールに(基本的には)抜け道はない

 Windows 11がWindows Insider Programを介して先行ユーザーにテスト配信が開始されたばかりのころ、「PC正常性チェック(PC Health Check)」アプリを通じて同OSの最低動作要件を満たさないPCにはアップグレードが提供されないとしていたものが、実際にはチェックプログラムをバイパスしてのインストールと実行が可能であり、一種の抜け道と考えられていた。

 これはMedia Creation Tool経由でISOを導入した場合も同様で、Microsoftが暗黙裏に用意していた非対応PCへのインストール手段とも思えたが、同社自身は「将来的なアップデートを停止する」との警告も行っており、多くのユーザーがつまずいた「TPM 2.0によるセキュアブート」「要件を満たすCPU」の2つの条件を満たすために、ハードウェアを買い換えなければならないのかという疑念がつきまとっていた。

 結論としては、Windows 11のテスト枠がRelease Previewにまで拡大された9月初旬の時点で、既にWindows Insider ProgramのDev ChannelとBeta Channelに参加してWindows 11 Insider Previewを導入していたハードウェア要件を満たさないユーザーらに対し、Windows 10に戻すよう警告メッセージが表示されるようになったことが報告されている。実際、9月2日(米国時間)に「Build 22449」の配信が両チャネルに対して行われた際のBlog投稿において、Microsoftよりその旨の記述が加えられている。

 このメッセージに遭遇したユーザーは、実質的にDev ChannelやBeta Channelでの最新ビルドやアップデートを受け取れない状態にもなっており、前述のMedia Creation Tool経由でISOの導入も同様の問題が発生すると考えられている。

 なぜMicrosoftがここまでハードウェア要件を厳密にするかは改めて別の機会に考察するとして、実際にMedia Creation Toolでのハードウェア要件チェックをバイパスするプログラムを公開する開発者が出現している。

 Neowinが紹介しているが、GitHub上に公開されたMedia Creation Toolの“ラッパー”プログラムでは、要件を満たさないハードウェア上(正確にはVirtualBox上の仮想マシン)でBuild 22449からBuild 22463へのアップデートを実現している様子がBleeping Computerのスクリーンショットで示されており、とりあえず動作していることがうかがえる。

 もっとも、これによって予想しないトラブルが発生して不安定になったり、将来的に“穴”がふさがれたりする可能性があるため一時的なものとは考えられるが、適合しないハードウェアのユーザーは今後2025年のサポート終了までWindows 10を使い続けるか、新しいハードウェアに買い換えた方が賢明かもしれない。

●Windows 11ユーザーは今後どれくらいのペースで増加する?

 ローリングアップデートとハードウェアを供給するOEM側の事情などにより、Windows 11の初期のシェアは非常に限られた水準に留まるというのが筆者の予想だ。過去のWindows 10の大型アップデート(機能アップデート)のバージョン別推移を見ても、2022年前半時点で1~2割程度の水準に収まると見ている。

 自社の広告ネットワークを介してWindows 10のバージョン別シェアを集計するおなじみのAdDuplexだが、ここ半年ほどは毎月行っていた集計が不定期になっており、細かい推移が確認できなくなっている。前回は2021年7月末日での集計結果で、そこでの衝撃はWindows Insider Program参加者にInsider Previewが公開された直後のWindows 11が「0.9%」のシェアを獲得していたことだった。

 8月の集計結果はスキップされ、今回9月末のデータが公開されたわけだが、最新のWindows 11(Insider Preview)のシェアは「1.3%」となった。これが多いか少ないかでみれば、「Insider Previewでもとにかく最新のものに飛びつくユーザーが全体の1%程度は存在する」というところで、想像の範囲で妥当な水準だろう。

 逆に、能動的にWindows 11に“上げる”ユーザーがそれほど多くないことも暗示しているともいえ、「2022年前半時点で多くて1~2割」という予想を補強するものと考えている。

 このバージョン別シェアでのもう1つの注目は、「21H1」こと「May 2021 Update」のシェアが前回の26.6%から2カ月間で38.1%まで増加したことで、そのぶんを「2004(20H1)」の「May 2020 Update」からシェアを奪った形となった。

 Microsoftでは「21H2」のリリース以後のWindows 10について言及していないが、このバージョンはメンテナンスモードに入る直前の安定版リリースに近い位置付けであり、1年後には「21H1」「21H2」を合わせてWindows 10/11のバージョン別シェアで7割程度のシェアを占めると予想する。

 残りをWindows 11とWindows 10の旧バージョンが半々で分け合う水準になり、Windows 11が10のシェアを抜くにはまだ2~3年ほどの期間が必要になるだろう。その意味で、Windows 10はまだしばらくメインストリームの地位に収まるのではないかと思う。

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