みずほ銀行「通帳発行料1100円」の衝撃、有料化の嵐で損しない選択は?

みずほ銀行「通帳発行料1100円」の衝撃、有料化の嵐で損しない選択は?

みずほ銀行が「紙の預金通帳」を発行するのに1100円の手数料を取る方針を発表し、波紋を呼んでいる。今まで「無料が当たり前」だった銀行のサービスが有料化していく流れは、今後加速していくだろう。そのとき私たちが損しないためにすべきことは何かをお伝えしたい。(株式会社生活設計塾クルー ファイナンシャルプランナー 深田晶恵)

大きな話題を呼んだ

「みずほ銀行の通帳有料化」

8月21日、みずほ銀行は「紙の預金通帳」を発行するのに税込み1100円の手数料を取ると発表し、波紋を呼んだ。対象は2021年1月18日以降に70歳未満の人が新規で口座開設した場合で、通帳を紙からデジタルに切り替えていくことを促すのが狙いだ。

インターネット上では「1100円とは高すぎる!」「手数料を取る前に銀行員の給料を下げろ」など、不満の声が多数あがり、話題を集めている。

通帳1冊に1000円を超える手数料を取るというのは、相当インパクトがあったのだろう。みずほ銀行の行員の中には、親から「ニュースを見たけど、お前の働いている銀行は大丈夫か」と心配の電話があった人が少なくないと聞く。

みずほ銀行に限らず、銀行口座や通帳の有料化の流れは、今後加速していくと思われる。昨年12月には三菱UFJ銀行が2年間取引のない不稼働口座に対し、年1200円の口座管理料を徴収する検討に入ったと報じられている。導入は2020年10月ごろとし、こちらもみずほ銀行同様、新規口座開設者のみを対象として考えているという。

長い間、日本では「銀行口座は誰でも無料で利用できる」のが当たり前だったが、銀行がそのサービスを維持できなくなりつつある最大の要因は、印紙税の負担である。

紙の通帳には「1口座当たり年200円の印紙税負担」があることが有料化の大きな理由だ。これは預金者が負担するのではなく、銀行が国に納めるものだ。みずほ銀行が持つ個人口座は約2400万あるので、それだけで印紙代を年48億円も負担している。

この印紙代の200円について、私はこれまで「通帳発行時」と「繰り越し時」にかかるものと誤認していた(つまり、1冊につき200円)。その口座をほとんど使っていなくても、銀行は「1口座につき年200円」を負担するとは驚きだ。

高金利時代なら、融資の利息収入で十分にカバーできる金額だったかもしれない。しかし、日本銀行の異次元金融緩和による超低金利環境が長引く今、それは期待できない。国から求められるマネーロンダリング(資金洗浄)対策の高度化によるコストアップも銀行の収益を圧迫しているようだ。

長期金利がマイナス金利に陥ることもある状況下では、印紙税負担は「やってられない」というのがどの銀行も本音なのだろう。通帳の印刷代だってかかる。一方、デジタル通帳なら印紙税も印刷代もかからないので、みずほ銀行に限らず、他行も早い時期に「紙の通帳有料化」に追随すると思われる。

みずほ「通帳有料化」のポイントを

Q&A方式で詳しく解説!

みずほ銀行の紙の通帳が有料になるのは、あくまで来年1月以降に口座を新規開設した人。ただし、70歳以上の人は対象外となる。有料化のポイントを正確に押さえておこう(以下、法人口座は含まず、個人口座の扱いについて解説)。

Q. 通帳1冊当たり1100円かかるのはどういう場合?

A. 21年1月18日以降に口座を開設した70歳未満の人で、紙の通帳を希望した人。通帳繰り越しにも1100円がかかる。70歳以上の人に対しては、高齢であることを配慮して1月以降の新規開設にも紙の通帳を無料で提供する。

Q. 紙の通帳の代わりとなる「デジタル通帳」とは?

A. 21年1月18日より紙の通帳を発行しない「みずほe-口座」をスタートし、デジタル通帳「みずほダイレクト通帳」を提供する。利用にはインターネットバンキング「みずほダイレクト」への登録が必要。

Q. 「紙」と「デジタル」の通帳の併用は可能か?

A. 併用は不可。

Q. 既存の利用者はどうなる?

A. すでに口座を持っている顧客は有料化の対象外となる。今後も繰り越し時には無料で通帳を受け取ることができる。

Q. 紙の通帳を長期間記帳しないとどうなる?

A. 全ての口座(普通預金、貯蓄預金、定期預金、外貨普通預金、外貨定期預金)について、毎年1月末時点で1年以上記帳がない口座は、自動的に「みずほe-口座」に移行(定期預金は満期から1年)。これまでの「紙の通帳」は使えなくなり、デジタル通帳に切り替えられる。切り替え後に通帳の再発行を希望する場合は、店頭に出向いて手続きすると紙の通帳が無料で再発行できる。ちなみにみずほ銀行では、2400万口座のうち約半数が1年以上記帳されていない。これは70歳以上も対象となるので要注意。

