ハード、ソフト、AIの三位一体で攻める「Pixel 4」、目を閉じていても顔認証でアンロックできることが判明

Pixel 4、目を閉じていても顔認証でアンロックできることが判明

米グーグルのスマートフォン「Pixel 4」が、目を閉じた状態でも顔認証による画面のアンロックが可能だと判明しています。

下の動画は、BBCレポーターのChris Fox氏がPixel 4で顔認証機能「フェイス・アンロック」を試している様子です。Fox氏が目を閉じたままでも、いとも簡単にロックが解除できていることがわかります。

もし目を閉じた状態でもアンロックできるとなると、寝ている状態で勝手にスマートフォンが使われるリスクが高まります。なお、同じく顔認証機能「Face ID」を搭載したiPhoneでは、視線を検知してそのような悪用を防ぐ設定が用意されています。

興味深いことに海外メディアの9to5Googleによると、グーグルは意図的に視線を検知するプロセスを省いていたそうです。これは「シームレスなエクスペリエンスを妨げる」ことが理由だと説明されていますが、エクスペリエンスよりもセキュリティのほうが遥かに大事な気がするのは、私だけでしょうか。

なお、グーグルはBBCや海外テックメディアのThe Vergeにたいし「(顔認証機能は)ソフトウェアアップデートにより改善される」と説明しています。現時点では具体的なスケジュールは伝えられていませんが、一刻も早くPixel 4の顔認証機能が改善されることを願うばかりです。

ハード、ソフト、AIの三位一体で攻める「Pixel 4」 “我が道を行く”ゆえの課題も

 Googleは10月15日、同社製のスマートフォン「Pixel 4」「Pixel 4 XL」を発表した。16日には日本でも発表会を開催。2モデルとも、10月24日に販売が開始されることが明らかになった。2018年はドコモとソフトバンクの2社が取り扱っていたが、Pixel 4、4 XLはソフトバンクがキャリアとして独占的に販売する。ドコモとKDDIは、導入を見送ったようだ。

●「ハードウェア」「ソフトウェア」「AI」の3つを融合させるPixelシリーズ

 検索を皮切りに、動画共有サービスのYouTubeや、スマートフォン向けOSのAndroidなど、各種ソフトウェアを提供してきたGoogle。そんなソフトウェアやクラウドサービスを主戦場にしてきた同社が送り出すフラグシップスマートフォンが、「Pixel」シリーズだ。Pixel 4、4 XLはその最新モデル。ハードウェアとしては、デュアルカメラ化したことや、電波を使ってジェスチャーを検知する「モーションセンス」に対応したことが、大きな特徴となる。

 機械学習を処理するためのチップセットも刷新し、「Pixel 3」や「Pixel 3 XL」に搭載されていた「Pixel Visual Core」は、「Pixel Neural Core」へと名前を変えている。メインのチップセットはQualcomm製のSnapdragon 855だが、機械学習の処理に特化させたチップを別に搭載し、カメラ撮影時の処理や音声認識など、端末上で行う動作の高速化を図っている。

 ソフトウェアやクラウドサービスを主力にしていたGoogleが、あえてスマートフォンを開発、販売する狙いはここにある。日本でのイベントに登壇したGoogleのハードウェア事業 パートナーシップビジネス統括の織井賢氏は、「ハードウェア、ソフトウェア、そしてそれをAIが包み込むことで、今までにない経験をしていただける」と語る。

 Googleのサービスは、スマートフォンがあれば利用することはできる。Androidである必要すらなく、Googleは競合ともいえるiPhoneにもアプリは提供している。一方で、Googleが注力するAIの実力を最大限引き出そうと思うと、どうしてもハードウェアという“入れ物”が必要になってくる。Pixel 4、4 XLに搭載されたカメラは、その代表例だ。いくらAIが優れているとは言っても、当然ながら光を受け、データに変換するレンズやセンサーがなければ、それを形にできない。

 他社のスマートフォンに提供するにしても、スペックは機種によってまちまちだ。例えば、Pixel 4、4 XLには、8倍まで被写体に寄れる「超解像ズーム」が搭載されているが、これを実現するには、新たに搭載された望遠カメラが不可欠だ。一方で、望遠カメラはスペック上、35mm判換算で44mmと、望遠と呼べるほどの画角ではなく、機械学習なしにはここまで鮮明な映像を作り出すことができない。ハードウェアとソフトウェア、さらにAIが協調することで、初めて実現できた機能というわけだ。

 残念ながら日本語には対応しておらず、現在、「提供できるように取り組んでいる」(Google広報部)段階だが、ボイスレコーダーの自動文字起こし機能も、カメラと同様、ハードウェアとソフトウェア、AIの3つの連携で生み出された機能といえる。文字起こしが可能なボイスレコーダーアプリは他にも存在するが、Pixel 4、4 XLのそれは、端末上で処理が完結するのが大きく異なるポイント。容量の大きな音声データをクラウドにアップロードする必要がないため、データ通信の速度や容量を気にせず使えるのは、大きなメリットといえる。

●アンビエントコンピューティングの概念を取り入れ、自然な使い勝手を実現

 織井氏が「アンビエントコンピューティング(※)なくして、3つ(ハードウェア、ソフトウェア、AI)を融合させることはできない」と語ったように、Pixel 4、4 XLは、ユーザーが自然に使えるような工夫も盛り込まれた。「これらをつなぐ架け橋となるのが、Googleアシスタント」だ。発売時点では未対応だが、2モデルに合わせ、Googleアシスタントもアップデートされる予定。デザインがより、ユーザーインタフェースに溶け込んだ形になるのと同時に、端末のパフォーマンスを生かし、クラウドを使わず処理できる動作も増えるという。

