オンラインクレーンゲーム「トレバ」、従業員が証言 「景品獲得されぬよう裏操作した」「1000回やっても獲れない」

オンラインクレーンゲーム「トレバ」、従業員が証言 「景品獲得されぬよう裏操作した」「1000回やっても獲れない」

 「景品が獲得されないよう、日常的に裏操作していました」「1000回以上プレイされても1回も景品が獲れない台はいまだにあります」「アームパワーを勝手に上げた台を従業員自身がプレイして景品を不正獲得していました」――。サイバーステップが運営するオンラインクレーンゲーム「トレバ」について、現役従業員など複数の関係者がねとらぼ編集部に内情を告発。「詐欺だと言われても仕方がない」「原因はパワハラ」など、運営の実態を語りました。

「トレバ」に持ち上がった疑惑

 ポイントを購入することにより、実在するクレーンゲーム機をオンライン上で遠隔操作できるオンラインクレーンゲーム。筐体数約1800台を誇る「トレバ」は業界最大手で、海外でも人気のサービスとなっています。

 ねとらぼ編集部では2020年11月23日に「オンラインクレーンゲーム『トレバ』、景品獲得されそうになると“スタッフが裏操作”していたと発覚 被害者と運営会社を取材」との記事を掲載。「景品の大幅な配送遅延」「ずさんな在庫管理」「テストプレイが不十分な台の解放」「不具合発生時のポイント返還拒否」「GET判定のあいまいさ」「景品が獲られぬように連続プレイ中の台をスタッフが遠隔操作で設定を変更している」など複数の疑惑について、被害プレイヤーとサイバーステップ、双方の主張を取り上げました。

 また記事内にて広く情報提供を呼び掛けたところ、「プレイ中に従業員が乱入してアームを触られた」「194回プレイしたが景品が落ちず、問合わせしたところ、一方的に34万9200TPを返還された」など、36件もの情報提供が寄せられました。

 またこうした情報提供に加え、今回の取材では現役従業員をはじめ複数の関係者とコンタクトを取ることができました。

「景品が獲得されないよう、日常的に裏操作していました」――元営業所勤務Aさんの証言

 まずお話を伺ったのは、元従業員のAさん。サイバーステップへ入社後、「営業所」と呼ばれる倉庫で勤務していたと言います。

――Aさんが担当されていたお仕事について教えてください。

Aさん:「トレバ」は三郷、三郷中央、草加、草加東、谷和原、柏と6つの拠点に約1800台の筐体を設置しているのですが、私はその中の1つで筐体の設定などを行っていました。

――筐体の設定というのはどんな作業なのでしょうか。

Aさん:景品をどうやって獲得してもらうのかを考えてアームのパワーや下降制限を設定したり、景品を置く位置を調整したりしていました。都市伝説的に広まっている「たこ焼きキャッチャーの当たり穴から風が出ている」とか「確率機能を使っている(※)」とかいうのはなかったです。

 入社当初は、自分が作った筐体の設定がオンラインで配信されて、お客さまも楽しんでプレイしてくださってという状況が本当に楽しくて、やりがいを感じていました。しかし次第に「原価率を下げろ」「とにかく獲れにくい台を作れ」と厳しい指示を受けるようになっていきました。

(※)確率機能……何回目にアームパワーが強くなるといった設定のこと。「トレバ」は自社開発のオリジナル台を採用しており、確率機能自体は搭載されているものの、使用が禁じられているという。

――「トレバ」の「原価率」について詳しく教えてください。

Aさん:原価率は「景品の仕入れ価格÷売上×100」で計算され、「トレバ」の場合は大体20%前後が目標とされていました。しかし、この原価率というのは、あくまでも“有料プレイ”を行ったお客さまが対象になるので、無料プレイ分(※)も合わせて計上すると獲得確率は数パーセント、ひどい台だと1%を切っているというものもザラにありました。

 とにかく「獲れない台」を作ることを強要される中、仕事としてなんとかこなしていましたが、今考えると詐欺だと言われても仕方がないような設定の台も多かったと思います。

(※)トレバではログインボーナス的に無料プレイチケットを配布している。基本は1日1枚でキャンペーン時は5枚など、配布枚数は日によって異なる。

――「とにかく『獲れない台』を作ることを強要される」とのことですが、具体的にはどういった指示が行われていたのですか。

Aさん:「トレバ」は、サイバーステップの売上の大部分を占めているので、事業部の総責任者である幹部から「原価率を下げること」と「売上を上げること」について厳しい指示が毎日出されています。

