レジ袋の有料化「汚染克服」の一歩となるか 海洋学者が出した答えとは マイバッグ定着 エコは疑問

レジ袋の有料化「汚染克服」の一歩となるか 海洋学者が出した答えとは

 プラスチック製のレジ袋が原則有料となった。プラスチックごみが海に流れ出し、海洋汚染につながるのを防ぐ目的だ。買い物でレジ袋を利用する場合、コンビニ店では3円前後が求められる。一方で、レジ袋は日本で発生するプラごみ量の数%に過ぎないとの指摘もある。実際に海に出て、プラごみの実態を調査してきた専門家は、レジ袋の有料化をどう見ているのだろうか。東京海洋大学准教授の内田圭一さんに解説してもらった。

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 ▽プラごみ、南極にも

 7月1日からレジ袋の有料化が始まりました。「どうして」と感じている方も多いと思います。その理由の一つは、海洋におけるプラスチックごみ汚染の実態が進み、その汚染が私たちの日常生活に差し迫っていることが明らかになり始めたからです。

 私たちが使ったプラスチック製品のうち、適切に処理されなかった一部が海洋に流出しています。そして流出したプラスチックは、紫外線や波風によって劣化して微細化していきます。この微細化したプラスチックのうち5ミリ以下の物がマイクロプラスチック(以下MP)と呼ばれるもので、ぱっと見たところ、その存在を確認するのは困難です。

 最近の研究から、日本の周辺海域でのMPの濃度は世界的に見ても一桁高い(1立方メートル当たり3~4粒)ことや、MPは南極の海にまで広く分布していることなどが明らかになっています。

 実はこのMPが世界で最初に発見されたのは1970年代になります。決して新しい問題ではないのです。その頃からすでに海洋中に蓄積が始まっていたのですが、今のように注目されることはありませんでした。しかしMPが天日干しの塩や一部の魚介類の胃内容物から見つかるようになったことで、いよいよわれわれの身近な問題として注目され、危機感が高まってきたのです。

 ▽レジ袋有料化は有効か

 それでは、レジ袋の有料化は、対策としては十分と言えるのでしょうか。スーパーなどで目にする生鮮食品の個別包装を見ていると、レジ袋だけが悪玉にされ、なんだかかわいそうという気持ちにさえなってきます。

 有料化から約3週間たった海の日の7月23日、私は地元の海辺を歩いてみました。わが家は、この海で釣りをしたり泳いだり海のレジャーを楽しんでいます。その際、海面を漂ったり海岸に漂着したりするレジ袋やペットボトル、発泡スチロール片、食品容器の空き箱などをよく見かけていました。

 7月1日以降どうなったのかー。海辺の遊歩道から護岸の石積みの間をのぞきながら150メートルほど歩いてみると、レジ袋は意外と見つかりませんでした。

 代わりにペットボトルがこれでもかと言うぐらい目につきました。数えみると54本もありました。レジ袋はと言うと、たったの3袋。以前はもっとあったような気がしたのですが、このことから有料化の効果が表れたとは結論づけられません。効果を考えるためには、少なくとも有料化前後のデータを比較する必要があるからです。

 私の所属する東京海洋大学では、2014年から環境省の委託事業で日本周辺の沖合域における漂流ごみの分布調査を行っています。特に、15年からはレジ袋と分かるものについては、レジ袋として記録し、その分布密度を調べてきました。先ほど引き合いに出したペットボトルとレジ袋を比較すると、日本周辺の沖合域では年によって値は異なるものの、これまでおおむねレジ袋の密度の方が高い傾向にありました。

 レジ袋有料化後、この傾向に変化が見られるのかは、大変興味深いところです。取り組みの効果を検証するために、今後も継続的にモニタリングを続けていかなければなりません。(困ったことに、新型コロナウイルスの影響で、今年はまだ海上での調査ができていません)

 レジ袋はその利便性から、無くても済むが、あって当たり前の日常に不可欠な存在です。ただ、日本におけるプラごみのうち、レジ袋が占める割合は2%程度と言われており、ごくわずかな量です(環境省資料より)。

 環境省は、レジ袋有料化の目的を「使い捨てプラスチックに頼った国民のライフスタイル変革を促していくこと」と説明しています。つまり、私たちの生活習慣を変える意識付けとして、レジ袋の削減から始めることになったと捉えるべきなのかもしれません。

 レジ袋の有料化は、きっかけの一つに過ぎないのです。スーパーで個別に包装されているもののうち、包装しなくて済むものについては包装せずに販売したり、紙製品に置き換えられるものは置き換えたり、また再利用しやすくする努力も大事だと思います。ペットボトルに頼らず、マイボトルをなるべく使うといった意識も必要でしょう。

 ▽不自由と引き換えに

 新たな方法が提案されることで、私たちの生活が多少の不便を強いられるかもしれません。しかし、限られた資源や環境を維持するために、それを受け入れながら生活していくことも重要です。

 既に多くの企業が知恵を絞って課題解決に向けて取り組んでいると聞きます。インドネシアから海洋プラスチックごみの研究者が日本に来た時、ペットボトルのラベルが簡単にはがせるようにミシン目が入っていることに「リサイクルを促す素晴らし方法だ」と感動していました。

 昨年あたりからは、飲料品を提供する大手企業が相次いでプラスチックストローの廃止を発表しました。

 個人的には、レジ袋よりも小さいストローをやめることでどれほどの効果があるのか、企業が環境に配慮しているとアピールしたいだけではないのかと邪推していました。

 ところが、昨年、インドネシアの海岸で漂着ごみを調査した際、その結果に驚きました。なんとストローが1平方メートルあたり30本と圧倒的に多かったのです。この結果を見た時、ストローは地域によっては非常に身近な存在で、使い捨ての一つの象徴になっているのだと感じたのです。帰りのジャカルタの空港のハンバーガー店では、飲み物のストローとプラのふたがありませんでした。

