【過信が事故に!! 先進技術にも弱点あり】運転支援システム 使えない所と使える所

【過信が事故に!! 先進技術にも弱点あり】運転支援システム 使えない所と使える所

 2019年ビッグマイナーチェンジされた日産「スカイライン」が条件を満たした高速道路本線上での手放し運転を可能にした「プロパイロット2.0」を搭載するなど、近年レーダーやカメラで周囲した周囲の情報をもとにクルマが加減速やハンドル操作をしてくれる運転支援システムの進化は目覚ましい。

 しかし、運転支援システムが進化しているといっても、現状のこの種の運転支援システムは万能とは言えず、使い方を誤ると思わぬ事故に遭遇する原因となることもある。そんな現状もあり、当記事では運転支援システムが期待どおりに機能しないケースをシステムごとに紹介しながら、正しい運転支援システムの使い方を考察する。

■先行車追従型のアダプティブクルーズコントロール(ACC)

 オンにすると先行車に追従して走行してくれるACCは、単調な高速道路での長距離ドライブや渋滞中などに非常にありがたい運転支援システムである。

 使用の際の注意ポイントを考えるにはまずそのクルマのアダプティブクルーズコントロールが作動する速度域を把握する必要があり、具体的には以下のように分かれる。

[1] 30km/h以下で機能を停止するもの

こちらは市街地では実質的に使えず、高速道路をはじめとした主に流れている自動車専用道でしか使えないものと考えてほしい。

[2] 停止まで対応するもの

こちらは[1]の対応範囲に加え渋滞した高速道路や混んだ市街地でも使え(後者に関してメーカーは使用の推奨はしていない)、運転中の疲労軽減に絶大な効果を持つ。

 ただし、[2]はレバーや足踏み式といった機械的なものとスイッチで操作する電動式に分かれるパーキングブレーキの形式との兼ね合いでACCが停止まで機能しても、前者だと停止中のブレーキの保持ができない。

 このため前者は3秒程度でブレーキが解除されクルマが動き出してしまうため、ブレーキペダルを踏んでいないと先行車にうっかり追突ということも考えられる。

 そのほかACCが期待通り機能しないケースとしては、

●信号機の赤信号

 ACCは先行する車両をターゲットにして追従するものなので、[2]なら「赤信号で先行車が停止した」というケースにも対応してくれることが多いが、「自車が先頭で赤信号になったので停止する」というケースには対応してくれない(カラーカメラを使っている、スバルのアイサイトには赤信号を通過しようとした場合に警告を発する機能はある)。

●コーナー直後の停止車両

 特に「見通しの悪い曲率の小さいコーナーの直後に停止車両があった」といったケースだと、カメラやレーダーによる周囲状況の把握が間に合わず、自車のブレーキも間に合わないということも考えられる。

●スピードが対応する速度域を超えていた場合

 日本の道路環境では考える必要はないが、テストコースなどで法定速度を大きく超えたスピードを出すとカメラやレーダーが機能を停止するクルマもある。

●天候による条件

 これはクルマによる性能差も大きいのだが、豪雨(雨量と関係するワイパーの操作スピードとリンクしているクルマもある)、雪、霧、逆光といった天候の悪化があると、カメラやレーダーによる情報収集ができなくなり、ACCも機能を停止することは多々ある。

●割り込み

 側道から本線への合流に代表される割り込みは、カメラやレーダーが割り込んできたクルマをすぐには把握できないこともあり、ACCをオンにしていても減速が間に合わず接触事故につながる恐れがある。

■操舵支援システム

 レーンキープアシストシステム(LKAS)などと呼ばれる操舵支援システムはカメラで道路の白線などを認識し、その名の通りハンドル操作を支援してくれるものである。

 こちらもACCと同じように3タイプに分かれる。

[1] 車線逸脱警報のみ

 これは操舵支援には入らないと考えるべきなのかもしれないが、「車線を逸脱しそうになった、逸脱した」という場合にメーター内の表示とアラームで警告のみしてくれる。

[2] 車線逸脱抑制

 [1]の機能に加え「車線を逸脱しそうになった、逸脱した」際に、ハンドル操作やクルマによっては左右の片側に弱いブレーキをかけヨー(横方向の動き)を出すことで、元の車線に戻そうとしてくれるもので、LDA(レーンデパーチャーアシスト)などと呼ばれる

[3] レーンキープアシストシステム

 オンにすると車線の中央をキープしようとしながら走行してくれるもので、スピードがおおよそ60km/h以上にならないと作動しないものが多い、しかしここ2、3年は渋滞中を中心に先行車の走った軌跡をカメラで読み取り、その軌跡を追従してくれるLTA(レーントレーシングアシスト)などと呼ばれるものを増えている。

 操舵支援システムが期待通りに作動しないケースとしては以下が挙げられる。

●天候による条件

これはACCと同様だ。

●道路環境による条件

「台風などの後に白線が折れた木などで隠れていた」、「白線が泥などで汚れていた」、「白線が積雪で見えない」、「白線のペイントが薄くなっていた」といった場合には、カメラが白線を把握できず操舵支援システムも機能しないことが多々ある。

●曲率の小さいコーナー

 クルマによる違いもあるが、レーンキープアシストシステムは自動車専用道路に代表される曲率の大きいコーナーにしか対応しておらず、一般道の曲率の小さいコーナーでは操舵支援システムをオンにしていてもまず曲がり切れない。

●緊急回避はしてくれない

 なかにはレクサスLSのように、歩行者の飛び出しなどに対し相当の緊急回避を行ってくれるクルマもあるが、ほとんどのクルマは緊急回避には対応してくれず、緊急回避する時にハンドルを切るための支援をしてくれれば御の字と思ってほしい。

■斜め後方の監視システム

 リアバンパーに組み込まれたレーダーからの情報をもとにドアミラーの死角になりやすい斜め後方の死角を監視するBSM(ブラインドスポットモニタリング)などと呼ばれるシステムは、進路変更時の接触事故の防止など数ある安全装備のなかでも「あってよかった」と感じる頻度が一番多い、非常にありがたい装備である。

 しかし、斜め後方の監視システムも自車のスピードが遅い時など機能しないことも多々あるので、できれば目視も行いながらのドライバーによる後方確認も必須だ。

■ハイビームを積極的に使おうとするヘッドライト

「対向車や歩行者がいなければ、夜間のヘッドライトはより遠くまで見通せるハイビームを積極的に使いたい」という狙いを持つのが、オートマチックハイビーム(AHB)やアダプティブハイビームだ。

 この種のシステムは運転支援システムの情報源にもなっているカメラからの情報によりオンにすると単順にロービームとハイビームを切り替えるのが前者、細かい切り替えが可能というLEDヘッドライトの特徴を生かしてハイビームを最大限使おうとするのが後者である。

 システムの狙いはいいのだが、ロービームにするタイミングが遅く対向車や歩行者を不快にさせてしまうというものも多々あり、最終的なヘッドライトのロービームとハイビームの切り替えは自分の判断も交えながら行いたい。

 今回挙げた運転支援システムは、付いているなら状況を見ながら積極的に使うといいと思うが、あくまでも「支援」である。そのため「最終的な判断や責任は自分にある」ということをいつも頭におき、運転支援システムをオンにしていても前方を見る、ペダルは操作できるようにする、ハンドルは保持するといった運転の構えを常にしておくことが重要だ。

 同時に乗ったクルマに運転支援システムが着いているなら「それがどんなものか」を把握するというのも必要なので、この点については一度取扱説明書を熟読することを強く勧めたい。

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