Q. 「デジタル通帳」で何年分の取引明細を見ることができる?

A. 最大10年分。ただし、既存顧客がデジタル通帳に切り替えた場合は、21年1月18日時点では過去3カ月分となり、以降毎月履歴が積み重なっていく仕組み。既存顧客がデジタル通帳に切り替えるなら、直前に紙で記帳しておかないと、3カ月より前の履歴が見られない期間が発生するので注意が必要。

Q. 既存顧客が「デジタル通帳」に切り替えた場合、インセンティブはあるか?

A. 20年1月18日以降に既存顧客が「みずほe-口座」への切り替えを希望すると、抽選で1000円が当たるキャンペーン(1万人が対象)を実施予定。

「紙の通帳」を選択すべきか

デジタルに移行すべきか

今回の「通帳発行有料化」のニュースを受け、私たちはどうするのがいいのだろうか。

すでにみずほ銀行に口座を持っている人は大きな不利益はないと思われるが、1年以上記帳しないとデジタル通帳に切り替えられる点だけには注意したい。

給与振込口座として日常使いをしていて、今後も紙の通帳を使い続けたいなら、月に1回程度の記帳を心掛けよう。記帳ができるATMをチェックしておき、給料日の後に現金を下ろす際に併せて記帳する習慣を持つのがお勧めだ。

現金を引き出す際に記帳をしている人でも、通帳の繰り越しがスムーズにできないと結果的にデジタル通帳に移行されてしまうので、この点も注意が必要だ。

みずほ銀行は、本支店内のATMコーナーの「通帳繰越機」でしか繰り越しができない。自宅や職場の近くにATMコーナーがあっても、そこでは記帳はできても繰り越しができないのだ。そのため、銀行内のATMコーナーに出向く時間がないまま1年が経過すると、デジタル通帳となることを知っておこう。

ちなみに、街のATMで通帳繰り越し機能を利用できるメガバンクは、三菱UFJ銀行だけである(これは便利だ)。

一方、みずほ銀行内のATMコーナーに出向く機会がなく、繰り越しできずに1年が経過し、「みずほe-口座」に自動移行された場合に注意すべきことがある。その後、店頭で紙の通帳を無料で再発行をしてもらうことは可能だが、e-口座に移行する前の未記帳データと、e-口座を利用していた間のデータは紙の通帳に記帳できないのだ。

みずほ銀行の本支店が行きやすい場所にない人は紙の通帳にこだわらず、これをきっかけにデジタル通帳に切り替えることを検討してもいいだろう。家計管理は、ストレスを軽減するのが肝心である。

また、みずほ銀行でずいぶん昔に口座開設したまま、まったく使っていない口座があるなら、思い切って解約することを検討してもいいだろう。「休眠預金等活用法」により、09年1月から10年以上取引のない預金は、休眠預金として預金保険機構に移管されるケースがある。

休眠預金となるのは、10年以上取引がなく、「残高1万円未満」、もしくは「残高1万円以上で届け出住所に通知が届かない(転居先が不明など)」場合だ。当コラムでも『10年放置した銀行口座は2019年から「休眠預金」になり没収される?』と題して解説しているので参考にしてほしい。

「既存顧客は通帳発行手数料がかからない」からといって、その“特権”を大事に持っていても使わないなら本末転倒。休眠預金になる前に解約し、残高を現金化するのが得策だ。

来年1月以降に新規口座を開設することになった、または、すでに口座はあるがこれを機会にデジタル通帳に移行しようと考えるという人にお勧めしたいことがある。それは、残高チェックのためだけに利用するのではなく、家計管理力向上のためにデジタル通帳をちゃんと活用しようということだ。

みずほ銀行に確認をしたところ、デジタル通帳はプリント機能があるし、データをCSVファイルでエクセルにインポートすることも可能ということだ。

長年ファイナンシャルプランナーとして家計相談に乗ってきた経験に基づくと、通帳を家計管理にうまく取り入れている人には、お金が貯まっている人が多い。「貯蓄体質」の人は、使ったお金を振り返る習慣を身に付けているのだ。忙しくて家計簿をつける時間がない人でも、通帳を家計簿代わりにすれば使ったお金を振り返ることができる。

「銀行の通帳を自分なりに使いこなすことができれば、ストレスなくお金を貯めることができる」というのが私の持論。読者のみなさんには貯蓄体質になってほしいと思うので、次回は「通帳活用法」のノウハウをケース別に紹介することにしよう。

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