コロナ騒動で散見「買い占めをあおるデマ」は罪になる? 弁護士に聞く

コロナ騒動で散見「買い占めをあおるデマ」は罪になる? 弁護士に聞く

 止まらない新型コロナウィルスの感染拡大。東京都の小池百合子都知事が外出自粛を呼びかけた週末、スーパーには人が殺到し、冷静さを失った行動が目立つようになった。人々がパニック状態に陥ると、そこから犯罪に発展する恐れだってある。

 メディア発言や、弁護士ドットコムで精力的に執筆する小沢一仁弁護士は「コロナパニック」に警鐘を鳴らす。

買い占めは罪にならないのか?

 薬局などではトイレットペーパーやマスクを買うために、開店前からの行列が連日続いている。今では「1人1つ」などとする店が多いが、当初は「買い占め」する人も多かった。そもそもこの「買い占め」は罪にならないのだろうか。

「買い占めについては、それ自体に、法的な規制はありません。しかし、例えばスーパーやドラックストアで、『お一人様1点、一家族1点』という店側の告知に反して大量に商品を購入しようとし、店員に制止されても譲らず、クレームを述べたり、レジに居座ったりすると、威力業務妨害罪が成立する可能性があると思います。法定刑は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です(刑法234条、233条)」(小沢弁護士、以下同)

 少し前、トイレットペーパーを巡って、客同士がつかみ合いの喧嘩になった海外の映像が報道された。当然、日本でもこういったリスクはある。

「喧嘩になって暴力をふるえば、暴行罪にあたる可能性があります。法定刑は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金又は拘留もしくは科料(かりょう)です(刑法208条)。仮に、暴行の結果相手が怪我をしたら、傷害罪が成立することになります。法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です(刑法204条)」。

 

 コロナストレスで、他人の行為に敏感になっている人も多いはず。誰しもがトラブルに巻き込まれかねないので、注意したいところだ。

品薄になる…というデマは罪にならない?

 3月の初めにトイレットペーパーが買い占めによって店頭から消えた。ことの発端は、鳥取の米子医療生協の職員が、「中国のトイレットペーパー工場が止まったらしい。次は、トイレットペーパーとティッシュペーパーが品薄になります。事前に購入しておいたほうが良いと思います」という根拠のないデマをツイートしたことだった。

 すぐに日本家庭紙工業会は「トイレットペーパーの98%は国内生産で、原材料も国産。在庫は十分ある」と否定したものの、買い占めが止まらずに、未だに入手困難が続いている。トイレットペーパー不足による騒動を招いたのは、デマ情報をネットに流した職員だと多くの人は考えているが「法的に処罰することは困難」と小沢弁護士が言う。

「デマにもいろいろな種類のものがあり、その内容が名誉毀損や業務妨害など、既存の法律の要件に該当する場合は処罰の対象とすることができます。しかし、デマを流す行為自体を罰する法律はないので、この件のように、特定の商品が品薄になるという抽象的で法律要件に該当しないようなデマの発信者を処罰することはできません。たとえそのデマによって社会が多大な迷惑を被ったとしても、です」

 では何を信じたらいいのか。たとえば、外出自粛要請が出たために、スーパーに客が殺到することで危険が伴うことを想定した政府が、国民に呼びかけるべきなのか。

「政府が国民に呼びかけることは大切だと思います。ただ、インターネット上では、政府に対する不信感等から、政府の発信をそのまま信じない人や、さらには政府の発信は嘘であるかのような情報を拡散する人も一定数存在するように感じます。

 そのため、買い溜め等の当事者であり、より国民の生活に身近な大手スーパー等がSNSで積極的に商品の入荷状況等について発信していくことも必要ではないかと思います。近時の買い溜め騒動では、大手スーパーが、入荷状況に問題がないとの情報をSNSで発信している様子も見かけました。今後も同様の騒動が起こる可能性は高いと思いますので、継続して欲しいと思います」

一次情報を確認する癖をつけるべき

 他方で、国民ひとりひとりが、自身が触れた情報を取捨選択することも、社会的な混乱を避けるためには重要なことだ。

「人の不安感や恐怖心を煽るような情報に触れた場合、これをそのまま信じるのではなく、一次情報を確認する癖をつけることが重要だと思います。インターネット上には、悪意でデマを流し、社会が混乱する様子を見て面白がるような考えの人も、残念ながら存在します。

 そのため、デマが流れることはある意味避けようのないことなので、そのデマから自分の身や、社会の秩序を守るため、流れてきた情報が本当に正しいのか、その情報を管理していると思われる機関等のホームページを確認するなどしてください。社会の混乱を招くような重大な事態が発生しているのであれば、通常ホームページ等で告知をしていると思います。仮に記載がない場合は、デマが真実ではないと判断すべきです」

 SNSが浸透する社会では、個人に対するデマが増え続け、被害をもたらされることも多い。コロナ感染による混乱の最中、SNSデマから自分を守るには、どうしたらいいか。次回も小沢弁護士に聴く。

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