「食費切り詰めるしか…」40年続けた仕事失った80歳 コロナで貧困直面の高齢者

「食費切り詰めるしか…」40年続けた仕事失った80歳 コロナで貧困直面の高齢者

 新型コロナウイルスの流行が高齢者の就労に深刻な影を落としている。全国の65歳以上の完全失業者数は7月まで6カ月連続で15万人超を記録。コロナ禍以前の13万人前後から急増した。高齢者は非正規雇用の割合が高いため解雇されやすい上、細った求人枠も下の世代に流れがち。感染への不安から求職活動をためらうケースも少なくないとされ、老後資金に乏しい人が収入源を断たれて貧困に陥る懸念が強まっている。

 「食費を切り詰めるしか…」。40年以上、なりわいとしたスーパーの試食販売員の職を失った女性(80)=福岡市南区=は漏らす。

 新型コロナの感染拡大で試食提供が難しくなり、3月に派遣元から休業を言い渡され、退職。すぐ職探しをしたかったが、高齢で感染すれば重症化しやすいと聞き、家にこもった。ようやく8月から求職を始めたが、年齢が壁となり新しい働き口は見つからない。

 夫を早くに亡くし、一人で娘と息子を育て上げた。貯蓄は家族の借金返済などに充ててきた。それでも、月7万円の年金と月10万~15万円の給与で生活は困らなかった。だが、職を失ってからは一変。預金は底を突き、先月の家賃は滞納している。「接客は得意だし、体も元気。仕事がしたくてたまらない」

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 「人生100年時代」を掲げる安倍政権下、高齢者の雇用情勢も改善が続いた。総務省によると、2019年の65歳以上の就業者は892万人。12年から毎年37万~55万人増え、1・5倍に増加した。だが、今年は7月時点で897万人にとどまっており、伸びの鈍化は明らかだ。新型コロナの収束が見えない中、2~7月の完全失業者数も15万~17万人と、過去10年と比べても高水準で推移する。

 高齢就労者の8割は、雇用の「調整弁」になりがちな非正規。企業の業績悪化に伴い、切られやすい立場にある。「その上、若い人たちが職にあぶれたことで高齢者がより働きづらくなっている」。主に60歳以上の就職を支援する公益社団法人「福岡県高齢者能力活用センター」(福岡市)はこう指摘する。

 コロナ禍以前、雇用の受け皿となってきた小売業にも陰りが見える。福岡県内のあるスーパーでは、毎月20人あった新規求人が4月以降、半数以下に。同センターの担当者は、スーパー側から「若い方がいい」と採用枠の大半を若い世代に切り替えたことを告げられた。7月の高齢者向けの就職講座には、想定の1・6倍の約80人が参加した。

 シルバー人材センターは家事や介護補助などの仕事を提供しているが、同県内各センターの4~7月の入会者は1003人で前年同期に比べ475人減少。一方で、退会者は1769人で84人増えた。

 公益社団法人「福岡県シルバー人材センター連合会」は「感染を恐れたり、家族に仕事を控えるよう諭されたりして諦める人は多い。培った知恵や経験が生かされないのは残念だ」としている。 (大坪拓也)

「地域や自治体の目配り必要」

 戎野淑子立正大教授(労使関係論)の話 就業を諦め、年金で生活をつなぐ高齢者は貧困に陥っても顕在化しづらく、地域や自治体の目配りが必要だ。リモートワークなど新たな働き方に高齢者が対応し、能力を発揮できるよう就労支援の充実も求められる。

高齢者の就労状況

 2018年の就業者総数のうち高齢者は12.9%を占め、産業別では卸売業、小売業が127万人で最多。高年齢者雇用安定法は企業に65歳までの雇用継続制度の導入を義務付けており、法改正で21年4月からは70歳まで就業機会を確保することが努力義務化される。

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