 この幹部というのが本当に威圧的で……とにかくその幹部がいるだけで営業所がピリピリしますし、「トレバ」がここまでおかしくなったのは、正直幹部のパワハラが原因だと考えている従業員は多いと思います。

――「ここまでおかしくなった」というのは。

Aさん:「獲れそうに見えて実は獲れないという台」が激増していることです。現場のスタッフは「原価率」と「売上」について厳しく指示を受けているため、景品補充を行う度に“巡回スタッフ”がアームパワーを下げたり、下降制限を付けたり、アームの離し位置を変更したりと変更を加えまくるので、時間経過とともにどんどん私たち“筐体設定担当”が作った設定とは全く異なる状態、つまり、獲れない台が増えていくんです。

――サイバーステップは先の取材で、「手で簡易的に景品の動作を想定・確認した後、実際にクレーンを操作し、景品を獲得するまでを一連の流れとし、テストを行っております」と回答していましたが、設定変更のたびにアームを操作して獲得確認をしているのでしょうか。

Aさん:「数十回に1回しか獲得できない設定」にしているのに、1台につき数十回もテストプレイをしていたら仕事になりません。ですから、そんなことをやっている従業員はほとんどいないでしょう。

 そもそも、筐体設定担当の従業員ですら獲得まで確認している場合はほとんどないと思います。というのも、アルバイトが長時間テストプレイをしていた場合、社員は「時間の無駄だからそれ以上やらなくていい。ある程度の動きが確認できればいいよ」と指示を出していましたから。

 また、従業員も熟練度が増してくると、「この景品だったらアームパワーはこれぐらいで、下降制限はこれぐらい」といった形で、景品を見た瞬間に頭にパラメーターの数字が浮かぶんです。ですから、それを参考に設定し、数回アームを使ったチェックで景品が動くかを確認して終了です。ねとらぼの記事が出てからは、「テストプレイの徹底」といった指示が出ていますが、先ほど話したような理由から、実際にはやっていない従業員がほとんどだと思います。

――では、実際には「獲得できるかどうか分からない状態」で台開放を行い、かつ、時間経過によって筐体設定時よりも設定がどんどん変化していくのに、ユーザーには「景品が獲得できる」と言い切っていたということですか。

Aさん:まさにその通りです。獲得できることを確認をしていないから、最終局面でアームが届かないといったことが頻発しているのです。

――ユーザーのプレイ中にアームパワーを調整するなど裏で操作したことはありますか。

Aさん:私自身、アームパワーを裏で操作する不正を行っていました。私がいた営業所はとにかく「原価率を下げなくてはならない」という考え方でしたし、自分の担当台で原価率が上がると大変なことになるため、お客さまに景品を獲られたくない一心でアルバイトも社員も日常的にこうした不正を行っていました。

――「プレイ中にアームパワーを変更してはならない」といったマニュアルなどは存在しないのでしょうか。

Aさん:私の在職中は本当に何もかもがずさんでしたから、マニュアルはおそらく存在していないと思います。営業所によって判断が違う、従業員によってGET判定が違うといったこともよく起きていました。

 例えば、ねとらぼの記事で紹介されていた「景品は落下しているけれどもタグだけが橋渡しに挟まった景品が獲得にならなかった」という事例についても、私の認識では「獲得」です。獲得判定者がレギュレーションを把握していなかったのかもしれません。

――「一部従業員が筐体のアームパワーなどを勝手に上げてから、勤務中に自分のアカウントで『トレバ』をプレイし、景品を不正に取得していた」という情報提供も寄せられているのですが、そういう話は聞いたことがありますか。

Aさん:それは事実です。営業所によっては私物の持ち込みが容易なところもあったので起きた事件だと聞いています。これは結局会社にもバレたようで、当該の従業員は厳しい処分を受けましたが、個人的にはバレたのは氷山の一角だろうと思っています。

 この他にも、営業所に筐体ディスプレイ用で届いた景品が盗まれるという事件もたびたび起きていました。ディスプレイ景品の中にはお客さまに発送する分の在庫も含まれているので、発生するたびに当然大問題になっていましたが。

――従業員が景品を不正入手すると、原価率がその分上がってしまうわけですから、ユーザーはそのあおりを受けていた可能性もあるということでしょうか。Aさんはどうしてサイバーステップを退社されたのですか。

