新型コロナ“被害”はAIで食い止められるか 感染拡大と「地震よりひどい」デマへの処方箋とは

新型コロナ“被害”はAIで食い止められるか 感染拡大と「地震よりひどい」デマへの処方箋とは

 影響が広がる新型コロナウイルス問題。国を挙げての封じ込めに加え、企業のテレワーク化、イベントの相次ぐ中止など余波は至るところに及んでいる。マスクやトイレットペーパーの買い占め騒動など、感染症そのものと違う被害も既に浮上している。

 中でも問題になっているのが、「〇〇町でコロナウイルスが出た」「感染予防にはお湯を飲むと良い」といった、SNSにおける誤ったデマの拡散だ。Twitterなどでは出所や根拠不明の情報が深刻な問題を引き起こす。一方で、投稿のビッグデータからユーザーの行動や感情を解析することで、思いもよらない情報をあぶり出すことも可能になるという。

「ウイルスはアルコール消毒できない」「お湯飲めば予防に」……

 AI(人工知能)を活用した災害情報サービスを提供するSpectee(スペクティ、東京・千代田)では、新型コロナのデマ検証情報の分析に乗り出している。同社の村上建治郎社長は「北海道地震などの災害時より今回のデマ拡散の方が量も種類も膨大」と顔をしかめる。同社はAIを活用し、SNSのビッグデータ分析から新型コロナの感染状況を割り出すシステムも始めた。AIやビッグデータは、果たして未曽有の感染症の一次・二次被害拡大に立ち向かえるのか。

 Specteeは現在、各メディアなどが参画しているニュースのファクトチェックを行う特定非営利活動法人・FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)に参加している。新聞社やテレビ、ネットメディアといった協力機関と連携し、チェック対象となるSNSなどに流れるデマ情報について、大本のソースはどこからかなどを分析、彼らに提供する役割を担う。各メディアは実際の真偽について取材で検証し、デマ打消しのニュースを自社メディアやFIJのサイトに流す仕組みだ。

 村上社長によると、新型コロナ関連で最近SNSで出回ったデマの中でも悪質なのが「ウイルスはアルコール消毒できない」「高温に弱く、1日1杯お湯を飲めば予防になる」といったもの。加えてさらに根強く問題なのが「〇〇(県、町、あるいは特定施設)でコロナウイルスが出た」と断定するデマだ。

簡単なデマ拡散、打消し報道には膨大な手間

 「そもそも、『〇〇でウイルスが出た』という断定口調のつぶやきはウソの可能性が高い。(一般人に)ウイルスの検知はできず、検査で結果が出たのなら都道府県側に情報が(先に)行くもの」(村上社長)。一方で、災害時に出回る流言の中でも、こうしたデマの鎮圧は特に難しい、とも指摘する。

 村上社長によると、2018年の北海道地震などの際にも、「〇時間後に断水」などといった荒唐無稽なデマがSNSで拡散した。これらは行政やインフラ企業などの公式情報で比較的素早く打ち消される傾向にあった。しかし、現在各所で噴出している「〇〇で、新型コロナ発生」といったデマは、マスメディアが直接取材して、「ウソであること」を1つ1つ確認する必要がある。デマが安易に発生・拡散される一方で、正しい情報の確認ははるかに時間も手間もかかるからだ。

 「健康・医療関係はデマが出やすいテーマ。加えて今回のコロナ騒動では次から次へといろんなデマが流れ、全て打ち消すことが難しくなっている。地震であれば発生直後に混乱した状況では、みんなちょっとした情報に踊らされるものだが、時間がたつと冷静になる。しかし、新型コロナに関してはずっとホットな話題でもあり、私たちだけでデマを1個1個検証するのが難しくなっている。通常の地震時などのデマよりも、量もパターンも明らかに膨大だ」(村上さん)。

AIとSNSデータから新型コロナ拡散状況を分析

 SNSが感染症のデマ拡散の温床になっている一方で、村上社長らは、新型コロナのリアルな罹患状況を検知するための有力な情報源としてもみている。Specteeでは1月から行政サイドの依頼を受け、SNS上の呟きデータから新型コロナウイルスの感染がどのエリアで拡大している可能性があるか、AIを使って分析するサービスを開始した。

 具体的には、Twitter・Facebookの文字情報に複雑な条件で検索を掛け、AIで解析することで、新型コロナ関連と推測される「症状を訴える本人の呟き」「特定の病院に患者と思わしき人が詰めかけている」といった重要情報を抽出する。中国語にも対応している。

 検索の条件やキーワードは随時ブラッシュアップしているという。特に「メディアのコロナウイルス報道を見ての感想」や、前述の「〇〇でコロナウイルス発生」といったノイズや明らかなデマは、アルゴリズムで自動的に排除できるよう工夫を重ねている。

 本サービスは、公的にまだ把握されていない潜在的な「感染拡大の兆候」を検知して、行政側にいち早く知らせるのが目的だ。今のところ、特定の場所で感染拡大の未知の兆候が出たという結果は幸い無いという(2月下旬現在)。

 災害、そして感染症拡大といった社会不安時には、デマの発生装置にも、逆に被害防止のための重要情報の供給源にもなり得るSNS。AIやビッグデータ技術は今後、果たして新型コロナの“被害”にうまく立ち向かえるのか。

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