 使い捨てのプラスチック量を削減しようという機運は世界的に高まっているのです。

 レジ袋有料化の取り組みは海洋汚染克服の第一歩となるか-。私の答えはもちろん「Yes」です。感じ方はさまざまだと思いますが、プラスチックについて何か考えなければならない状況にあることは、皆さんが認識したと思います。

 日本では、レジ袋がその象徴となりましたが、これを機会に利用しているプラスチックが本当に必要か、なぜここにプラスチックが使われているのか、再利用するにはどうすべきか、自然界に流出するとどうなるのかについて考えなくてはなりません。

 レジ袋有料化による不自由と引き換えに、この不自由が持続可能な社会の未来につながるよう行動に移さなくてはならないと思っています。

マイバッグ定着 エコは疑問 レジ袋有料化1カ月

 レジ袋が有料化されて1カ月、市民の生活や意識にどんな変化があっただろうか。無料通信アプリLINE(ライン)で読者とつながる「岐阜新聞 あなた発!トクダネ取材班」がアンケートを実施した。「買い物袋(マイバッグ)を持ち歩くようになった」とエコを意識した生活習慣の変化を挙げる人が多い一方で、新型コロナウイルスの感染拡大で同じマイバッグを何度も使うことへの抵抗感や、袋を使わず手で持ち帰ると万引に間違われそうとの懸念、「有料化が本当にエコに結び付くのか」との疑問の声なども寄せられた。

◆衝動買い減った

 アンケートは7月29、30日に実施し、約150件の意見が寄せられた。「かばんや車の中にマイバッグを常備するようになった」「マイバッグ持った? がわが家の合言葉になった」「マイバッグの容量を考えて買い物をするようになり、余計な買い物が減った」など、暮らしの変化を感じさせるエピソードが多く寄せられた。

◆袋ないと「万引みたい」

 目的地がスーパーの場合は、バッグを持参する習慣が身に付いた一方、思い立った買い物の際に不便さに気付く人も多いようだ。岐阜市の50代パート女性が「コンビニはふらりと立ち寄るのでマイバッグを準備していないことが多く、コンビニの利用頻度が減った」と答えるなど、衝動買いがなくなったとの意見も多かった。

 新たな"課題"も浮かび上がった。中津川市の50代パート女性は「コロナ流行の中で何回も使う袋は不衛生。2回に1回は洗っている」と懸念を示し、各務原市の30代主婦は「衣料品店でマイバッグを忘れて、手で持って帰る姿が万引みたいに見えた」と指摘した。

◆ごみ袋再利用できず購入...エコ?

 特に多かったのは、レジ袋をごみ袋として再利用しているとの声。「結局ホームセンターや100円ショップでレジ袋と同じものを購入している。お金を出して買うようになっただけで、プラスチック削減にはなっていないのでは」などと、環境への効果を疑問視する声も挙がった。また、コンビニの利用者からは「外出時に買った物やおしぼりのごみをレジ袋に入れて捨てていたが(マイバッグだと)それができない」という意見や、その影響か「ポイ捨てが増えた気がする」との声も複数あった。

 一方、店舗側は客の意識の高まりを実感する。100円ショップを全国展開するセリア(大垣市)では、7月のレジ袋購入率は10%以下。岐阜市福光南町のドラッグストア「ドラッグユタカ岐阜福光南店」ではレジ袋購入率は7月下旬までで14%ほどで、藤吉誠店長(43)は「初旬は購入者が多かったが、徐々に袋を持参する人が増え(有料化が)認知されてきたと感じる」と語った。岐阜市今小町の弁当店も「マイバッグを持参する常連もいる。エコ意識は浸透してきているのでは」と話した。

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 岐阜新聞は、暮らしの疑問や地域の困り事から行政・企業の不正告発まで、情報提供や要望に応え、調査報道で課題解決を目指す「あなた発!トクダネ取材班」を創設しました。あなたの知りたいこと、困っていることについて、ご要望や情報をお寄せください。LINEの友だち登録で取材班と直接やりとりもできます。

にわかに脚光浴びる風呂敷 レジ袋有料化の代用品…7月前半の売り上げが前年同期4倍の店舗も

7月から有料化されたレジ袋の代用品としてエコバッグの需要が高まる中で、にわかに風呂敷が“脚光”を浴びている。かさばらず、買う物に応じて包む大きさを変えられることから、岡山市内の雑貨店などは特設コーナーを設けたり、バッグとして使える結び方を動画で紹介したりしている。

イオンモール岡山にある和雑貨販売・ORIBE(同市北区下石井)は6月上旬、専用コーナーを設けた。花柄や水玉模様などさまざまな種類をそろえ、結び方を説明した本も置いている。7月前半の売り上げは前年同期の約4倍に増加。「30~40代の女性を中心に、バッグとして使う結び方を尋ねられることが多い」(同店)とし、求めに応じて実演指導もしている。

JR岡山駅地下の自然派化粧品店・LUSH岡山一番街店は有料化に合わせ、手提げ用バッグにアレンジする方法の動画(約1分)を写真共有アプリ・インスタグラムに投稿した。以前から環境に配慮し、贈り物の包み用に販売しているが「エコバッグとして使えることがあまり知られておらず、結び方が分からない人向けに簡単な方法を紹介した」と同店。今後、動画のバリエーションを増やしていくという。

レジ袋削減のため風呂敷の活用を呼び掛ける京都市の市民団体「ふろしき研究会」の森田知都子代表(73)は「バッグ以外にもたくさんの用途がある。これを機に普段の暮らしに取り入れてみては」と話している。

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