Aさん:「獲れない台」を作ることを強要されることとパワハラに限界を感じたからです。

 毎日毎日「原価率を下げましょう」「獲られにくい台を作りましょう」と言われる中、自分がいくら良心的な設定にしたとしても、結局は時間経過とともに調整担当者が“獲れない台”にしてしまいます。そんな状態だともちろんお客さまもプレイしてくださらないので、不人気台になって景品は大量に売れ残ります。だから別の人気の景品を入れて新たに設定をし直すのですが、調整が入るとまた獲れなくなって不人気台になって――とそのループなんですよね。

 ただでさえシリコンスプレーやアルコールシートで滑り止めを効かせたり、重り(アクリルロック)なども入れて獲れにくくしたりしているのに、これ以上、獲れない設定を作るのはもう無理だろうと思いました。

 成績を上げても従業員には何の見返りもなく、ただ会社が売上をアップさせるだけ。それでいて、もしも従業員が目標を達成できないと厳しく叱責されるという環境で、サイバーステップに貢献する意味を感じられなくなったというのが退職の理由です。

――最後に一言あればお願いします。

Aさん:ねとらぼで記事が出た内容については、「『トレバ』で働いている人ならあの記事を見て驚く人はいないだろうな」と思いました。

 従業員サイドとしては、もう少しまともに景品が獲れるような、詐欺的ではないような設定に改めることだったり、パワハラ体制を会社が正しく認識することだったりが重要なのではないかと感じています。

「1000回以上プレイされても1回も景品が獲れない台はいまだにあります」 現役従業員Bさんの証言

 続いてお話を伺ったのは、現役従業員のBさん。Aさんが勤務していた営業所とは別の営業所で現在も勤務しています。

――さっそくですが、Bさんは「不正」の類に遭遇したことはありますか。

Bさん:これは少し答えづらいですね。会社は「営業努力」、ユーザーからすると「不正」と見え方が変わることかもしれないからです。ただ、「1000回以上プレイされているのに一度も景品が獲得されていない台」や「事前に獲得できるかどうかまでテストプレイがされていない台」や「テストプレイ時とユーザーへの台開放時ではアームパワーが変わっている台」を見たことはあります。

――営業努力という見方について、もう少し詳しく教えていただけますか。

Bさん:「トレバ」はサイバーステップの売上の要なので、事業部の責任者である幹部がしょっちゅう「原価率抑えられないですか?」「原価率○○%以下を保ってください」とかなり厳しい指示を出してくるんです。

 営業所の原価率は、常に会社内のチャットワークで共有され、成績の悪い営業所の責任者は、そのチャットワーク内で厳しく叱られます。さらに営業所によっては、「スタッフ全員の売上」「個人成績」などが貼り出されますから、どの従業員も自分がダメだと思われたくなくて必死なんですよ。こうした状況がプレイヤーにとってだまし討ちに近いような台設定を生み出しています。

――だまし討ちに近いような台設定というのは。

Bさん:例えばある筐体の景品が「1000回目のプレイで1つ獲得」されたとします。この場合、普通に考えると獲得率は「1/1000」で計算されますよね。しかし、「トレバ」では毎日無料プレイチケットを配っている関係で「1/有料プレイ分」という計算になっているんです。つまり1000プレイの内、無料プレイが950回、有料プレイが50回だとすると、本当は「1/1000」なのに、内部では「1/50」という評価になるんです。

 このように回数ベースで見ると獲得率1%を切るような状態の台がゴロゴロあるのに、そこからさらに「原価率を下げろ」という厳しい指示が来るわけですから、「どんなことをしてでも取れない台を作るしかない」という考え方の従業員は多いと思います。

 ねとらぼで指摘された、「獲得されそうになると“スタッフが裏操作”」の台などはまさにこれに該当するケースですし、1000回以上プレイされているのに一度も景品獲得されていないという台も見たことがあります。

――Bさんはユーザーのプレイ中に設定変更を行ったことはありますか。

Bさん:プレイ中の設定変更をしてはいけないというルールがあいまいだったので、私自身もそれが徹底できていたかと言われればできていなかったかもしれません。

 ちなみに前回ねとらぼで取り上げていた「連続プレイ中にアームの動きが変わった」という事例については、アルバイトではなく社員が行ったものだと聞いていて、操作ミスであのようなことは起きないと思っています。

――サイバーステップ社は前回の取材時、「実際にクレーンを操作し、景品を獲得するまでを一連の流れとし、テストを行っております」と、台開放前にテストプレイを行っていることを強調していましたが、いまだに「事前に獲得できるかどうかまでテストプレイがされていない台」は存在しているのでしょうか。

