位置情報見せあう若者 大流行アプリ「Zenly」とは?

位置情報見せあう若者 大流行アプリ「Zenly」とは?

 LINEばかりで電話は嫌いだけど、大事な話は音声アプリ。時代はキャッシュレス払いなのに意外と現金主義。ブランドバッグより黒リュックが定番スタイル。これが今の若者の「知られざる流行」だそうです。明治大学商学部の藤田結子教授が、学生のフィールド調査に基づき、大人たちが知らない「若者の生態」を読み解きます。

 ◇大流行アプリ「Zenly」とは

 明治大学で社会学を教えている藤田結子です。「育児サバイバル」に続く新連載は、今、若者の間ではやっている現象を観察・調査し、お伝えしていきます。今回は、若者たちがスマホの地図アプリを使って、位置情報を友だちに公開し、ランチや授業の代返(だいへん)、さらに「謎の行動」をしている実態をお伝えします。

 私は明治大商学部・藤田結子研究室で、人々の行為を観察し、その行為の意味を解釈する参与観察法(注)のトレーニングをしています。そこでは次のお題を学生に出しています。

 「大人が知らない、メディアで取り上げられていない、でも若者の間でははやっている現象を探して、調査してきてください」

 すると、次々と不思議な現象が報告されてきます。その内容を「翻訳者」として私がお伝えしていきますが、あくまでも調査の主役は学生です。

 第1回は、若者たちがスマホの地図アプリで互いの位置情報をチェックしあっている実態についてお伝えします。

 ◇友人の位置情報をチェックしあう

 東京都内の大学に通う大学3年生の鈴木萌さん(仮名)は、最近Zenly(ゼンリー)という位置情報を共有するスマホの地図アプリを中高や大学の仲の良い友人と始めました。

 「この前、『友だちが今どの辺いるかな』ってふと気になったのでZenlyを開いてみたら、池袋にいることがわかって。『一緒に帰れるかも』と思ってLINEしたら、すぐ返信が来て。池袋西武にいたんで一緒に帰った」

 Zenlyを使うと、アプリで相互承認した友だちの現在地を地図上でリアルタイムで見ることができます。フランスのZenly社によって2015年に開発され、17年に米Snap社に買収されました。19年12月にはAppStoreのソーシャルネットワーキング部門のランキング(ダウンロード数とアプリの起動率)でLINEを超えて1位となっています。

 ◇ランチ、代返、乗り過ごし防止にも

 若者たちはアプリを開いて、たまたま近くに友だちがいれば、「一緒に帰ろう、食事しよう、飲みに行こう」などと誘いあいます。さらにある学生が「出席頼む時、大学にいる友だちを探して連絡する」というように、授業の代返にも利用しています。

 高橋明日香さん(仮名)の場合、友だちに自分がどこにいるかチェックしてもらうそうです。その驚きの理由はというと、

 「私めっちゃ電車で寝過ごしちゃうから、みんながZenlyで起こしてくれるの。今から帰るから最寄り駅着いたら起こしてーってお願いするとね、誰かしら電話かけてくれる(笑い)」 

 友だちとLINEで一日中やりとりをするだけでなく、どこにいるかまで常時把握しているのです。

 ◇お互いの「監視」は少し怖いけれど

 中高年の感覚からすれば、自分がどこにいるかを家族や知人に常に知らせて、互いにチェックし合うなんて、ゾッとするでしょう。しかし、利用する若者たちは自ら好んでそうしています。

 ただし、頻繁に地図アプリを開いて、友人の位置をチェックしている仲間に対しては、「怖い」という感覚もあるそうです。

 大学生の伊藤大輝(仮名)さんはこう言います。

 「アプリを見て『おまえ昨日、○○に行ってただろ。誰と行ってたの?』『あいつこの前、○○に行ってたけど女がいるんじゃね?』とか友人と話したりする。あんまりチェックしていると、『おまえ、きもい』ってなる」

 そして、恋人同士で使うことには「抵抗感がある」という意見が多く聞かれました。ある女子学生はこう語ります。

 「普通に怖くない? 彼氏と面白半分で交換してたんだけど。別にやましいことはないけど、『お互い監視されるのやじゃない?』ってなって消した(笑い)」 

 若者たちは「お互いに監視されている感覚はある」と異口同音に言います。「怖い」という感覚も持っています。にもかかわらず、なぜ友だち同士で位置情報を共有するのでしょうか。次回に続きます。

 今回の調査担当者:佐藤幸花、鈴木沙依良、蓮見千寛、若林拳心(明治大学商学部3年)

(注)参与観察法:「エスノグラフィー」とも呼ばれる調査法です。この調査法は、調査者が研究テーマに関わるフィールドに自ら入って、人々の生活や活動に参加し、観察を行う質的調査法です。そして、フィールドで見聞きしたり考えたりしたことを、フィールドノートに日々記録し、これをデータとして分析に用います。

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