「コロナ鬱」をどう防ぐ?医師に聞く緊急事態宣言環境の過ごし方 海外在住者がロックダウン前にしたことは

「コロナ鬱」をどう防ぐ?医師に聞く緊急事態宣言環境の過ごし方 海外在住者がロックダウン前にしたことは

シンガポール、1ヵ月の「サーキットブレーカー」へ

日本でも緊急事態宣言がでる可能性が高まっていると報道されています。

4月3日金曜日、シンガポールでは、首相が16時から会見をするという内容が政府のSNSなどで発表されました。何が発表されるか?と一時騒然とし、政府の発信には「パニックにならないで」と書いてあったものの各スーパーにはロックダウンを警戒した長蛇の列が。我が家も16時からは家族全員でテレビを見つめました。

発表されたのは、新型コロナウイルスの感染拡大のペースを減速させるための1ヵ月の「サーキットブレーカー」。エッセンシャル(医療関係や食品関係など必要不可欠な領域)という表現が何度も使われ、そういった仕事を除き、店舗・施設等は閉鎖し、在宅勤務にすること。同居家族以外は会うことも避け、生活必需品の調達や体を動かすために外に出る以外はできるだけ自宅で過ごし、他者との接触を避けるというようにお達しがでました。

都市封鎖よりソフトなもので、日本で緊急事態宣言が出るとすれば日本ではさらに強制力が弱いものになると考えられるものの、外出自粛や使用施設の制限は似たような内容になる可能性があります。

学校・幼稚園等は必要不可欠な仕事をする親への配慮込み

シンガポールでは、同時に、4月8日以降、これまで休校を何とか避けてきた公立学校は全面オンライン授業に切り替え、そして就学前の子供たちが通うプリスクールや学童は全て閉鎖することが発表されました。子どもを介した感染は拡大していないこと、休校・休園は国民生活への影響が大きいことから、できるだけ回避したかったのでしょうが、国全体の方針を踏まえての決定とのこと。

ただし、唐突だった日本の一斉休校とは異なり、配慮が行き届いているなと感じたのは、まずローカル学校はちょうど週1回オンライン授業を始めて発生する問題などを確認した上での発動であったこと。そして、保育園等でエッセンシャル領域で親が働いていて、他に面倒を見る人がいないケースでは引き続き子どもを預かることができるという施策とセットで発表された点です。

首相会見に続いて各関連分野の大臣が揃った会見で各政策についての詳細が説明され、Social and Family Development担当の大臣は保育園等の利用でとりわけ医療関係や日雇い・低賃金労働など家庭基盤が脆弱なケースを優先するということ、虐待や家庭内暴力などを抱える家庭の支援、食べ物に困る人へのサービスなどは継続することにも言及しました。

社会のシステムというのは一種のエコシステム(生態系)ですから、どこかをいじれば別の場所に副作用がでてくる。これらを全て結び付けて綻びが出ないように総合的に政策を打つことが必要ですが、各大臣が揃って記者会見をし、質問内容によりそれぞれに回答を振り合う姿には政府が一丸となって結論を出した様子が見え、外国人から見ても安心感がありました。

自粛の中で「コロナ鬱」をどう防ぐか

さて、1ヵ月の外出自粛ともいえる状況で、気を付けないといけないのが、自由を制限されることによるメンタルヘルスの悪化です。日本でも、休校による親子のストレスや自粛ムードによる停滞感が懸念されており、今後さらに緊急事態宣言が出れば、「コロナ鬱」とも言える状況が増えてくるかもしれません。

自粛期間をどう過ごしたらいいのか、救急科専門医、熱帯医学学士、公衆衛生修士で紛争地帯で医療活動に従事した経験もある目原久美医師(現在はシンガポールの日系クリニックで成人・小児の総合診療を担当)に話を聞きました。

「いつ終わるかわからないということ、自分でコントロールが効かないということがストレスのもとになります。ただ誰にも1ヵ月で状況がどう変わっていくかはわかりません。自粛などをして2週間後にようやく数字に出てくるかどうかになるので、少なくとも何を根拠に方針が決められているのかを知り、2週間自宅で過ごすことに集中しましょう。移動しようと思えばできるというシンガポールの環境は精神衛生は保ちやすい環境です」

