コロナでも伸びるクルーズ旅行、人気の理由とは
ダイヤモンド・プリンセス号のコロナ騒動は記憶に新しく、クルーズ旅行のリスクを顕在化させた。それにもかかわらずクルーズ旅行の予約は伸びを見せているという。なぜクルーズ旅行の人気は高いのか。知られざるその魅力を『おトクに楽しむ豪華客船の旅 クルーズはじめました!』(JTBパブリッシング)などの著者でイラストレーター、クルーズライターとして活動するくぼこまき氏に話を聞いた。
パッキングも日中の移動もなし
クルーズ旅行は疲れない
ウォール・ストリート・ジャーナルによるとコロナ禍でもクルーズファンは健在で、来年の予約も伸びているという。海外だけではなく、日本でもクルーズ旅行の予約が満員になっているサイトも散見される。
今年2月に話題となったダイヤモンド・プリンセス号の集団コロナ感染によって、一般人はクルーズ旅行へ不安を覚えている人も多いかもしれないが、ファンには根強い人気があるようだ。
これまでクルーズ旅行で150泊以上を経験するくぼこまき氏もそのひとり。
「もともと旅行は疲れるので、あまり好きではありませんでした。ただテレビのクルーズ特集で出てきた乗客の人たちがTシャツ、短パンというすごくラフな格好をしていたんです。セレブしか乗れないというイメージがあったのですが、『これなら話のネタに1回行ってみるのもありかな』と思って申し込んだのがきっかけでした」
くぼ氏の初クルーズ旅行はシンガポール発着で、マレーシアのペナン島とタイのプーケットをめぐる3泊4日のコース。行く前は「3泊は長いかも」と感じたものの、船を降りる日には、「涙が出るくらい降りたくなかった」という。
「普通の旅行って移動に時間が取られることが多いし、移動のたびにパッキングしなくてはならないので、すごく疲れるんですよね。ただ、クルーズ旅行は部屋に荷物を置いたら、あとは降りるまでパッキングしなくてもいいんです。また、移動は寝ている夜間(オフタイム)に行われるので、体への負担も少なく、そのぶん目いっぱい寄港地を楽しめます」
カジュアル船なら
5日乗船で4万円も
そもそも、クルーズ旅行は大きくラグジュアリー船、プレミアム船、カジュアル船の3つのクラスに分けられるという。ラグジュアリー船が最も値段が高く、カジュアル船は安い。プレミアム船はその中間となる。
「値段が安いから船内がチープというわけではないです。カテゴリー分けはクルー1人あたりの乗客人数で決められることが多く、要するにサービスレベルの差なんですね。一般的にイメージする何千人も乗るような豪華客船はカジュアル船。船体は小さいけど客室は広めで、クルーがマンツーマンレベルのサービスをしてくれるのがラグジュアリー船です」
くぼ氏がよく乗るのは比較的安価なカジュアル船。「時期を選べば5日乗船して4万円台という船もありますよ」と言うように、庶民でもクルーズ旅行は手の届かない存在ではない。しかも、安いといっても作りは豪華絢爛そのものだ。
「船が巨大なので、エンタメ施設も多いです。プールやシアターは当たり前。中にはメリーゴーラウンド、プールにはウオータースライダーがあったり、人工波を利用してサーフィンができる船もあるなど大人も子どもも楽しめます」
実はクルーズ旅行は、子ども連れでも楽しめるのが特徴だとくぼ氏は語る。
「日本の港を発着する船だと荷物を港まで送れるので、子連れでもすごく楽。12歳以下は無料というクルーズ会社もあり懐にも優しいです。また、船内には子どもを預けられるキッズクラブがあり、専門のクルーがいたり年齢別のプログラムがあったりと子どもは子ども、大人は大人で楽しむことも可能。外国船だと外国人も多いので、子どもが自然と英語を覚えたりもしてプチ留学のような側面もありますね」
毎晩のように行われるショー、ミュージカル、コンサートも子どもにとっては刺激的だ。さらに、万が一子どもが泣いたりしたとき、すぐに部屋に戻ることができるのも親にとってはありがたいという。
ちなみに、これらのエンタメ施設、キッズクラブ、そして朝昼晩の3食などすべて料金に含まれているため、クルーズ旅行は非常にコスパがいいのである。
衛生管理や医療体制など
コロナ対策も徹底
クルーズ旅行と聞いてイメージするのは、セレブたちが着飾り、毎晩ダンスパーティーを繰り広げるという、まさに映画『タイタニック』のような旅行だろう。しかし、現実はまったく違うとくぼ氏は言う。
「たまに『仮面はどこで買ってるの?』と聞かれますが、仮面舞踏会を毎晩やるわけではありません(笑)。メインダイニングなど短パン、サンダルは禁止の場所はありますが、多くの場所はラフな格好でも大丈夫。ただ1週間乗船したら、2日くらいフォーマルデーがあるので、その日の夕食時だけフォーマルな格好はしないといけません。とはいえ女性ならワンピース、男性ならシャツにスラックスで十分ですよ」
ここまで聞けば、十分にクルーズ船の魅力は伝わるが、やはり気になるのは感染の危険性である。しかし、くぼ氏によるとクルーズ船の衛生面は以前から徹底していたという。
「船内のいたるところにアルコール消毒が置かれていましたし、寄港地から船に戻るときやレストランに入る前にも手の消毒を促されます。コロナを経てから、紙からデジタルへの移行、船内でPCR検査キットを完備、隔離用の客室の確保など新しいルールも追加されています。まだコロナに関してわからないことも多いですが、できる限りの衛生管理は徹底していると思います。各船会社のウェブサイトでも対策に関して詳細が記載されており、ソーシャルディスタンスを保つための方法や消毒のルールなどが新たに公開されていますので、ご覧いただくと安心していただけるのではないかと思います」
また、船内には医師や看護師はもちろん常駐し、簡単な手術をできる医務室も設置されていたという。
最後に、くぼ氏に初心者でも楽しめるおすすめのクルーズ船を聞いてみた。
「コスタクルーズはカジュアル船の中でも値段が安いです。イタリア船籍なので、ワインやパスタが充実しており、船内にピザの石窯がある船もあります。クルーも陽気な人が多く、すごく楽しい雰囲気です。あとはロイヤル・カリビアンという会社の船はエンタメが充実しています。船内にロッククライミング、ゴーカートなどがあって、遊びきれないほどです。日本ではまだまだクルーズ旅行の知名度が低いですが、行けば絶対にハマると思います」
コロナ収束後の旅行の選択肢として、「船旅」を入れるのもアリかもしれない。