2%台の衝撃!土曜に引っ越し「ドラえもん」&「しんちゃん」は視聴率戦争の敗者なのか

2%台の衝撃!土曜に引っ越し「ドラえもん」&「しんちゃん」は視聴率戦争の敗者なのか

 長年、日本の子供たちを楽しませてきた国民的アニメが大ピンチを迎えている。

 10月改編でそれぞれ放送日、時間が変更されたテレビ朝日系「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」が変更前の平均視聴率6%台後半から現在、「ドラえもん」が3~4%台、「しんちゃん」に至っては10月以降、8回のレギュラー放送中4回で2%台を記録する低空飛行を続けている。

 放送40周年を迎えた「ドラえもん」が金曜午後7時から土曜午後5時へ、1992年スタートの「クレヨンしんちゃん」は金曜午後7時半から土曜午後4時半へそれぞれ“お引っ越し”。土曜の夕方に新設された「アニメタイム」として放送されている。

 改編の狙いは各局がし烈な視聴率争いを展開中の金曜日のゴールデン帯(午後7時~10時)の改革だった。常勝・日本テレビの6年連続視聴率三冠王阻止を狙うテレ朝は、アニメ2作が陣取っていた金曜午後7時に長嶋一茂(53)、石原良純(57)、高嶋ちさ子(51)がMCを務める「ザワつく!金曜日」、午後8時にはマツコ・デラックス(46)と有吉弘行(45)の冠番組「マツコ&有吉 かりそめ天国」を深夜枠から移動。午後9時からは午後8時放送だった音楽番組「ミュージックステーション」を、それぞれセットした。

 そもそも、9月の改編発表会見の段階で、私の頭にはいくつかの疑問が浮かんでいた。長年、この2作品を親子で見続けてきたファンの視聴習慣は今回の移行にあたって、十分考慮されたのだろうか。そもそも家族で出かけることも多く、外出率が高い土曜夕方への移行に勝算はあるのか。「家族視聴」を狙うなら、金曜の夜の方が子供も、その親も在宅している確率はより高くないか―。

 実際、職場にもこの2作品を欠かさず見ている“パパやママ”がいるが、彼らの意見もこうだった。

 「アニメタイム? リアルタイムでの視聴はしないですね。土曜のその時間は出かけていることも多いから」

 「その時間はお昼寝タイムや習い事です」

 「どちらも大ファンですが、アマゾン・プライムで子供と好きな時間に見ています」―。

 そして、お引っ越し後の低迷。国民的アニメの視聴率2%台はにわかには信じがたいと思ったから、11月26日に開かれた亀山慶二社長(60)の定例会見で編成担当の西新取締役に聞いてみた。

 「金曜日に移行した『ザワつく!金曜日』が15日の放送回で12・9%を記録するなど好調な反面、『ドラえもん』『しんちゃん』が大きく数字を下げてしまっていますが?」―。

 メガネの奥の目をギラリと光らせた西氏は「長年親しんでいただいた夜の19時から土曜に移行させていただいたということで定着に一定の時間がかかるかなと考えております。その中でしっかりPRさせていただくと同時に朝の『グッド!モーニング』の天気予報や時報でキャラクターを出させていただいて、いろいろな側面で土曜日にアニメが定着できるよう考えて行きたいと思っています」と丁寧に答えてくれた。

 確かに視聴習慣の定着まで長い目で見てもいいのではとも思う。しかし、映画版も常に大ヒットする2作品の2%台は、やはり受け入れがたい。

 思い出したのは、2か月前の定例会見でのやり取り。その日、半年に1回の出席を果たした同局最大の実力者・早河洋会長・CEO(最高経営責任者、75)の私の質問への答えが脳裏をよぎった。

 2大アニメの土曜移行に疑問を感じていた私は、会見の直前に「『ドラえもん』&『しんちゃん』、大人の事情で金曜から土曜にお引っ越し…揺れる国民的アニメの未来」と題したコラムを報知webにアップしていた。

 この記事には数多くの読者からの率直なコメントが集まった。

 「人気アニメも商品に過ぎない。視聴率が不振ではしようがないのでは―」

 「金曜の夜に食事しながら子供と一緒に見るというこれまでの視聴習慣をどうしてくれるのか?」

 「『ドラえもん』や『しんちゃん』は視聴率に左右されるような存在ではないのでは? もっと国民的な存在では?」

 賛否渦巻く読者の熱い思いを自分が代表して聞こう―。そんな思いで早河会長に質問をぶつけた。

 「『ドラえもん』と『しんちゃん』の移行について、金曜夜という、これまでの視聴習慣は十分考慮されたのか? そもそも土曜夕方への移行で、この2番組の視聴率は上がるのか?」―。

