40年の節目を向かせた富士通のパソコン、手放しで喜べない理由
今回のひとこと
「オンラインで実現される便利な社会に行くには、大きな川を渡る必要がある。だが、渡れなければ不便な生活を強いられることになるどころか、いまや基本的な生活を脅かすことになりかねない」
富士通のパソコンは一定の役割を果たしている
富士通が、同社第1号パソコンであるFM-8を1981年5月に発売してから、今年は40年目の節目を迎えている。
富士通クライアントコンピューティングの齋藤邦彰会長は、「40年間に渡り、富士通のパソコンが目指してきたのは、コンピューティング環境の提供により、お客様の豊かなライフスタイルに貢献することである。そのために、人に寄り添う製品を通じて、デジタル技術から取り残される人を減らし、デジタル格差の解消に努めている」としながらも、「コロナ禍において、富士通のパソコンが果たす役割がますます重要になっている。外出機会が減少し、おうち時間が増加していることにあわせ、これまで以上に、オンラインに対するニーズが高まっている。私の強い信念は、デジタルが苦手だと思っている人に、パソコンでオンライン生活を楽しんでもらうようにすることである」と語る。
各種調査でも明らかなように、おうち時間が増加し、それに伴い、オンラインを通じて、コミュニケーションをとったり、様々なものを購入したりといった人が増えている。在宅勤務や在宅学習もオンラインの活用によって浸透。便利なオンライン社会が一気に訪れた。
デジタルの世界に行く前の大きな川が渡れない
だが、齋藤会長は、その状況が手放しでは喜べないと警鐘を鳴らす。
「オンラインが使えるか、使えないかで、生活の便利さや、楽しさに大きな違いが生まれている。便利なオンライン社会が作られても、使えない人がいたり、使いやすい環境が提供されていなければ、その価値は発揮できない」からだ。
齋藤会長は、その状況を、生活者と便利なオンライン社会の間に、「大きな川」があると比喩する。
「オンラインで実現する便利な社会に行くには、大きな川を渡る必要がある。この川を渡ることができれば、便利で、ワクワクした世界がやってくる。だが、渡れないと不便な生活を強いられることになる」
齋藤会長が例にあげたのが、高齢者を対象に行われたワクチン接種のネット予約である。
「私の母も、この川に妨げられた。一人では川を渡れずに家族が支援したことで、はじめてアクセスでき、オンラインで予約を取ることができた。一人のままでは、川を渡れず、いまだにワクチンを打っていなかったかもしれない」とし、「オンラインを使えないことが、基本的な生活を脅かすことになりかねない事象である。オンラインによる便利な社会と自由に行き来ができることが、ますます重要になる」と指摘した。
「橋」の役割を果たす、この川を渡るツールは、いくつも用意されている。
スマホやタブレット、AIスピーカーのほか、ネットワークに接続されたテレビも、川を渡る「橋」だ。いまでは白物家電にもネットワーク機能が搭載されており、様々な機能が便利に利用ができる。なかでも、この川を渡るのには一番の道具であり、最も橋の幅が広いのがパソコンであると、齋藤会長は位置づける。
「UI/UXの点で最も優れ、大量のデータを送信でき、迅速な処理ができるのがパソコン。外出が制限される生活でも、パソコンがあれば、離れて暮らしている家族や友人ともつながり、1人じゃない生活を支援できる。そして、パソコンを使うことで、オンラインによるワクワクをもっと体験してもらえる」と語る。
しかし、パソコンが持つ課題がある。
それは、高齢者にとって使い方が「難しい」ということだ。
齋藤会長も「これは、40年間に渡って、常に向き合ってきた課題である」としながら、「パソコンは難しく、いまから覚えるのは無理だという声があるのも事実だ。しかも、高齢者のワクチン接種予約の状況を見ても、デジタル苦手さんが想像以上に多いことがわかった。40年の節目を迎えた今年、パソコンは難しいという概念を取り払うための努力を、新たにスタートしたい」と語る。
ふくまろを通じて家族が苦手なパソコンをサポートする
富士通クライアントコンピューティングでは、2021年5月から、富士通パソコン誕生40周年企画をスタートしており、その第1弾として、モバイルキーボード「LIFEBOOK UH Keyboard」を開発し、これをクラウドファンディングで提供する取り組みを開始している。