Bさん:これまでは、暗黙の了解的にテストプレイを行っていない従業員が多く、そのことは上も把握していたと思います。しかし、ねとらぼの記事が出てからは、テストプレイを徹底するように厳しく指示されるようになりました。

 ただし、筐体の設定が完了し、オープンした後に調整を加えた場合については、獲得までのテストプレイはほとんど行っていません。いまだに“ユーザーのプレイを見ながら調整していく”という従業員は多いです。

 また営業所によっては、テストプレイ時はアームパワーを上げておいて、ユーザーへの台解放時にはアームパワーを下げていたということもありました。

――Bさんは現役の従業員さんということで、告発には勇気が要ったと思います。それでもお話しようと決めたのは、どういう思いからですか。

Bさん:私は決して「トレバ」を潰したいわけではありません。ただ詐欺とはいわないまでも、だまし討ちに近い運営をして、ユーザーをあざむいているような状況には思うところがありました。

 現場は「成績の貼りだし」「厳しい叱責」等のパワハラ的な状況が積み重なった結果、どんなことをしてでも原価率を下げなくてはならないという状況にさらされた従業員がどんどん獲れにくい台を作ってしまう。その上でユーザーからクレームが来たり、問題になってしまったりすると、始末書を書かされる。従業員にとっては本当に悲惨な状況です。

 今回の騒動をきっかけに「トレバ」は少しずつ変わり始めているという声も聞いています。あらためるべきところがあるのであればあらためて、ユーザーに心から楽しんでいただけるようなサービスを提供できるようになってほしいです。

 またねとらぼ編集部では、Aさん、Bさん以外にも複数のサイバーステップ関係者を取材し、今「トレバ」で起きていること、「トレバ」に対して感じる問題点についてお話を聞くことができました。

 その中で目立ったのは一部の幹部からのパワーハラスメントが疑われる発言や行動で、「平手打ちを受けた従業員がいると聞いた」という声や、結婚している女性従業員に対して、「子どもができたら産休に入るだろう」と、突然業務を外されるマタニティーハラスメントを行う様子を見たという人も。

 この他にも、幹部らが酒の席などで、セクハラやパワハラを行っていたという目撃情報も寄せられています。

 こうした事態について従業員らは人事担当者や内部監査へ報告しているとのことですが、結局被害に遭った従業員が現場を去るという状況が続いているようです。

「倉庫内の衛生管理が怖い」 元倉庫従業員の証言

 また前回の記事で取り上げた「配送遅延」については、サイバーステップから「トレバ」の景品配送業務を委託されている倉庫会社の元スタッフ・Cさんにお話を聞くことができました。

――Cさんが携わっていた業務について教えてください。

Cさん:「トレバ」関連の景品が保管されている倉庫で、主に在庫の管理や入庫・出庫作業を行っていました。

 2020年10月ごろまで、サイバーステップは別の会社に倉庫業務を依頼していたのですが、その会社が度を越した配送遅延を行い続けたため大きな問題になったそうで、私が勤めていた倉庫会社に契約を移行したと聞いていました。

――Cさんが勤める会社に移行してからは配送遅延は減っていますか。

Cさん:移行前は本当にひどかったと聞いているのですが、今は大幅に減っていると思います。ただそれはあくまでも国内の話であって、海外ユーザーさんへの発送は大変なことになっていますよ。

 海外で多い送り先は、アメリカ・カナダ・オーストラリア・韓国あたりで、海外発送には複数社の配送会社を使っていましたが、前任の倉庫会社から引き継いだ時点で1業者につき4~5万件の発送遅延が発生していました。しかもこれを年内に片づけないといけないと言われていたので、ゾッとしました(※)。

(※)2020年の年内にの意。

――荷物の量は国内と国外で見るとどれぐらいの比率なのでしょうか。

Cさん:同じぐらいの量ですよ。ただ国内のユーザーさんには丁寧に梱包して送りますが、海外のユーザーさんの場合、1人で50箱とかという方もいるので、「とにかく詰めればOK」という感じで梱包もろくにせずに送っていましたね。

――量は減っているものの、今もまだ配送遅延が起きているとの声があります。遅延の原因は他にどういうのが考えられますか?。

Cさん:それは単純に景品が手元になくて送れないものではないかと思います。在庫がないという場合もありますし、倉庫や配送の過程で景品が紛失してしまったという場合もありますね。

