変更点はそれほど多くないWindows 10の秋アップデートが完成

変更点はそれほど多くないWindows 10の秋アップデートが完成

 Windows 10 秋のアップデートが完成したようだ。今年11月に一般配布予定で、Windows 10 Ver.1909になる予定の「Windows 10 November 2019 Update」(以下、19H2と表記)は、最終版となる予定のビルド18363.418が作られ、Windows Insider ProgramのRelease Previewの参加者向けに配布されることがブログで公表された。

 19H2は、これまでとは違い、大きな機能追加を含まず、もっぱらパフォーマンス向上や品質強化が中心となり、追加機能も「エンタープライズ機能」に限られているバージョンとなる。このあたりに関しては、本連載でも以前扱った(「意味合いが変わる今秋の次期Windows 10バージョンアップ、19H2のプレビュー開始」)。

 19H2は、今夏からプレビューが開始され、Windows Insider Program参加者向けには、Preview Build 18362.10022というバージョンが9月に配布されていた。この9月のバージョンは、現行のWindows 10 Ver.1903では、9月の品質アップデート(KB4517389)を適用したOS Build 18362.418に相当するものだった。

 これに対して 19H2の完成版は、Build 18362.418となり、Ver.1903とはビルド番号で1つ違いで、ピリオド以下の数字が一致するものとなる。これは、19H2とWindows 10 Ver.1903(19H1)が、品質アップデートパッケージを共有するものだからだ。これはつまり、秋のアップデートは、春のアップデートと品質パッケージを共有できる範囲の改良に限られていたことを意味する。

 これに対してWindow 10 Ver.1903をインストールしていて、Release Preview Ringに参加しているインサイダーユーザー向けには、9月からBuild 19363の配布が開始されている。これは、Ver.1903の延長としてインストールされるものだ。

Windows Insider Preview Slow Ringには、20H1が登場

 19H2は、Windows Insider ProgramではSlow Ringで配布が行われていた。19H2のプレビュー版配布履歴を以下の表にまとめておく。

 Preview版の配布には、「Fast Ring」「Slow Ring」「Release Preview Ring」と「Skip-Ahead」の4つの配布チャンネル(Ring)がある。20H1は、今年2月からSkip-Ahead Ringで配布が開始され、現在では、Fast Ringで配布されている。Fast Ringのプレビュー版は、過去には、比較的安定したバージョンがSlow Ringでときどき公開されていた。しかし、20H1に関しては、19H2がSlow Ringを使っている関係でまだSlow Ringには登場していなかった。

 19H2がRelease Preview Ringへ移行したことで、20H1のプレビューがSlow Ringに登場し始める。Slow Ringは比較的安定したバージョンで、通常利用には向かないが、安定した評価が可能だ。なお、Slow Ringで19H2のプレビュー版を受け取っていたWindows Insider Programの参加者には、今後、最終プレビュー版の配布(Build 18363.418)がなされる予定という。ただし、これからRelease Preview Ringに移行しても、すでに19H2のプレビュー版がインストールしてあるユーザーには、配布されないという。Slow Ringの参加者はそのまま留まるのがいいようだ。 

Windows 10 Ver.1909における変更点

 この新しい配布方式のWindows 10アップデートである19H2は、「パフォーマンスの向上」「エンタープライズ機能」「品質強化」がアップデート対象となり、大きな機能変更はない予定だという。これは、品質アップデートを共有することからも、容易に想像がつく。簡単にいえば、19H2こと、Windows 10 Ver.1909は、Ver.1903のマイナーアップデート版になる。

 19H2の変更点は大きく3種類に分類できる。1つは、いわゆる「一般的な機能強化点」。もう1つは「エンタープライズ向け機能」だ。そして残りの1つは、ユーザーが直接見ることができない「システム」関連の変更である。

 なお、現在のWindows 10では、Microsoftストア経由で多くの標準付属アプリをアップデートするため、20H1の開発とともに変更された標準付属アプリケーションがある。ただし、本記事では、これらの変更点は、19H2の変更点には含めない。

 まずは、一般的な機能強化点だが、以下のようなものがある。どれも小振りな変更でやはりマイナーチェンジ感がある。

●タスクバーのカレンダーフライアウトから予定登録が可能に

 「設定」→「システム」→「通知とアクション」のアプリ一覧にソート機能がついた

●スタートメニューの左下の縦に並ぶアイコンにマウスを置くとペインが拡張して説明文字列を表示

 「設定」→「システム」→「通知とアクション」のアプリの詳細設定ページの改良

●アクションセンターの最上部に「通知の設定」リンクがついた

 サードパーティデジタルアシスタントのロック画面での利用

●エクスプローラーの検索ボックス改良、OneDrive内コンテンツの検索が可能に

●ナレーターの改良

 一部の機能は、20H1の新機能として紹介されているが、それ以外のものでも、20H1ではすでに対応しているものばかりである。たとえば、20H1の変更点を紹介するマイクロソフトのブログでは、サードパーティデジタルアシスタント(たとえばAmazon Alexa)をロック画面でも使えるようにする機能は紹介されていないが、ちゃんと20H1では、Alexaをロック画面で使うことが可能だ。

 大きなものとしては、カレンダーの予定追加機能がある。これは、タスクバー右下の時計をクリックしたときに表示されるカレンダーのフライアウト(ポップアップ)から予定の登録が可能になるものだ。

 エンタープライズ機能に関しては、変更点は以下のようなものになる。これについては項目を挙げるにとどめておく。なお、ARM64デバイスに関しては、マイクロソフトがSurfaceシリーズに製品を出したこともあり、かなり本気でx86/x64系との互換性を持たせている最中だ。20H1ではWLS2のARM64対応などが含まれ、来年ぐらいには、ほぼ同じように利用が可能になりそうだ。

●WSUS関連

●WIP4Biz関連

●Windowsコンテナー関連

●Bitlocker/MDM関連

●Windows 10SとWindows Intuneサーバーの改良

●ARM64デバイス(Windows On ARM)でWIndows Defender Credential Guardが利用可能

 システム系の変更は、特定のハードウェアに対応するものが多い。具体的には、

●CPUコアのタスク割り当ての改良

●インテルCPUのデバッグ機能に対応

●ペンハードウェア関連

●特定CPUの電力消費改善

といったものがある。このうちCPUのタスク割り当ては、各コアの優先コア間でのタスク割り当てを公平化するもの。Windowsでは、SMT(Intel Hyper Thread機能など)コアと物理コアを区別しており、SMTでコアが複数見える場合、1つだけを優先コアとして残りのコアとタスク割り当てに違いを持たせる。このようにすることで、処理性能を保つようにしている。

 このとき、優先コア間でのタスク割り当て(スレッドの実行割り当て)を公平にすることで、非効率的な実行を減らすことができる。SMT機能を持つプロセッサ向けの機能だが、具体的な違いを見ることは難しい。

 ざっと見た感じ、19H2は、ほとんどWindows 10 Ver.1903と同じといっていいかもしれない。エンタープライス機能などでは違いがあるのだが、それぞれ、Microsoftのサーバー製品などを利用して管理している場合に限られる機能であり、管理自体は容易になるだろうが、利用者には具体的な違いとしては見えにくい。

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