 確かに、アプリのアイコンがホーム画面にズラリと並び、ユーザーがそれを選んで操作するのは、織井氏が「スマートフォンが中心でその周りに皆さんがいる」と表現したように、決して自然な流れとはいえない。手に取って端末を握り、やりたいことや知りたいことを人に向かって話すのと同じようにスマートフォンを使えた方が、「自然な形で情報を届けることができる」(同)といえる。

 電波法の整備が済んでおらず、提供が2020年春になってしまったモーションセンスも、アンビエントコンピューティングを実現するための要素の1つといえる。この機能がオンになると、Pixel 4、4 XLはユーザーの手が近づいたことを認識。先回りして顔認証を起動させておき、より素早く画面のロックを解除できるようになる。音楽再生やアラーム、通話などの各種操作にも利用可能で、端末を手に取れないときでも、自然な形で操作できる。

 応用例がまだまだ少なく、主体的にスマートフォンを操作する場面で頻繁に利用するか? というと疑問符もつく。実際、同様のジェスチャー操作は過去、さまざまなスマートフォンが実験的に取り入れてきたが、精度がいまひとつだったことも災いして、本格的には普及していない。Googleのモーションセンスも、どこまで正確に思った通りの操作ができるのかは未知数だ。

 一方で、Googleは音声だけでなく、空間の手の動きを検知して、ユーザー中心の操作体系を作り上げようとしていることをモーションセンスで明確化した。ハードウェアという器を作ったのは、ここにさまざまな機能を投入していく準備にも見える。

 Pixel 4、4 XLに限った話ではないが、デザインにもこうしたGoogleのコンセプトは反映されている。目指したのは「手に取ることができるGoogleサービス」だ。結果として、「human(人)」「optimistic(楽観的)」「daring(大胆)」という3つのキーワードを導き出し、ハードウェアの数々はこの思想の下でデザインされた。

 Pixel 4、4 XLも、「人間味があって楽観的で、かつ大胆というコンセプトに基づいて設計した」(インダストリアルデザイン ディレクター マックス・ヨシモト氏)という。柔らかな曲線を用いていたり、ガラスを使いながらもサラサラとしたマットな仕上げにしたりといったところは、人間を中心に据えたアンビエントコンピューティングの思想ともマッチする。

●ハードウェアメーカーが原点ではないゆえの課題も

 GAFAの1社であるGoogleが開発したスマートフォンであるだけに、Pixel 4、4 XLはどうしても、もう1社のAppleが開発したiPhoneと対比されがちだ。ただ、ここまで見てきたように、その開発思想や狙いは、ハードウェアメーカーが原点であるAppleとは大きく異なる。むしろアプローチは真逆で、ソフトウェアやAIから逆算して設計されたハードウェアにも見える。当然ながら、ビジネスの規模感も文字通り桁が違うため、直接的な比較はあまり適切ではないだろう。ただ、カメラに注力しているところや、端末の2サイズ展開、価格設定などに関しては、Appleを強く意識していることもうかがえる。

 それゆえに、発売時点で非対応の機能が多いのは、残念なところだ。後からアップデートし、完成度を高めていくという発想は、ソフトウェアを主軸にしたGoogleらしい発想だが、あまりにそれが多いと、「対応してから買えばいい」となってしまいかねず、スタートダッシュに悪影響を与えそうだ。電波法の規制が絡むモーションセンスは仕方がないとしても、ハードウェアとソフトウェア、AIの三位一体で力を発揮する端末であるだけに、せめてボイスレコーダーの文字起こしは、英語以外の言語でも発売時に対応していてほしかった。

 ハードウェアメーカーとは真逆ゆえにPixel 4、4 XLには斬新さもある一方で、同時にそこが課題として浮かび上がってくる。ハードウェアは、確かに上質な仕上がりの一方で、分かりやすい高級感がない。Appleであればステンレススチールをフレームに採用して光沢感を出したり、すりガラスを使って金属のような表情を出したりと、一目で分かる“価格相応感”がある。対するPixel 4、4 XLは、シンプルゆえにじっくり見ないと質感が伝わりづらいと感じた。他のAndroidスマートフォンと比較しても、これは同じだ。

 ハードウェア起点の発想をしていないためか、機能面で、スマートフォンのトレンドを追っていないところもある。iPhoneに搭載され、一気に火が付いた超広角カメラはその1つだが、指紋センサーがないのも、高価格帯のAndroidでは珍しい。よく言えば我が道を行くGoogleらしさではあるものの、近い価格帯のハイエンドモデル同士で比較したとき、どうしても見た目や機能以上の値段に見えてしまう。

 販路の開拓も課題といえる。冒頭で述べたように、Pixel 4、4 XLは、Googleストアとソフトバンクのみの扱いになり、ドコモは発売を見送ってしまった。Pixel 3、3 XL、3aの販売実績がいまひとつだったことを考えると、5Gの開始を控えた今、積極的に導入するのは難しかったのだろう。現時点でリアル店舗での販売はソフトバンクのみで、MVNOの取り扱いもない。

 海外に目を移すと、例えば米国では主要キャリア全てに販路を拡大するなど、徐々に成長はしているものの、その他の国でどう拡大していくかの戦略があまり見えてこない。端的に言えば、メーカーとしての営業力が弱い印象を受ける。一方で、カメラを筆頭に、ソフトウェアやAIに強みを持つGoogleだからこそ実現できた機能は魅力的で、インパクトもある。こうした特徴を、ユーザーに対して丁寧に伝えていけるかが、成否を分ける鍵になりそうだ。

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