ASUS JAPAN最新の2画面搭載ノートPCは「真に使えるPC」になったのか?

最新の2画面搭載ノートPCは「真に使えるPC」になったのか?

 ASUS JAPANから発売された「ZenBook Duo UX481FL」は、14型の画面に加えて、キーボード手前にも12.61型の画面を搭載した2画面ノートPCだ。

 2画面ノートPCというと、同社が2019年に発売した「ZenBook Pro Duo UX581GV」が記憶に新しいが、同製品が2画面という要素以外にも豪華な仕様であったため、50万円前後と非常に高価な製品でもあった。しかしこのZenBook Duo UX481FLは、画面サイズを一回り小さくするとともに、一般レベルでは十分に高性能といえる装備を維持しつつ、より多くの人が購入できる価格帯へと落とし込んでいる。

 新モデルでは、基本スペックの異なる21万9800円(UX481FL-HJ122T)と18万2800円(UX481FL-HJ118T、いずれも税込み)の上下2モデルで展開するが、今回は上位モデルベースを評価機として入手できたので、使い勝手や性能を見ていこう。

●重厚な高級感漂うコンパクトボディー

 ZenBookのトレードマークであるスピン加工を天板部分に施したボディーは、「セレスティアルブルー(Celestial Blue)」と呼ばれる深みのあるメタリックの青緑のカラーも印象的で、とても高級感がある。

 画面外側の枠が狭いスリムベゼルデザインのため、14型の画面を搭載しながらも横幅は約323mmとかなりコンパクトだが、やはりもう一画面余分に搭載していることから、厚さは約20.4mm、重量は約1.66kgとそれなりにあり、手にとってみるとズシッとした重厚感がある。

 ボディーの剛性感も非常に高く、全体に身の詰まった石のようにも感じられる。頑丈さの裏付けとして、アメリカ国防総省が米軍の備品調達のために制定した「MIL-STD 810G」に含まれる落下、耐震、高温、低音、高度のテストをクリアしているという。

 具体的なサイズは約323(幅)×223(奥行き)×20.4(高さ)mmで、重量は約1.66kgだ(いずれも公称値)。実測では1648gと公称値より少し軽かった。バッテリー容量は70Wh、バッテリー駆動時間は約13.9時間(JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver.2.0、いずれも公称値)だ。

●幅広い用途に対応できる基本スペック

 基本システムには、第10世代Coreプロセッサ(開発コード名:Comet Lake)を採用している。

 上位モデルの評価機は、CPUが4コア8スレッドのCore i7-10510U、メモリが16GB、ストレージが1TB SSD(PCIe 3.0×2/NVMe)、グラフィックス機能にはNVIDIAのGeForce MX250(グラフィックスメモリ2GB)という内容だ。

 初代の2画面ノートPC(ZenBook Pro Duo UX581GV)よりもグレードダウンして低コスト化を図っているとはいえ、それでもかなりのハイスペック仕様で、ビジネスシーンはもちろん、エンターテイメント、クリエイティブまで、幅広い用途に使える。

 続いて、本製品ならではの特徴を見ていこう。

●最新Wi-Fi 6対応でインタフェースも実用十分

 通信機能はWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.0を標準で装備する一方、有線LANポートは省かれている。また、本体装備のインタフェースは、USB 3.2 Gen2 Type-C、USB 3.2 Gen2 Type-A、USB 3.2 Gen 1 Type-Aポートが各1基ずつ、HDMI出力、microSDメモリカードスロットなどがある。

 USB 3.2 Gen2 Type-Cポートは、USBでのデータ転送のみで、ディスプレイ出力やPower Deliveryなどには非対応だ。

 ディスプレイの上には92万画素のWebカメラ、Windows Hello対応IRカメラ、アレイマイクを内蔵する。サウンドシステムはharman/kardonの音響技術を導入しており、テレワークもエンターテイメントも快適に楽しめる。

 有線LANポートが省かれている点、SDメモリーカードがmicroSDである点に注意が必要だが、コンシューマー向けPCとしては、十分な内容といえるだろう。

●14型と12.61型、2つの画面を搭載

 メインの14型は1920×1080ピクセル、サブの12.61型(ScreenPad+)は1920×515ピクセルの解像度に対応する。いずれもノングレア仕上げで、輝度はそれぞれ300カンデラ、250カンデラという構成だ。いずれもタッチパネルが採用されており、画面に手を触れても操作できる。

 続いて、2画面の活用法を見ていこう。

●2つの画面をどう使うか

 2つの画面は、通常のデュアルディスプレイとして別々の内容を表示できる他、つなげた1つの拡張画面として利用することも可能だ。また、ScreenPad+は最大3分割して3つウインドウを固定表示しておくこともできる。

 これらの切り替えは、ウインドウをドラックすると現れるガイドアイコンですぐに行えるようになっており、使い勝手は良好だ(アイコンのデザインは改良の余地があるが)。

 拡張表示で2画面を広い1画面として使うと、縦の情報量が515ピクセル増えるので、縦に長い文書やWebページなどの一覧性はかなり上がる。この記事に使っているスクリーンショットもいくつかこの状態で撮っている。

