デジタル庁、「敗戦」からのスタート 構造の目詰まり打破できるか

デジタル庁、「敗戦」からのスタート 構造の目詰まり打破できるか

 デジタル庁が9月1日に発足する。行政のデジタル化を進める司令塔となり、マイナンバー(社会保障・税番号)制度の活用や情報システムの効率化をめざす。コロナ禍で「デジタル敗戦」とも言える状況になるなか、省庁間の縦割りをなくし、暮らしを変えることができるのか。

 デジタル庁の創設は昨年9月、菅義偉首相が自民党総裁選で公約に掲げた。それから8カ月後の今年5月、デジタル改革関連法が成立した。異例のスピードで創設できた背景には、デジタル行政の遅れがコロナ禍で浮かび上がったことがある。

 政府は20年以上前からデジタル化を掲げてきたが、うまくいかなかった。「5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す」。2001年施行のIT基本法に基づく「e―Japan戦略」にはこう書かれていた。IT人材を育成し、行政手続きのオンライン化も進むはずだった。内閣府が昨年11月に公表した20年度の経済財政白書によると、政府のIT人材は19年時点でも不足している。米国ではIT人材の1割以上が公的部門に所属するが日本では1%に満たない。

 コロナ禍では行政システムの不具合が相次いだ。ファクスを頼りに感染者のデータを集計することもあった。平井卓也デジタル改革相も「デジタル敗戦」とも言える状況だと認める。

 1人10万円を配る「特別定額給付金」のオンライン申請では、誤入力や重複申請が相次ぎ、自治体の職員がデータ照合に追われた。企業が働き手に払う休業手当の費用を支援する「雇用調整助成金」でもシステムトラブルがあり、オンライン申請を一時停止した。

 感染者との接触を知らせるスマホアプリ「COCOA(ココア)」は、不具合が4カ月以上も放置されていた。今年4月の厚生労働省の検証報告書では、専門的な人材が足りず、アプリ運用を業者任せにしていた実態がわかった。

■ココアは「歴史的な失敗」 元副大臣が語る内情

 昨年9月までIT政策担当の内閣府副大臣だった平将明衆院議員は「構造問題がある」という。医療機関の病床使用率や感染者数など基本的な情報の把握でも、自治体や国の間にある「横の壁」に阻まれた。各省庁がそれぞれの権限を守ろうとする「縦の壁」も高かった。個人情報保護のルールは自治体ごとに異なり、情報共有の仕組みは十分整備されていなかった。

 平氏は昨年6月、デジタルガバメント庁(仮称)の設立や地方自治体のシステム統一化を訴える私案を携え、当時官房長官だった菅首相を訪ねた。国のデジタル化を進めるには予算と権限を持ち、専門人材が集まる司令塔が必要だとの考えだ。「構造の目詰まりを全部取りましょう。一気に解決しないとデジタル政府はできませんよ」と要請すると、菅首相は「分かっている、分かっている」と答えたという。

 平氏は政府の新型コロナ対策のテックチームの一員として、ココアの開発の仕様書をまとめた。ココアについては「歴史的な失敗」だという。「厚労省の現場が発注して終わりになっていた。テックチームが解散し、厚労省では政治家が責任を持って見ていなかった。デジタル庁があったら起きなかった問題だ」

 こうした状況を受け、菅首相はデジタル庁を「規制改革のシンボル」と位置づける。政権が発足を急いだのは、今秋までにある衆院選や自民党総裁選をにらみ、実績を残したいという思惑もあった。

 デジタル改革関連法の成立は政府・与党の「最重要課題」(自民党国対幹部)で、「突貫工事」となった。法案の国会提出後に法案の参考資料である要綱や参照条文に計45カ所の誤りが発覚し、野党から立法府の軽視だと批判された。

 デジタル庁はデジタル敗戦を反省に対応を急ごうとしている。楠正憲・政府CIO(内閣情報通信政策監)補佐官は「より多くの人に変化を実感してもらうため、利用頻度が高い行政手続きなどインパクトのある部分から手がけるべきだ。デジタルは縁の下の力持ち。水道のように意識しなくても恩恵を受けられる社会をめざす必要がある」と語る。

 省庁の縦割り解消は難しい。コンサル業界の元官僚は「デジタル庁が政治に支えられていても、ほかの省庁に抵抗されればできることは限られる。発足に合わせ、各省庁のIT担当の部署が縮小されるのかが問われる」と指摘する。

 個人情報の保護をめぐっても不安が残る。デジタル改革関連法の一つとして個人情報保護法が改正された。国や自治体、民間で異なっていたルールが統一され、情報共有がしやすくなる。だが、これまで充実した条例があった一部の自治体にとっては、統一ルールによって保護内容が後退しかねないと指摘される。

 国がどこまで情報を収集し利用しているのか、一般の国民には見えない部分もある。デジタル化が監視社会に結びつくことへの懸念は根強い。

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