新型メルセデス・ベンツSクラスの頭抜けた完成度「最新モデル試乗」プレミアムサルーンの新基準

「最新モデル試乗」プレミアムサルーンの新基準。新型メルセデス・ベンツSクラスの頭抜けた完成度

堂々のスタイリング、インテリアはモダンで大胆に変身

 メルセデス・ベンツSクラスは、プレミアムブランドが世に問うフラッグシップサルーンにあって、知名度やライバルに与える影響力、そして実力といった点で圧倒的な存在感を放つ。最新7thモデルが、いよいよ日本の道を走りはじめた。

 標準とロングの2タイプが用意されたボディは、前者でも全長5210mm(AMGライン装着車)と堂々たる大きさ。後者は全長とホイールベースが、110mmずつ長い。1930mm(同)の全幅も含めてボディサイズは、従来型よりわずかに大型化された。

 スタイリングはSクラスの伝統造形。テールランプ形状は大きく変更されたものの、全体的に「従来型の延長線上」と感じた。

マットグレーのボディカラーで彩ったメルセデス・ベンツGLCクーペの特別仕様車が日本上陸

 エクステリアに比べ、フルモデルチェンジをより大きく実感するのがインテリアである。

 ダッシュボードからは、いわゆるメータークラスターが姿を消した。ドライビングに必要となるさまざまな情報は、ステアリングコラム上にレイアウトされた、横長タブレット状の「メーターディスプレイ」内に表示される。

 中央部には、センターコンソールから連続する大きな縦型のセンターディスプレイをレイアウト。従来型ではそこに横一線に並んでいた空調関係の物理スイッチが消滅したこともあって、モダンな感覚が一気に高まった。

日本仕様は全車3リッター直6搭載。駆動方式は4WD

 新型の室内は、確かに新鮮だ。しかし、必ずしも操作性が向上したとは思えない。これはタッチ式スイッチを多用する昨今のモデルに共通する難点。一部にハプティック技術を導入して振動による応答を実現させた新型Sクラスでも、各種の入力操作をブラインドタッチだけでは行えない。中でもパワーシート調節スイッチは、固定の静電式に改められたことで微妙な調整がしにくくなったのは残念だ。

 現時点で日本で販売されるモデルは、2種類のボディにターボ付き3リッターエンジンを搭載したガソリン(S500・4マチック/435ps/520Nm)とディーゼル(S400d・4マチック/330ps/700Nm)。どちらのエンジンも直列6気筒レイアウトで、ガソリンのS500は48V方式のスタータージェネレーター(16kW/250Nm)を加えた、いわゆるマイルドハイブリッドシステムになる。

 日本仕様車はすべてが「4マチック」を謳う4WDシャシーとの組み合わせ。右ハンドル仕様の場合、おそらくその影響でドライバーの“左足置き場”を狭めていた。前輪に動力を伝えるシャフトがトランスミッション後端から出力された後に右側を「Uターン」していくレイアウトゆえだ。右ハンドルの場合、それを避けるケースの膨らみが、ドライバーの足元スペースを奪っている。

ディーゼルの走りは圧巻! ワインディング路が楽しい

 試乗車はディーゼルの400d・4マチックと、ガソリンのS500・4マチック・ロングの2台。いずれも威風堂々として上質、まさにフラッグシップと呼ぶにふさわしい乗り味の持ち主だった。

 動力性能面でより好印象を抱いたのは、低い回転数から圧倒的に太いトルクを発揮するディーゼルだった。車内はもとより、車外でも際立つ静粛性は驚きの水準。紛れもなく“世界一静かなディーゼル車”と断言できる。

 トランスミッションは9速AT。100km/h走行時のエンジン回転数は1300rpmほど。これは8速ギアでのデータ。この速度では9速には入らない。120km/h時にどうなるかは未確認だが、せっかくの9速ATも、日本では「宝の持ち腐れ」感が漂う。

 試乗車はAMGライン装着車。標準比で2インチ増しとなる 20インチタイヤを組み合わせていた。その影響か、高速道路上のパッチ補修跡などでは、極めて上質な乗り味の中にも、ややばね下の重さを意識させられるシーンがあった。

 一方、大柄な重量級モデルでありながら、ワインディングロードでは「ドライバーズカー」としての身軽さを実感した。このフットワークには、60km/h以下の領域では逆位相制御を行うリアアクスルステアリングの貢献もあったはず。パーキングスピードではその威力はさらに明確で、最小回転半径は何と5.4mをマークする。

 ADASやコネクティビティ機能は最先端。ともに高い完成度を誇り、クルマとしての魅力を高める要素になっていた。

 新型Sクラスは、走り、快適性、先進性など、すべての面でフラッグシップサルーンの新基準といえる。世界のライバルを突き放しにかかるモデルだ。

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