「女性不況」 雇い止め・育児 コロナ禍しわ寄せ

「女性不況」 雇い止め・育児 コロナ禍しわ寄せ

「会社は『直接雇用じゃないから』と対応してくれない。派遣会社も『協力できない』と言う。私は休業支援金をもらえないのか」

 ホテルの配膳係としてパートタイムで5年間働いてきた40代の女性は、労働組合「飲食店ユニオン」が3月13、14日実施した電話相談会で窮状を訴えた。昨年12月からシフトの回数を月にわずか1、2日まで減らされた。事実上働けていないにもかかわらず、休業手当を受け取れなかった労働者に国が支払う「休業支援金・給付金」の手続きでホテル側の協力を得られず、困り果てていたのだ。

 ユニオン担当者は、会社経由ではなく本人からの申請で給付が受けられることを伝え、手続きの仕方を説明した。相談の約8割は、こうした女性からのものだったという。

■隠れた実質的失業

 総務省が発表した1月の労働力調査では、非正規の女性は前年同月比で68万人減と、男性(22万人減)に比べ3倍超減少した。ただ、正社員の女性は逆に増加している。外出自粛や営業時間の短縮要請で打撃を受ける飲食や旅行業は、労働者の53%(令和2年)を非正規女性が占めており、緊急事態宣言の再発令がこうした雇用を直撃したことが分かる。

 正社員を含む完全失業率では男性3・1%、女性2・7%と男性の方が高い。ただ、ホテルで働く女性のように、雇用は継続してもシフト削減などで実際は働けていない「実質的失業」状態が多いのもコロナ禍の特徴だ。野村総合研究所の推計では、パート・アルバイト従業員のうちシフトが5割以上減り、休業手当を受け取れていない実質的失業者は2月時点で女性103万人、男性43万人に上る。これを加味すると、女性の失業率は6・1%(男性は4・2%)に跳ね上がる。

■「ひとり親世帯」深刻

 こうした非正規労働者の雇い止めに加え、育児や介護で退職を余儀なくされるケースも目立つ。昨年春、全国の小中学校などが一斉休校した際は保育園などの受け入れ制限も相次ぎ、子供を預けられずに仕事を休まざるを得ない親が続出した。特に夫婦で育児を分担できない「ひとり親世帯」は深刻な収入減に陥った。

 外出自粛で家族と過ごす時間が増えたことでドメスティックバイオレンス(DV)など家庭内トラブルも頻発した。警察庁によると2年の女性の自殺者数は前年比15・4%増の7026人と大幅に増え、急激な生活環境の変化や経済難が多くの女性を追い詰めたことが浮き彫りになった。

 内閣府の有識者研究会は昨年11月の緊急提言で、コロナ禍は「女性への影響が深刻で、『女性不況』の様相」だと指摘。DVや性暴力、自殺の相談体制強化などを求めた。

■社会不安増大も

 政府は昨年6月成立の2年度第2次補正予算で児童扶養手当を受給するひとり親世帯に第1子5万円、第2子以降は1人当たり3万円の支給を盛り込み、大幅に減収した世帯には5万円を加算した。昨年末には1回目を受給した世帯に加算を除く同額を再支給した。

 さらに、3月16日には両親がいる低所得の子育て世帯も初めて対象に含め、1人当たり5万円を給付する緊急支援策をまとめた。4月に入って新学期が始まれば制服や文房具などの購入費がかさむため、支援団体などから現金給付を求める声が強まっていたためだ。

 一方、政府はワクチン接種の普及にともなう経済の正常化を見据え、支援策を徐々に縮小したい考え。厚生労働省は25日、休業手当の一部を国が支払う雇用調整助成金の特例措置を5月から段階的に縮小すると発表。休業支援金・給付金は5月以降、原則として日額上限を1万1000円から9900円に下げる。7月以降は一層の縮減を予定する。

 もっとも飲食店ユニオンによると、困窮した女性たちの中には政府の広報不足で休業支援金の存在自体を知らない人も少なくないという。支援が必要な女性がまだ埋もれているのが現状だ。両親がいる世帯に占める共働き世帯が6割を超える日本で女性不況をこのまま放置すれば、日本経済全体に打撃を与え、社会不安を増幅させる恐れがある。

■海外でも格差拡大に懸念

 コロナ禍の女性不況は日本だけに起きている問題ではない。海外では英語の「she(彼女)」と「recession(景気後退)」を合わせた造語で「shecession」(シーセッション)と呼ばれ、共通の政策課題になっている。

 国連のグテレス事務総長は3月8日の「国際女性デー」に合わせたオンラインイベントで、コロナ対応で闘う医療従事者らの「7割は女性だ」と指摘しつつ、多くの女性が仕事を失うなどして「男女間の格差は一層広がっている」と懸念を表明。各国政府に家庭内暴力の対策を強化するなど女性への支援策を重視すべきだと呼びかけている。

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