 その時、早河会長は、まず「タイムテーブルの改革というのは日曜から月曜までの7曜日、それこそ、もぐらたたきのように悪いところがあれば直し、改善し、強化していくものです」と説明。その上で「テレビ朝日は正直、火曜と金曜がシングル(1ケタ視聴率)で―。日曜、月曜は改善していますが、金曜などの視聴率が大きく低下すると、週平均(視聴率)に影響してくる。特に金曜日、『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』は(平均視聴率)6~7%まで落ち込んでいる。かつて『ドラえもん』は1981年から1681回放送して平均視聴率14・7%、『しんちゃん』も1992年から1088回(放送)で平均12・8%をとっていた。いい時は20%とっていました。この(現在の)6~7%はタイムテーブルへの影響というのは非常に大きなものがありまして…。なんとか、そこを脱却したいと、より見られる時間帯を探して、土曜日の夕方に移行するということにしました」と、細かい数字まですべて明かして経緯を説明してくれた。

 さらに「長い間、支えていただいている広告会社、アドバタイザー(広告主)とか、あるいは権利者、関係者の皆さまには我々の事情を説明して理解を得ました。視聴者もこれだけ長くやっていますから、移動することに違和感があるとは思いますが、その分、土曜日の放送以外にも映画、イベントなど今までやってきたものをさらに強化して新しい試みを作業中です。視聴者、特に子供たちの期待を裏切らないように務めていきたいと思っています」と決意表明までしていた。

 今思えば、早河会長の言葉には、低迷する国民的アニメ2作品に息を吹き返してもらおうという思いがあったことが分かる。

 1週間の仕事が終わり、ゆったりリアルタイム視聴する金曜午後7時台に6~7%台の視聴率では話にならない―。それが「ドラえもん」と「しんちゃん」の置かれたシビアな状況だった。打ち切りさえ考慮されただろう改編の話し合いの中で「土曜の夕方で復活してもらおう」―。それがテレ朝サイドの正直な思いであることが、早河会長の丁寧な答えで理解できた。しかし、その狙いは2か月を経た今、裏目に出てしまっている。

 進む少子化と録画視聴の増加の中、リアルタイムでアニメ番組を楽しむ層は日々、減少。子供が大人へと成長していくのにつれ、あれほどのめり込んで見ていた「ドラえもん」「しんちゃん」から“卒業”し、視聴者が入れ替わっていくのも、また現実だ。

 そんな中、ビデオリサーチ社が日々調査する視聴率と、それを根拠にしたCM収入で民放テレビ局の経営が成り立っているのもまた厳然たる事実。熾烈な視聴率競争の中、「神聖不可侵」にも見えてきた「ドラえもん」や「しんちゃん」にも枠移動してもらい、再起を図ってもらう―。そこには「国民的アニメには触るべからず」なんてタブーは存在しない。すべては視聴率競争に勝ち抜き、営業利益を上げるためという目的があった。

 しかし、そんな思いで踏み切った放送日と時間の移行の結果がさらなる数字の低迷だった。シビアなキー局間の視聴率争いと弱肉強食の論理の中、国民的アニメが今、崖っぷちに立たされている。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」の枠移動前後の視聴率推移

 ▽「ドラえもん」

 8月2日 5・6%

 8月9日 6・8%

 8月23日 6・7%

 ※ここまで金曜放送、以後は土曜放送

 10月5日 6・0%

 10月19日 4・0%

 10月26日 3・8%

 11月2日 3・3%

 11月9日 4・1%

 11月16日 3・3%

 11月23日 3・2%

 11月30日 4・4%

 ▽「クレヨンしんちゃん」

 8月2日 6・2%

 8月9日 6・7%

 8月23日 6・2%

 ※ここまで金曜放送、以後は土曜放送

 10月5日 4・9%

 10月19日 2・5%

 10月26日 2・9%

 11月2日 2・5%

 11月9日 3・4%

 11月16日 3・4%

 11月23日 2・8%

 11月30日 3・0%

 (数字はビデオリサーチ調べ、関東地区)

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