コロナ禍で苦境に立たされた飲食店を「おひとり様」が助ける根拠

コロナ禍で苦境に立たされた飲食店を「おひとり様」が助ける根拠

 新型コロナウイルスの第3波を受け、11月下旬より、東京都、大阪市、札幌市、名古屋市などで飲食店の時間短縮要請が出ました。政府は、「時間短縮に協力する店舗に対して国としてしっかり支援をしていきたい」と補償体制を約束しました。

 しかし、飲食店側からすれば、春先からこれまでもずっと堪えてきて、「ようやくこれからだ」というときにこれでは、多少の支援金が出たところで、まさに「閉めるも地獄、開けるも地獄」と嘆きたいところでしょう。

 日本フードサービス協会による2020年の飲食業各業態別の前年同月比推移をみると、その凄まじさがわかります。特に、甚大な影響を受けたのが酒を提供するパブや居酒屋などの業態です。4月の前年比8.6%、5月も10%です。(外部配信先ではグラフや図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

 前年同月の9割減になってしまったのです。それに比べれば、ファストフード業態は減少したとはいえそれでも2割減程度で済んでいます。これは、緊急事態宣言下において「夜の街」と名指しされたことの影響も大きいでしょう。それでも、9月には前年比51%、10月は64%まで回復してきた矢先です。彼らのショックは計り知れません。

 コロナ禍において、ずっと言い続けられてきた「生命か、経済か」という議論があります。有名な「トロッコ問題」に当てはめて、どっちにレバーを切るべきかという論争になっています。

■「生命か経済か」の二者択一ではない

 生命を優先すべきだという人は「まずは感染者をゼロにすることが先だ」と主張し、経済を優先すべきという方は「経済を止めれば、コロナ死亡者以上の死者が出る」と声を上げます。

 どちらにせよ、互いに「自分の意見こそ正しい」という主張の応酬は不毛です。そもそも問題は、「生命か、経済か」の二者択一の問題ではないのです。一時期、「withコロナ」という言葉が盛んに言われましたが、この論争を見ると、「コロナを駆逐するか、さもなくば、死ぬか」という極端な思考に陥っており、ちっとも「with」ではないように思えます。

 コロナは、マスクの直用とソーシャルディスタンスの合わせ技で、ある程度その感染を抑えられるともいわれます。そもそも、最大の問題は会話による飛沫の拡散です。平日朝、満員電車で通勤していても、そこでクラスターが発生したという話は聞いたことがありません。

 マスク着用のうえ、無言で行動するのであれば、ある程度の密集があっても問題ないといえます。ただし、飲食店ではそういうわけにいきません。仲の良い友達と飲みに行って、酔いがまわれば、ついついマスクなしでの会話に花が咲くでしょう。そうしたことを考えれば、冒頭のような飲食店に対する自粛要請も致し方ないのかもしれません。 

 ところが、よく考えていただきたいのは、何も飲食店で食事やお酒を飲む客というのは、団体客だけではありません。1人でお店に行って1人で飲食するソロ客の存在を忘れてはいないでしょうか。

 ソロ客は、オーダー時は声を発するかもしれませんが、それ以外は黙って食し、飲んで帰ります。たとえ彼らが大挙して押し寄せたとしても、それは満員電車と同様、感染のリスクは低いと考えられます。

 GoToキャンペーンのフォーマットに則るかどうか別にして、いちばんつらい思いをしている飲食店の方々を本当の意味で救うのであれば、ソロでの飲食、つまり「GoToSolo」こそがこの難局を打開するカギになるのではないでしょうか。

■ガストも1人席を作って話題になった

 そもそも、コロナ以前から、飲食店においてはソロ外食の機運は高まっていました。2019年に、ファミリーレストラン「ガスト」が、1人席を作って話題になりました。席の両側についたてを配置し、電源を備えて、まるでネットカフェのような空間が人気です。

「夫婦と子の家族」は今や3割弱しかいない現実にも書いたように、かつて標準世帯といわれたような夫婦と子世帯はこれからますます減っていきます。2040年には2割程度しかいなくなるのです。代わって、世帯の中心は全体の4割を占める単身世帯となります。ファミレスはファミless(ファミリーLess)となってしまいます。

 その他、1人カラオケのサービスもずいぶん前から浸透していますし、1人来客専用のバーもあります。新しいところでは、大勢でつつくのが定番だった鍋料理も、感染防止の観点からすべて「1人用鍋」での提供に変化しており、それはいわば1人で行っても何の問題もない形と言えます。

