望遠レンズの圧縮効果と広角レンズの遠近感、伝えたいことが伝わる使い方

望遠レンズの圧縮効果と広角レンズの遠近感、伝えたいことが伝わる使い方

 1カ月ほど前、望遠レンズで人混みを撮るのは望遠の“圧縮効果”による演出だ、ってんでちょっと燃えたのが記憶に新しい。まあ、人混みや人の流れを撮る時は、ちょっと高い位置から望遠、広角の時は低い位置からってのはセオリーになってるのだけど、どのメディアも同じようなレンズで同じようなアングルでっていう「型通り」の見せ方を見直す機会としてはいいかもしれない。

 先日、たまたま撮ったこの写真。まあ、人が多いなあと思ってカメラを向けたのだけど、Facebookに上げたら「望遠で撮りましたね」と言われた。

 いや使ったレンズは58mmなので、標準レンズ(50mm)よりはほんのちょっと望遠側ではあるものの、望遠レンズというほどではない。でも「望遠で撮った」と思われちゃうのが今日この頃である。

 これが望遠に見えたのは多分、背景が階段&エスカレーターになっていたからかと思う。奥の人まで全部見えるからね。

●望遠の圧縮効果と広角の遠近感

 で、初心者向けに広角と望遠の話。

 広角は広い範囲を撮るレンズ、望遠は遠くのものを撮るレンズと思いがちだけど、急にいろんなところで使われるようになった「圧縮効果」という言葉に代表されるように、一番大きな違いは写りの特性。

 レンズは広角になればなるほど画角が広く(写る角度が広くなる)、遠近感が極端に出る(近くのものは大きく、遠くのものは小さく写る)、ピントの合う範囲が広くなる(近くにも遠くにもピントが合う。逆に大きなボケを狙いづらくなる)という特徴がある。

 逆に望遠になればなるほど、画角が狭く(撮れるのが狭い範囲になるので結果として大きく写ることになる)、遠近感がどんどん乏しくなり(これを圧縮効果と呼んでいる)、ピントの合う範囲が狭くなる(前後をぼかしやすくなる。逆に近くにも遠くにもピントを合わせたい時難しい)という特徴がある。

 それを人混みでテストするのもアレなので、雪を撮ってみた。東京に雪が降った日だ。

 広角だと「え、どこに雪?」である。35mm判換算判換算で24mm相当だ。

 これを200mm相当の望遠で撮ると、めちゃ雪が降ってるように見える。

 この2枚。撮影した場所や時刻は同じ。

 雪がたくさん降ってるように見せるには、望遠で、背景が「暗い」ところを狙う(雪が白いのでその方が目立つ)のがポイントだ。東京に雪が降った日のニュースの画像を見るとそれを意識して撮ったカットが使われてると思う。

●同じ大きさになるよう焦点距離を変えながら撮ると

 今度は階段。同じ場所からではなく、同じ範囲が写るように近くから広角で、遠くから望遠で撮ってみた。

 たまたま神田明神の男坂を撮ったカットがあったのでそれを。撮影日が違うので片方には雪が残ってたりするけどそれは気にせず。

 まずは広角。24mm相当の広角で階段のすぐ下から見上げたカット。遠近が極端につくので階段の上に向かってググッとすぼまってて遠さを感じる。

 逆に望遠で少し離れて撮ると、遠近感がなくなり、階段の下も上も同じような幅で階段の上に見える社殿も大きく、遠近感が乏しい。その分、階段が崖のように見える。焦点距離は35mm判換算判換算で114mm相当だ。

 階段の長さを見せたいなら近くから広角で、高低差を見せたいなら望遠で遠くから撮った方が伝わるってのが分かる。

 分かりやすいよう、坂道に対してちょっとずつ焦点距離を変えながら撮ってみた。カメラはオリンパスのE-M1 mark IIで、レンズは12-100mmを使った。

 最初は超激坂っぽい写真なのに(まあ超激坂ではある。世田谷区の激坂好きには有名な“岡本三丁目の坂”、最近は“富士見坂”とも)、広角にして近くにつれて傾斜はそれほどでもないけど長い坂って感じになる。

 つまり、坂を「激坂」っぽく、さらには「壁っぽく」撮りたい時は、目一杯遠くから望遠で撮れってことだが、直線である程度距離を撮れる道、あるいは見通しが良い撮影場所がある坂道じゃないとできないわけで、その代表が鳥取県にある「ベタ踏み坂」というわけだ。

 じゃあ坂の上から撮る時はどうか。撮ったのは同じ坂だ。

 坂の上から撮る時は坂に近寄らないと坂全体を撮れない。でも広角だと遠近感が強く出るので、長くて急な坂っぽくはなる。

 階段や坂は撮影する距離と焦点距離で印象をコントロールできる、というとアレだけど、どういう場所だと伝えたいかで撮り方が変わる。

 建物の場合も近くで広角で見上げるか、遠くから望遠で撮るかで建物の形の見え方が全然違ってくる。

 広角と望遠の使い分けの基本だ。

 せっかくなので人物も撮ってみよう。

 以前、ITmediaのカメラレビュー用作例として撮った中からピックアップ。

 1枚目は24mm相当で「EOS M6」で撮影したもの。緩くて長い階段の上で、遠近感を強調するために少し俯瞰(ふかん)で撮ってみた。

 2枚目は同じくEOS M6で180mm相当。こちらは正面から。

 どちらもバストアップになるよう撮影距離を調整している。望遠の方は背景のビルがすぐ後ろに迫ってる。

 主な違いは3点。

 1つは広角の方が背景が広く写り、望遠の方が背景が整理されてスッキリすること。

 1つは広角より望遠の方が背景が大きくボケて被写体と背景が分離すること。

 1つは顔と体のバランスと顔の形が違うこと。

 広角は遠近感が強く出るので顔に立体感が出るし、少し上から撮ったことで体に比べて顔も大きく写る。望遠だと顔と体のバランスがすごくフラットで顔の形もきれいに出る。

 望遠の方が形がきれいに出るので、顔やスタイルを綺麗に撮りたいなら望遠気味で撮った方がいい。一般に70〜90mm相当くらいの中望遠レンズがポートレート用とされているけど、姿形がきれいに出て背景をぼかして被写体を目立たせることができるからだ。

 でも近寄って広角で撮ると親近感が出る。それはそれで写真としておもしろくなる。

 望遠レンズの圧縮効果の話が流行ったのを受けて、広角レンズと望遠レンズの写りの差の話をしてみた。この辺を意識して、伝えたいことが伝わるよう使い分けてもらえれば良いかと思うし、逆に写真を見るときにどういう狙いでどういうレンズで撮ったのか意識するとまた面白いのである。

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