なぜわざわざ「微アル」発売? 勝負前の見極め戦略か
アルコール度数0・5%のビールテイスト飲料が3月30日に発売された。ノンアルコール市場も広がるなか、今なぜ「微アル」なのか。酔いたいのか、酔いたくないのか。どれだけ飲んでも酔わないのか。深掘りしてみた。
アサヒビール(本社・東京都墨田区)が新たに発売したのは「アサヒ ビアリー」。
アルコール分は入っているが、通常のビールの10分の1程度。通常のビールよりも安い。
首都圏などで先行発売し、6月からは全国でも展開する。
記者もコンビニで1本195円(税込み)で買って飲んでみた。
アルコールの風味はごくわずか。ビール1杯で顔が真っ赤になる記者(30)にとっては、ほどよく酔えそうな安心感があった。
これは一体どのような飲み物なのか。
アサヒビールに聞いてみた。
まず気になるのが、ビールなのかどうか。
アルコール量は缶ビール(350ミリリットル)1本あたり約1・4グラムで、10本飲んでビール1本に相当する。
アルコール度数が1%未満のため、酒税法上は酒にはならず「清涼飲料水」。
麦芽の割合と原料で定められている「ビール」でも「発泡酒」でもなく、「ビール味の清涼飲料水」だ。
ただ、作り方は、麦芽に酵母を加えて発酵させるところまではビールと同じ。ビールはこの後、濾過(ろか)するが、「微アル」は蒸留してアルコールだけを取り除いて濾過している。アルコール分を抜く機械の導入に、約5億円をかけたという。
国内で流通しているホップなどの原料を混ぜてつくるノンアルコールビールとは作り方が異なり、広報担当者は「ノンアルよりもビールらしいコクが味わえる」とPRする。
どんな人がターゲットなのか。
同社の推計では、20~60代の人口約8千万人のうち半数は普段、酒を飲んでいない。
20、30代の若年層ほど低アルコール飲料を好む傾向もある。
こうした飲酒の習慣が少ない層に市場を見いだしている。
コロナ禍で自宅で巣ごもりする機会も増えている。家事や趣味の合間に飲んでもらうことも想定しているという。
広報担当者は「ビールを飲もうと思った時、度数約5%の通常のビールか、ノンアルかの二択だったが、二つの間に新しい選択肢をつくった」と話す。
日本ビアジャーナリスト協会事務局は「『微アル』の先には、ビールを飲むようになってほしいという狙いがある。勝負をかける前に一度市場に投げかけてみて、ビールを飲まなかった層が動くかどうかを見ようという試みだろう。ここが動けば他社も参入してくる」とみる。