New APS-C“K-3 Mark III”に込めた想い 第1回(若代)2020.07.31

New APS-C“K-3 Mark III”に込めた想い 第1回(若代)

PENTAX一眼レフカメラの商品企画を担当しております若代です。

2020年中の発売をターゲットに開発中のKマウントデジタル一眼レフカメラについて発信していきます。

開発中のカメラは、PENTAX K-7からAPS-C最上位機で継承してきた、トップクラスの高性能を小型ボディに凝縮させつつ堅牢性や操作性に優れたボディデザインにする、という基本的な考え方を踏襲しております。

その上で、我々が持てる技術を余すことなく投入し、PENTAXをお使いの方に、APS-C一眼レフカメラの中で最高と思って頂けるようなカメラを目指して開発しております。

また、写真を趣味とされている皆様に撮影に没頭して頂けるように、気持ちよく撮影できて想像力を掻き立てるカメラにするため、特に光学ファインダーの見やすさにはこだわって開発しております。

これまでも、APS-C一眼レフの下位機であってもペンタプリズムを採用するなど、見やすいファインダーを提供することにこだわってきましたが、一般的には、APS-Cよりフルサイズの光学ファインダーの方が見やすいと認識されていることと思います。

開発中のカメラでは、フルサイズ一眼レフと比較してAPS-C一眼レフの視野は狭いという常識を打ち破り、フルサイズ一眼レフ同等の広い視野角のファインダーを搭載する事を目指し、ファインダー倍率を高めるためにペンタプリズムに高屈折率の硝材を採用することにチャレンジすることにしました。もちろん、ファインダー倍率だけではなく、周辺までクリアであること、像の歪みが少ないこと、など様々な諸性能を兼ね備えたものを作り上げる必要がありました。

難しい挑戦だと思われましたが、更なる高性能なファインダーを実現しようと設計・技術・工場が一丸となって高屈折率硝材の加工に取り組みました。しかし、新しく採用することにした硝材は加工が非常に難しく、実際にペンタプリズムの形状に加工しても、当初は不良品ばかりで良品が全く得られないほどでした。

今回のカメラに向けてペンタプリズムの開発に着手したのが2017年の前半のことであり、新しい硝材についての検証はそのずっと前から行われていました。大量のペンタプリズムの試作と分析を繰り返し、研磨・洗浄の工程や加工環境を少しずつ最適化して、ようやく製品に搭載できるまでに加工技術を確立するに至りました。

念願のペンタプリズムを搭載したAPS-C一眼レフカメラは、PENTAX K-1と同等の広い視野角(ファインダー倍率1.05、35ミリ換算倍率0.70)の光学ファインダーを搭載しています。

APS-C一眼レフの魅力は交換レンズが小型軽量であることですが、PENTAXは小型堅牢な防塵・防滴レンズや小型で高品位なLimitedシリーズが充実しております。

軽快に扱えるAPS-C一眼レフシステムとフルサイズのような光学ファインダーで、写真撮影を存分に楽しんで頂きたいと思います。

New APS-C“K-3 Mark III”に込めた想い 第9回(若代)

PENTAX一眼レフカメラの商品企画を担当しております若代です。

PENTAX K-3 Mark IIIの露出制御用の機能についてご紹介致します。

プログラム自動露出で、露出の設定をカメラ任せにして被写体との距離や構図に集中して撮影する時も多くありますが、自分で見た映像から想像力を働かせ、撮影者がシャッター速度や絞り値をコントロールして撮影するのも一眼レフの醍醐味です。

PENTAXは1991年発売のZ-1でハイパープログラムを新たに搭載するなど、露出制御において独創的な機能を開発してきましたが、K-3 Mark IIIでは約30年ぶりにハイパープログラムの基本動作を再設計するなど、撮影者が創造力を駆使し撮影意図をより伝えやすくするように開発を行いました。

ハイパープログラムは、プログラム自動露出(Pモード)を選択している時に、前電子ダイヤルを回せばシャッター優先自動露出(Tvモード)に、後電子ダイヤルを回せば絞り優先自動露出(Avモード)へと切り替わり、モードダイヤルで切り替えることなく瞬時に好みの自動露出で撮影でき、グリーンボタンを押せばいつでもPモードにリセットできる機能です。

Pモードでスナップ撮影中に、動きのある被写体に出会った時に瞬時にTvモードにしたり、瞬時にAvモードにして被写界深度をコントロールしたい時に便利です。

K-3 Mark IIIでは、TvモードとAvモードを前後電子ダイヤルで簡単に切り替える事ができる従来のタイプをSTANDARDとして残しつつ、新たにADVANCEDを加えました。Pモードから、前電子ダイヤルだけを回している間はTvモード、後電子ダイヤルだけを回している間はAvモードですが、更にもう一方のダイヤルを回すとシャッター&絞り優先自動露出(TAvモード)へと切り替わる点で異なります。TAvモードは、シャッター速度と絞り値を設定するとISO感度をカメラが自動的に選択するPENTAX独自の露出モードですが、ISO感度の選択域が大きく広がったからこそTAvモードのメリットが大きく、絞った上で高速シャッターにするなど被写界深度と動感を自在にコントロールでき、撮影者の創造力をより自由に発揮できるようになっています。ISO感度を固定すればMモードにもすることができ、モードダイヤルを変更することなくPモードからMモードまで移行することも可能です。

露出を決める要素は、シャッター速度・絞り値とISO感度ですが、フィルム時代には使用するフィルムを交換するまでは固定されていたISO感度も、デジタルではカメラで1枚ごとにでも変更できるようになりました。PENTAXでは、露出モードにTAvモードや感度優先自動露出(Svモード)を搭載するなど、ISO感度をシャッター速度・絞り値と同列に扱うようにしてきました。

シャッター速度と絞り値を前後の電子ダイヤルで操作するのに対して、PENTAX K-1以前の機種では、ISO感度はボタンを押してからダイヤルで変更する操作が基本でしたが、K-1では、前後の電子ダイヤルに加え第3のダイヤルを設け、露出の3要素の1つであるISO感度を含めて直接ダイヤルで制御できるようにしました。更に、ISO感度はオートに任せて露出補正を頻繁に使用する場合には、ダイヤルを露出補正に変更することもできるようにしています。これが第3のダイヤルの機能をカスタマイズできるようにしたスマートファンクションが生まれた大きな背景です。

K-3 Mark IIIでは、スマートファンクションに「E-Dial」という機能を新たに搭載し、第3のダイヤルをISO感度か露出補正どちらにするか露出モードごとに選択できるようにして、モードダイヤルを変更した時に自動的に切り替わるようにしました。これにより、マニュアル露出(Mモード)ではISO感度にして3ダイヤルで露出の3要素を切り替え、プログラム自動露出(Pモード)では露出補正として用いる、といったことを、露出モードを変更した時にスマートファンクションの機能を切り替えることなくできるようにしました。

露出制御の機能は、実際に使ってみて頂き、更には使いこなして頂いて初めて価値が生まれるものであり、カメラの進化として分かりにくい部分だと思いますが、写真が好きだからカメラを造るPENTAXは、数値では測れない領域にまでこだわり、ユーザー目線でカメラの使いやすさを追求していきます。

若代 滋(商品企画)

PENTAXの前身である旭光学工業(株)に入社後、画像処理研究者として新規事業の三次元計測システムの開発に従事。 2003年にカメラ事業に異動してからは商品企画一筋で、主にレンズ交換式カメラを担当。

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