そして、40周年企画第2弾として、あらゆる人が参加できるIT社会の実現を目指し、デジタル苦手さんをサポートする「ふくまろおしえてサービス」を開始した。
同サービスは、FMVシリーズに搭載しているAIアシスタント「いつもアシスト ふくまろ」を利用して、高齢者をはじめとしたデジタル苦手さんに、パソコンの使い方などをサポートするものだ。これまでのサービスが、AI機能などによる先進技術を利用したり、コールセンターによる専門家を通じた課題解決を目指していたが、新サービスでは、LINEとふくまろを組み合わせて、家族同士をつなぎ、パソコンの操作方法などを家族が教えやすい環境を実現することになる。
FMVシリーズに搭載されているふくまろに、「家族に教えてもらいたいことがあるのだけど」と話しかけると、「家族に遠隔操作をお願いするまろ」とふくまろが答え、LINEを利用して、自動的に家族のLINEグループにメッセージを送信。家族にパソコンの使用方法について質問があることを通知する。LINEでメッセージを受け取った家族は、すぐにサポートが可能であれば、6桁のセキュリティコードをLINEで送り返し、これをパソコンに入力してもらい、許可ボタンを押してもらえば、画面が共有され、家族がパソコンをリモート操作できる。もし、都合が悪かったら、LINEで返事をして、サポートできる時間を伝えればいい。仕事中に、何度も電話がかかってきたりといったことがなくなり、家族というつながりをもとに、お互いに負担が少ない形でサポートできる環境が実現されるというわけだ。
Windows 10の標準機能として搭載されている「クイックアシスト」を利用しているが、ふくまろとLINEを組み合わせることで、この機能を簡単に使えるようにしている点が特徴だ。
高齢者がパソコンのなかに保存している家族の写真を見たいといった操作や、ネットショッピングでの購入。そして、高齢者のワクチン接種などの予約なども、家族が遠隔操作して行うことができる。
たとえば、ネットショッピングの場合は、コールセンターの専門家に遠隔操作をしてもらい、操作を教えてもらうこともできるが、第三者であるため、購入ボタンまでは押すことができない。だが、家族であれば、遠隔操作で、購入ボタンを押すことができるというメリットもある。
ちなみに、齋藤会長は、「富士通クライアントコンピューティングの社員には、このサービスを使って、親から連絡があったら、就業時間中でも、親のパソコンのサポートを行っていいことを決めた」と、仰天の社内制度を導入してみせた。
家族で自己解決してください……!? 離れた暮らしを近づける効果も
「高齢者をはじめとするデジタル苦手さんをサポートする方法はいろいろあるだろう。これまでは、そのゴールに向けて、ふくまろを活用し、魔法使いのように、できることはすべてやることを目指してきたが、その一方で、家族にも協力してもらうことで、サポートできるのではないかと考えた。今回の『ふくまろおしえてサービス』は、離れて暮らす家族とパソコンを一緒に楽しむためにはどうするか、といったことを見つめなおした結果、生まれたサービスでもある」とし、「目指しているゴールは、パソコンを活用してもらうために、またユーザーの困りごとを解決するために、なにができるかという点。困りごとを解決するために手段を変化させたものであり、その点では、ふくまろの大きなフェーズチェンジともいえる」と語る。
もちろん、ふくまろのそのものも、継続的に進化することになる。
「将来的には、パソコンでなにかをやりたいといった場合には、ふくまろが、パソコンの代わりに作業を行ってくれることも目指したい。そして、ふくまろが家族の一員になるという目標もある。未来は、パソコンというハードが無くなり、UIだけが残ることになるかもしれないが、そうした時代においても、目に見えるものとして、ユーザーを助けるのがふくまろである。ITがどんなに進化しても、最高の魔法使いとして、助けることができるパートナーでいられるように成長させたい」とする。
40周年の節目に、パソコンをより便利に、簡単に使うことでき、「パソコンは難しい」と言われることがない世界を作るための新たな一歩がはじまった。