――景品を紛失するというのは。

Cさん:配送依頼が来ると、流れ作業で検品して、梱包して、送り状を貼り付けて出荷するのですが、単純作業の連続なので、中には送り状を貼り付け忘れたままトラックに乗せてしまった、ということなどが起きるんです。国内の配送業者さんの場合は「これ、貼り忘れてますよ」と次回集荷時などに返しに来てくれるのですが、海外の業者の場合はそのまま業者が持ち去ってしまうケースがほとんどなので、こちらは発送したと思っていても、実際には届いていないというケースもあると思います。

 また倉庫内での紛失についてですが、これは分かりやすく言うと従業員などによる盗難の可能性が高いです。『鬼滅の刃』関連など、人気景品がなくなることがあり、途中から退勤時には身体検査をされるようになりました。

――他にも景品にほこりが付いていた、とか、ゴキブリのような虫が入っていたとか、そもそも開封済みの景品が届いたという報告も寄せられているのですが。

Cさん:まず開封済み景品についてですが、倉庫で景品を開封する暇なんてありませんから、それは倉庫外での出来事だと思います。

 ただ倉庫は空調がないので、窓は当然全開ですし、トラックが入ってこれるようにシャッターも空けていましたから、虫が入ることは全然あり得るでしょうね。また景品については倉庫に届いたときから外箱がボロボロだったり、売れ残りすぎてほこりがつもりにつもっている場合もあるのですが、そもそも汚れを拭き取るぞうきん等は支給されませんし、上司は常に「1秒でも早く詰めろ」と言ってくるので、外装が破損しているなど、明らかにまずいなという場合を除いて、そのまま詰めていました。

 私はフィギュアなどに興味がないタイプですが、もしすごくほしい景品を苦労して取って、あんな箱がボロボロの状態で届いたら嫌だろうなとは思います。また仮に私が「トレバ」をプレイすることになったとしても、倉庫内の衛生管理が怖いので、食品類は絶対に獲らないようにします。食品関連の他の倉庫でも働いた経験がありますが、あそこまでずさんな管理はなかなかないです。

 複数の関係者への取材で見えてきた「トレバ」の運営実態。

 前回の記事の争点の1つであった「景品が獲られそうになるとスタッフがプレイ中の台の設定を裏で操作」していたという疑惑については、サイバーステップ側から「オンラインクレーンゲームの運営上に関わる操作ミス等で起きた事象」であり、「意図的に、ひいては悪意をもって恒常的、組織的に行っている」訳ではないとの抗議声明が発表されていますが、元従業員と現役従業員から「お客さまに景品を獲られたくない一心でアルバイトも社員も日常的にこうした不正を行っていた」「操作ミスであのようなことは起きない」との証言が得られたことにより、その主張とは食い違う結果となりました。

 また今回の取材では、前回の記事内で告発を行った複数のプレイヤーに対して「トレバ」運営が、アカウントの利用制限、および利用資格停止を行ったことも分かりました。

 利用資格の停止が行われた一部のプレイヤーによると、利用資格停止前に獲得した景品に配送遅延が発生し、それについては「無料プレイチケット」の配布(プレイヤーはアカウントの資格停止を行われたため使用できない)を行うという不可解な対応が取られたと言います。

 こうした状況も踏まえ、トレバ被害者の会はねとらぼ編集部の取材に対し、「前回の記事が出ることで『トレバ』運営及びサイバーステップが非を認めてくれたらという思いがあったので、報復行為は非常に残念に感じています。連日数多くの被害者から情報提供が寄せられていることをかんがみて、弁護士への相談も継続して行っています」とコメントしました。

 また、「トレバ」では12月11日に大規模な「無料チケット誤配布」バグが新たに発生。チケットは後に回収とされたほか、誤配布とは知らずにチケットを使って景品を獲得したプレイヤーには、あとから景品を没収するなどの措置を取ることが発表され、「やっとほしかった景品が獲れたのに、後から景品没収はひどすぎる」「獲得するための時間を返してほしいですし、バグは『トレバ』側の瑕疵なのに、まるでプレイヤーが不正を行ったかのような対応にも腹が立ちます」と怒りをあらわにするプレイヤーもいるなど、一連の対応が新たな波紋を呼んでいます。

 「店舗内において客に遊技をさせることが想定されない」ことなどから、経済産業省が、「風営法の規制を受けない」との見解を示しているオンラインクレーンゲーム産業。大手ゲームセンターも続々と参入するなど盛り上がりを見せる一方で、プレイヤーに対する不誠実な対応やリアルのゲームセンターでは起きえないようなトラブルが続発しているのも事実です。

 オンラインクレーンゲーム産業が抱える問題点や法整備などについては、1月4日掲載の記事でも詳しくお伝えします。

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