PS5の「二兎を追う」戦略にライバル・任天堂の“教え”? 気になる新型コロナの影響も

PS5の「二兎を追う」戦略にライバル・任天堂の“教え”? 気になる新型コロナの影響も

 今年の「年末商戦期」に発売予定の新型ゲーム機「プレイステーション(PS)5」で、8日に新発表がありました。今度はコントローラーですね。これまでの発表をひもとくと、PS5の狙いは、PS4のユーザーを囲い込む手堅さと、未知の面白さを追求する「二兎を追う」戦略にあるようです。

◇PS5への愛着示す反応

 発表後の所感ですが、ゲーム機本体のデザインをまだ伏せるのか!でした(笑い)。さてPS5のコントローラーの特徴ですが、既に発表済みである通り、多彩な触感を新端末で再現し、ゲームの没入感を高めるものですから、今回もそれに沿ったものでした。曲線を強調した、未来的なデザインはさすがですよね。「数百もの試作を重ねてきました」「人間工学に基づいた」と言われると、開発の内側をのぞき見た気になりますね。ただ意地悪なことを言えば、技術の進歩から言えば普通ですし、新商品を出すのだから当然のことですね。

 個人的には、ユーザーのゲームプレーを元にコンテンツを作成して共有する「Create」が気になるところですが、詳細は明かされませんでした。全体的に言えば、PS4のコントローラーをベースに、正統派路線でパワーアップさせたという印象です。もちろん実機を触るまでは何とも言えないところですが、今回もスキのない、うまい発表といえます。

 そして面白いのが、新型コントローラーの発表を受けてのユーザーの反応です。

 PS5のコントローラーのデザインが、「新世紀エヴァンゲリオン」の人気キャラクター・綾波レイや、「となりのトトロ」のトトロなどを思い出させるというのは、笑ってしまいました。ファンが勝手にコラージュを作って盛り上がるところが、PS5への愛着、期待の表れと言えます。

 未発売商品のプロモーションのポイントは、認知度と期待感をいかに高めるかです。エンタメ商材で注目を集めるゲーム機はそこをクリアしやすいとはいえ、数万円はする(であろう)高額商品でありながら、些細な情報でもファンが騒ぐのは、他業種の宣伝担当から見るとうらやましい限りでしょう。

◇PS5の戦略に見える任天堂の“教え”

 そして、ここまでのPS5の発表を見て思うことがあります。それは「PS4の従来路線の強化」という手堅い戦術と、未知の遊びを追求する「新機軸」の戦略を両輪にした「二兎を追う」戦略を取ろうとしていることでしょうか。

 互換性とロードスピードの向上、有料ネットワークサービスのPSプラスの継続により、出荷1億台を突破したPS4のユーザーを囲い込み、まずはビジネスとしての最低限の成功を担保します。その上で、さらなるブレークを期待したいVR、触感端末を用いるなどした未知の面白さを体現するゲーム作りを狙っているのではないでしょうか。

 「二兎を追う」というと、「一兎をも得ず(得るものがない)」となるので「縁起が悪い」と怒られそうですが、この方法であれば「一兎」は確実に抑え込めそうです。

 ただPS5の発表方法を見ていると、技術を誇示してきた「ソニーらしさ」は、やはり薄れているように感じます。ロードスピードや触感を強化した新型コントローラーは、見た目の派手さは正直ありません。むしろ、ライバル・任天堂が打ち出してきたような、単純なゲーム機の性能に頼らないアイデア勝負の“教え”に見えます。むしろ、マイクロソフトの新型ゲーム機「Xbox Series X」のほうが「ソニーらしい」と言えます。さらに言えば、アイデア勝負をしながらも、それなりにマシンパワーを追求するのも「二兎を追う」戦略に見えます。

◇新型コロナの影響は

 最後に一つ触れておくべきことがあります。新型コロナウイルスの感染拡大が、PS5の発売日に影響を及ぼさないかです。

 記事の見出しは「受けない」と断定になっていますが、記事の本文では「感染拡大の影響を受けないはずだ」と推量になっています。短期的には「受けないはず」といっても、否定できる証拠はありませんが、新型コロナの拡大がすぐに収まる気配はありません。そしてPS5の部品調達、組み立てについて、常識で考えれば「影響する」と考えるのが妥当です。

 「PS5は新型コロナの影響を受けない」と仮定しても、同機を予定通りに発売できる雰囲気になるかは、また別問題です。外出自粛という世界的な流れがあるため、インドアの趣味であるPS5が売れる風向きなのはその通りですが、新型コロナがこのままでは、発売後の生産が計画通りにいくはずもありません。

 そして、今はSNS全盛の時代です。PS5発売のニュースを見て、ゲームに批判的な人が「人々が苦しむ中、いかがなものか」などとつぶやき、同調する人が一定数出ると、ややこしいことになるかもしれません。もちろん、そのような声に耳を傾ける必要がないのですが、ゲームを敵視する人は相応にいて、根拠があいまいな依存症を理由にしてゲーム規制条例を施行するような時代です。ビジネスは、イメージも大切なだけに、このかじ取りは難しいところです。

 もちろん、このような心配が杞憂に終わり、PS5が予定通りに出ることを願っております。ですが、目に見えない“敵”がいるのではないかと気になってしまうのです。

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