 しかし両ディスプレイの視認性が結構違うために一体感はいまひとつだ。あくまでもメインとサブという関係で、サブディスプレイは補助的な役割をさせることになるだろう。

 クリエイティブアプリのツールボックスやレイヤー構造といった、脇に置いておくものを逃してメインのスペースを稼いだり、複数のアプリで作業する際に、作業していないアプリを待機させておくような感覚で表示させておいたりといった使い方が考えられる。

 また、テレワークで注目を集めているZoomやTeamsといったビデオ会議の画面をメインで表示させておいて、サブ画面でメモをとるのも十分に実用的だ。

 Screen Pad+のランチャーから起動できる独自のミニアプリも用意されており、テンキー、ショートカット、手書きメモ、Spotifyプレイヤーなどが標準で登録されている。用途に合えば便利に使えるだろう。

 本格的な描写ができるペンに対応し、キーボードを一時的にオフにできるような機能(手をおいても誤動作しない)を備え、液晶ペンタブレットのように使えるとさらによいのではないかと思うが、従来のZenBook Pro Duoに付属していたペンは省かれている。

●キーボードはやや小さめだがしっかりした作り

 キーボードは、バックライト付きでアイソレーションタイプの6列仕様となっている。実測のキーピッチは約17×17mmだ。サブ画面を配置した関係もあって、タッチパッドをキーボード右側に配置しているのでキーの間隔はやや狭い。

 また、構造上パームレストが全くない。画面を開くとキーボードに角度が付くエルゴリフトヒンジを採用してはいるが、それでも慣れるまでは違和感が残るだろう。逆に、さらに角度を付けたい人のために、簡易スタンドが標準で付属する。

 キーストロークの値は公開されていないが、かなり深めでしっかりした押下感がある。キートップに微妙なへこみがあるため指を起きやすく、スイッチの感触も反発が強すぎず、タイピングの感触自体はよい。長い時間キーボードを入力するのに向いているとはいい難いが、文章を打つ時間がそう長くないならば、マイナスではないだろう。

 最後にパフォーマンスをチェックする。

●極めて良好なパフォーマンス、バッテリー駆動時間も優秀

 ではベンチマークテストの結果を掲載しよう。改めて評価機の基本スペックを記載すると、Core i7-10510U、メモリ16GB、ストレージが1TB SSD(Intel 660p)、グラフィックス機能がNVIDIA GeForce MX250、OSがWindows 10 Home 64bit(1909)という内容だ。

 CPUパワーがダイレクトに反映される「CINEBENCH R15」のスコアは837と非常によい。6コア12スレッドモデルには及ばないものの、4コア8スレッドのノートPC向けCPUのスコアとしては最高クラスのスコアだ。

 AVX2に対応し、より高い負荷が長い時間かかる「CINEBENCH R20」でのスコアも同様だ。シングルスレッド性能を計測するCPU(シングルコア)も、デスクトップPC向けのCore i7-7700K並みのスコアが出ている。

 HWiNFOで確認したTurbo Boostのリミット値(PL1)が45Wという点である程度予想できたが、冷却性能もそれに追いついており、Core i7-10510Uのポテンシャルは限界まで引き出していると考えられる。

 「PCMark10」のスコアもやはり同クラスのCPUを搭載している製品の中では、明らかに良いスコアが出ている。

 バッテリー駆動時間を計測する「PCMark 10/Modern Office Battery Life」では、11時間30分という長時間の駆動が可能だった。バッテリー駆動時間は2画面ノートPCの1つの課題といえるが、本製品は、技術の進歩や省電力設計、そして70Whという大きなバッテリーの内蔵でその課題を見事にクリアしている。

 外部GPUとしてGeForce MX250を搭載しているため、3D描画性能もそこそこよい。3DMarkのスコアはCPU内蔵GPUの2.5倍ほど、「FINAL FANTASY XIV:漆黒のヴィランズベンチマーク」(フルHD)では、CPU内蔵GPUの3倍程度のスコアが出ている。最新のグラフィックス技術を使ったゲームをバリバリするには足りないが、「ファイナルファンタジーXIV」程度のゲームであれば快適にプレイできる水準にはある。

●初めての「本当に使える2画面ノート」

 テレワークやオンライン学習などで、ビデオ会議や配信を利用されることが増え、外付け液晶ディスプレイの需要が増している。外付けでデュアルディスプレイ環境を体験しているユーザーならば「1台で2画面使える」本製品の価値もより実感できることだろう。自宅にいて仕事をしなければならないときに、別途画面を持ち運ばずに2画面を使えるメリットは大きい。

 そして、本製品はこれまでに各社から出ていた2画面製品で課題だった「高価すぎる」「バッテリー駆動時間が短い」「画面が小さく実用的ではない」「画面の移動時や入れ替えの使い勝手が悪い」といったような課題を、技術の進歩や同社の開発力によってかなりの高いレベルで解決している。

 本製品のScreenPad+は横長の画面であるから、感覚的には実質1.5画面ともいえるため、全ての2画面需要を満たせるわけではないものの、メインとサブ、はっきりと役割を分けた使い方ならばぴったりとフィットするだろう。

 モバイルというにはやや厚みがあってやや重いことや、パームレストがないことなど注意点はあるものの、2画面ノートPCとしての完成度はかなり高い。真に「使ってみたい」と思わせる仕上がりになっているといえる。

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