コンビニ、コロナ影響下の「意外なヒット商品」 大手3社とも運営面では大きな影響はない

コンビニ、コロナ影響下の「意外なヒット商品」 大手3社とも運営面では大きな影響はない

 感染拡大が続く新型コロナウイルスの余波は、消費者に身近な存在のコンビニエンスストアにも広がっている。

 セブン-イレブン・ジャパンは3月8日、山梨県山梨市の店舗に勤める従業員が新型コロナウイルスに感染したことを発表した。セブン本部は勤務中のマスク着用や体温が37.5度を超えた場合に出勤停止するよう店舗に通達していたが、この従業員は発熱後もセブンでの勤務を続けていた。

 店舗オーナーは当該店舗のほかにも、山梨市内で別の店舗を運営しており、両店舗を一時休業している(休業期間は未定)。休業期間の売り上げはゼロとなる。休業期間中の補償については、「現在決まったものはない」(セブン広報)としている。

 感染者の発生を受け、セブン本部は3月8日に全国の加盟店に対して、検温や手洗い・消毒の実施などを徹底するよう改めて周知した。

売り上げの大きな増減は見られない

 新型コロナウイルスの影響はひたひたと押し寄せてはいるものの、現時点ではコンビニ業界の販売面には大きな増減が見られない。セブンの場合、1月の日販(既存店1日あたり売上高)は前年同期比1.5%増で、続く2月は同0.8%増だった。

 全体の傾向としては変化がないようだが、詳細を見ると、実は意外な「売れ筋」商品が生まれている。

 ローソンでは、2月24日から3月1日の1週間でトランプやUNO、折り紙、シャボン玉といった玩具の売り上げが前年同週と比べ35%も増えた。こうした玩具は通常、親戚が集まる正月などに売れやすくなる。

 今回はコロナウイルスの感染を避けるために外出を控える人が増えているうえに、3月2日から小中高校の休校が始まり子どもが家で過ごす時間が長くなり、玩具を買うファミリー層が増えているようだ。ローソン広報は「家でできることが限られる中で、子どもが飽きないように、親が玩具を買っている」と話す。

酒類や総菜の売り上げが伸びる

 セブン-イレブンでは2月24日から3月1日の期間、酒類の売上高が前年比30%増だった。安価で普段から販売量の多いチューハイの売れ行きがいっそう伸びた。同じ週にはポテトサラダや焼き魚など、プライベートブランド「セブンプレミアム」の総菜も前年比30%増となった。セブン広報は「外食を控える人が増えた結果、宅飲み需要が伸びて、酒類やつまみとなる商品が売れているのではないか」と分析する。

 小中高の休校が始まった3月2日以降は、新たなカテゴリーの商品が売れ始めている。その前の週までと比べて、スパゲティなど冷凍食品の売り上げがグンと伸びた。「子どもが自分で簡単に用意でき、買い置きもできるので、昼食用として売れているようだ」(セブン広報)。

 ファミマでも2月24日から3月1日の間、プライベートブランド「お母さん食堂」のハンバーグなど冷蔵総菜の売上高が前年と比べ10%増えている。同期間でカップ麺も前年比10%増加。「外出を控える中で『巣ごもり需要』が生まれ、保存の利く商品が伸びている」(ファミマ広報)。

 ただ、これらの意外な売れ筋は「日販に与えるインパクトはそれほど大きくないようだ」(ローソン広報)という。

 例えば、ローソンでは2月24日から3月1日の期間で玩具のほかにも、マスクや生理用品、トイレットペーパーといった衛生用品が前年比70%増、洗剤が同30%増となったものの、これらのカテゴリーはいずれも元々の売上高が小さい。ローソンの2019年度第3四半期(3~11月期)において、日用品・本・雑誌などの非食品セグメントが販売に占める割合は9%弱にとどまる。

 コンビニ各社は、店舗運営にも大きな影響が出ていないようだ。非正規雇用の従業員が多いため、「小中高校の子どもを持つ親が働きにくくなるのでは」という見方も周囲にはあった。

 しかし、セブンやファミマ、ローソンはいずれも、本部から加盟店に対して、店舗運営に関する特別な対応は行っていない。ローソン広報は「加盟店は個別事情にあわせて、特定の日に時短で営業することも可能だが、実際に時短営業を行っている店舗は現時点ではない」とする。

 実はコンビニでパートとして働く主婦には、小学校低学年など小さな子どもを持つ人が少ない。小さな子どもがいる場合、勤務シフトが頻繁に変わるコンビニではなく、勤務時間がある程度決まっている職場に行くケースが多いようだ。都内のあるセブン加盟店オーナーは、「私の店舗や知り合いのオーナーの店舗では、さしあたり(極端なパート不足などの)問題は起きていない」と話す。

本部では時差通勤やテレワークを実施

 コンビニの本部では、時差出勤や在宅勤務などの対応を行っている。セブンは2月27日、東京都・四ツ谷にある本社勤務の社員を対象に、時差出勤の仕組みを変更した。以前は出勤時刻が朝8時から朝10時までに限定していたが、新型コロナウイルスの影響を受けて、朝7時から朝11時まで出勤時刻を拡大。これまでは試験的にしか運用していなかった在宅勤務も、2月27日から正式な仕組みとして始動させた。

 ファミマでは全本部社員を対象に、2月27日より朝8時から朝10時の出勤を避けることを推奨。朝9時の通常の定時に出勤する社員が半分以下になるよう調整している。今回の新型コロナウイルスの拡大を受けて、テレワークも一部導入した。

 ローソンでは3月2日より、すべての本部社員がリモートワークを開始している。1カ所のオフィスに人が集中するのを避けるための措置で、持ち回りで出社することで、1日あたりの出社人数を減らしている。並行して、ウェブ会議も実施している。  

 中国産食材などの調達についても、年間など長期間の契約を行うことで調達先をすでに確保しており、在庫も一定程度確保しているという。

 コンビニ業界は、百貨店のように新型コロナウイルスの拡大によるインバウンド需要激減などの影響を受けることはない。ただ、全国5万店舗超を張り巡らすコンビニ店舗で、新型コロナウイルスに感染する従業員が今後増えても、何ら不思議ではない。動向に注視する必要がある。

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