政府の透明性の高い情報発信は人々の不安を払拭するうえでも大事だということが分かります。

シンガポールのサーキットブレーカー宣言に対しては、事実上のロックダウンではという声もありましたが、他の東南アジア諸国と比較するとタクシーや公共交通機関が動いているうちは実質的な移動の手段を絶たれていない点等で都市封鎖の一歩手前で踏みとどまっているとも言えます。日本も強制力のあるロックダウンという形にはならない見込みで、あまり不安になりすぎず落ち着いて状況を受け止めましょう。

外出自粛・在宅勤務では大人も時間割を

今後、日本で緊急事態宣言が出された場合や、人によって自宅隔離をしていないといけない場合に、自宅ではどのように過ごすのがよいでしょうか。

「急に仕事や学校などのルーティンワークがなくなって、自宅で朝からだらだら過ごしてしまうと、生活のリズムが乱れてかえって疲れてしまいます。COVID-19に限らず一般的なアドバイスとして、自宅にいても、何時から仕事をして、休み時間はここにする、運動も決まった時間に1日一回入れるようにするなどのタイムテーブルを作ることをおすすめします。あまりきっちりしてできなくてがっかりする必要はないですが、ある程度効率よくできそうなやり方を決めるといいですね」

子どもの過ごし方についても、時間割については子どもと一緒につくって、親が押し付けるようなことはしない。本人が納得する順番にし、運動や楽しい時間も多めに入れると良さそうです。

「子どもも、いろいろなことをキャンセルして、がっかりしていると思います。その失望感が積み重なってしまう前に、逐一説明をする、また、次こうしようねとか、実現不可能なものはやめたほうがいいですが気をそらす提案をするなど、失望感に向き合ってあげましょうということが言われています」

また情報収集をすることでかえって不安になるタイプの人は、信頼できる情報源に1日数回アクセスするのみにし、SNS等での発信を見すぎないことも重要とのこと。大人にも時間割があったほうがいいというのは通常の在宅勤務をする際にも参考になりそうです。

ロックダウン前にできること

日本も緊急事態宣言を出す準備が進められていると報道されていますが、私が主催している海外×キャリア×ママサロンというオンラインサロンで、事実上のロックダウンがされた国などにいる日本人の方々に話を聞いたところ、事態がより深刻になる前にしたこととして次のような経験談があげられました。

・医療体制が不安な地域からは脱出して帰国(フィリピン)

・事実上のロックダウンが発表されてから発動されるまでに、人との接触などはしないように気を付けながら一人でカフェに行った。しばらく自分時間なんて持てそうにないので(マレーシア)

・そろそろ警戒レベルが上がりそうだと思って洋服の買い物をするなどをして癒されにいった(シンガポール)

・レストランからのデリバリーが使えるうちは、家の備蓄を消費しないためにも、経済にお金を落とすためにも、デリバリーで食事を注文。一日3食家族の分まで料理しないといけないストレスもできるだけ軽減(ベトナム)

スーパーマーケットなどは開いているので、パニックになる必要はありません。ただ、シンガポールは、コンドミニアム内のプールやテニスコート、図書館なども閉鎖されました。

我が家の場合は、サーキットブレーカー発表の前から春休みが近く、その間あまり外出ができなそうだとは思っていたので、粘土や絵の具、ドミノ倒しができる木片のオモチャなどできるだけ手を動かして遊べる道具、本などを多めに購入していました。

前回記事でも触れましたが、オンライン教材に頼りすぎるとスクリーンタイムが長くなるため、ボードゲームなど古典的な遊びが意外とこれから見直されていくかもしれません。

大人も、これを機にいかに家の中で平和に快適に過ごせるかを考え直す契機にできるといいなと思います。職場での対応、子どもたちの過ごし方などしばらくは考えることが多いと思いますが、なんとか励まし合いながらこの状況を世界全体で乗り越えていきましょう。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