 「ソロ客に限定なんかしたら、人数も客単価も下がって逆効果だ」などとお思いになるでしょうか。ところが、そんなこともないのです。そもそも、コロナ以前でさえ外食産業を支えてきたのは、ソロ客の人たちです。

この連載でも、2017年に外食費は1家族以上! 独身男は「よき消費者」だという記事で、そのことは書きましたが、今回改めて、2007~2019年までの家計調査のデータを更新してみました。1人暮らし単身勤労者男女と家族世帯(2人以上の勤労者世帯)の期間平均外食費を比べてみても、その傾向は変わってはいません。

 具体的には、家族の外食費を100とすれば、34歳までの単身男性の外食費は170、35~59歳では149、34歳までの単身女性も108、35~59歳では70と、35歳以上の単身女性以外はすべて、家族よりソロのほうが外食にかける実額で上回っていることになります。

■ソロの外食自粛のほうが店には痛かった

 これが、コロナ禍において、外食産業がもっとも打撃を受けた4~6月の第2四半期でみると、34歳以下単身男性の外食費は月当たり▲1.5万円、35~59歳単身男性は同▲1.3万円、34歳以下単身女性は▲9000円、35~59歳単身女性が▲8000円とソロたちの外食費が大きく減少しました。家族は▲6000円なので、外食店舗にしてみればソロの外食自粛のほうが店にとっては痛かったと言えます。

 それでも、こうした反論もきます。「ソロの外食費が高いのはわかったが、独身だからといって、全員が1人で外食しているわけではない。そもそも外食は友達や恋人など複数で行くものだろう」と。

 では、20~50代未既婚男女における、食事のソロ飯率を見てみましょう。1週間当たり何回1人で食事をするか(昼食と夕食のみ)の質問でソロ飯率を割り出したものです。

 ただ、未婚と既婚と分けるだけではなく、未婚でも1人暮らしの単身者と家族と住む親元未婚、それに、同棲中のカップルもいるでしょう。既婚者にしても、夫婦だけの場合や子どもと同居の場合など世帯構造によりソロ飯頻度は異なると思います。よってそれぞれ分類して調査しています。

 結果は以下の通り。未婚男女の1人暮らしのソロ飯率は平均9割です。親元に住む未婚は男で5割、女で4割程度に下がりますが、それでも既婚男女と比べると圧倒的にソロ滅率が高くなっています。

 これに、前述した家計調査での外食費実額とを掛け合わせれば、その外食費の中で1人で行った外食なのか、複数で行った外食なのか、のバランスが推計できます。

■ソロ外食市場の4分の3を独身が占めている

 結果から言えば、20~50代に限った年間のソロ外食規模は、独身男性が約2兆2700億円、独身女性が約8600億円、2人以上世帯の家族は約9900億円となります。ソロ外食市場の4分の3を独身が占めていることになります。ここでいう独身には、単身者だけではなく、家計調査に表れない「目に見えない」親元同居独身の消費も含みます。

 無論、これはソロ外食規模なので家族が少なくなるのは当然ですが、総外食市場内においても独身のソロ外食が占める割合は34%、独身男性のソロ外食だけで25%ですから、いかに外食産業において独身男性のソロ外食行動が貢献しているかがわかると思います。だてに、彼らはエンゲル係数が高いわけではないのです。

 感染防止に気を付けながらも、経済を回す。それは決して矛盾することではありません。自粛すべきは外食ではなく会食です。「GoToSolo外食」ならそれが解決できるはずです。

 今まで飲食店においては、正直「おひとり様」などと揶揄され、あまり重んじられなかったソロ客たちが、まさに今彼らの窮地を救う救世主となるかもしれません。

 事実、ある居酒屋で「1人客忘年会プラン。3500円で飲み放題」というのがニュースで報道されると、たちまちツイッターで多くの「行きたい」という声があがり話題となりました。「1人で忘年会なんかして何が楽しいの?」という人もいるでしょうが、「1人で飲みたい」という人たちもたくさんいます。

■GoToソロで外食を躊躇していた層も動く

 サン=テグジュペリの「星の王子さま」に、「本当に大切なものは目には見えないんだよ」という言葉があります。我々に必要なのはウイルスと戦うことではありません。感染には十分注意を払いながら、それでも1人1人が限りなく日常生活を取り戻すことです。

 「GoToSolo外食」のお膳立てがあれば、これまでソロ外食を躊躇した層も動く、いわば「目に見えない需要」を喚起する可能性もあります。ソロ客にとってもうれしいサービスになるし、飲食店も助かります。それはそこで働く人たちのお給料となります。1人1人の何気ない日常の行動が、見知らぬ誰かのためになる。社会とは、そうした「目に見えないつながり」によって支え合っているものです。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