真のポルシェ911マニアだけに分かる「RS」の価値とは?

真のポルシェ911マニアだけに分かる「RS」の価値とは?

「RS=レン・シュポルト」は、分かる人にだけ分かる通好みの称号だ

 ポルシェのファンにとっては、「RS=レン・シュポルト」も、常に特別な響きを持って迎えられるサブネームだ。その歴史は1950年代の「550スパイダーRS」、あるいは「RSKタイプ718」にまで遡ることが可能で、ポルシェのカスタマーやファンにとって、それは紛れもない憧れの称号である。

 2020年夏にオンラインで開催された、シルバーストーン・オークションズには、このRSの記号を受け継ぐモデルが一気に3台も出揃ったのである。

●1973 ポルシェ911 2.7RS ツーリング

コレクターズアイテムとなっている「ナナサンカレラ」(C)SILVERSTONE AUCTIONS

 まず紹介するのは、911ファンには究極のコレクターズアイテムともいえる1973年式の「911カレラ2.7RS」である。

 同モデルには純粋にレースに使用するための「レーシング」、サーキットとオンロードの両方を楽しむための「スポーツ」、そしておもにオンロードを走るための「ツーリング」が設定されていたが、出品車はツーリングとなる。それでも車重は1075kgと非常に軽量なモデルであった。

 搭載されるエンジンは、車名のとおり排気量2.7リッターの空冷水平対向6気筒である。最高出力は210psと当時としては非常に高性能なものだった。

 ちなみにこれらのいわゆる「ナナサンカレラ」は1580台が生産されているが、このモデルは2007年から2008年にかけて18万ポンド(邦貨換算約2500万円)をかけてレストアがおこなわれている。

 これだけのコンディションだけに落札価格には期待が高まったが、結局落札価格は42万5000ポンド(邦貨換算約5980万円)だった。ナナサンカレラの相場も、昔ほどは高くはなくなったとうことか。

地味RSと派手RS、どっちが人気か?

 次に時代を20年ほど飛び越えて、964型「911」で設定されたカレラRSはどうか。走行距離は5万3114kmと、このタイプのモデルにしては平均的といったところ。デビューは1992年である。

●1991 ポルシェ911(964)カレラRS

 軽量化を施し、エンジンパワーを増大するというコンセプトは、そのままナナサンカレラのRSに共通している。こうした視点でこの964型911のカレラ2をベースしたカレラRSを見ていくと、ポルシェの仕事がいかに徹底したものであるのかがよく分かる。

 ボンネットはアルミニウム製に変更され、ホイールはマグネシウム製、同時にサイドやリアウインドウのガラスは薄型の軽量なものになった。

 キャビンに視線を移すと、本来あるはずのリアシートは取り外され、パワーフロントシートは軽量なレカロ製レーシングバケットシートに、またパワーウインドウやパワーステアリング、エアコンも廃止されていることが分かる。

 こうしたダイエット策でポルシェは、175kgもの軽量化を実現。運動性能の向上に大いに貢献したのである。

 また、エンジンではダブルマスフライホイールからソリッドな軽量フライホイールに換装され、ECUのセッティング変更によって、カレラ2に対して10psアップの260psを発揮。

 オークション前にエンジンのリフレッシュを受け、オイルやオイルフィルター、またフューエルタンクの排水やバッテリー交換などをおこなったという出品車に対して、シルバーストーン・オークションズは、予想落札価格を14万−16万ポンド(邦貨換算約2000−2600万円)としていた。

 結果は14万9500ポンド(邦貨換算約2100万円)という数字に落ち着いている。

●1995 ポルシェ911(993)RS

 最後の空冷モデルとなった1995年式の993型「911RS」は、走行距離も約2万5787kmと、まさに乗り頃を迎えた一台である。

 部品の80%は新設計され、新しい合金サブフレームが再設計されたマルチリンクリアサスペンションが、新次元の乗り心地と安定性をもたらした。当時のポルシェは、オフスロットルした時の急激なオーバーステアを低減させたと、フルモデルチェンジともいえる993型911の進化に胸を張ったが、確かにその走りは古くからのカスタマーも、新しくポルシェの世界に入ってきたニューフェイスをも感動させる素晴らしさだった。

 911RSに搭載されたエンジンは、300psの最高出力を誇る3.8リッター水平対向6気筒であった。

 オークション出品車は、新車でデリバリーされてから、イギリスのメクスバラ伯爵やバンフォード卿のプライベート・コレクションとしても使用されてきた経歴を持つ、由緒正しき1台である。

 27万ポンド−32万ポンド(邦貨換算約3800万円−4500万円)の予想落札価格に対して、結果はなんと42万5000ポンド(邦貨換算約6000万円)。やはりクルマのコンディションと同様に、個体の持つヒストリーはオークションでは重要な要素になるようだ。

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