最後のポケベルユーザーを直撃。なぜ今も使っているのか?ポケベルとともに歩んだ30年

最後のポケベルユーザーを直撃。なぜ今も使っているのか?

 一つの時代の終わり。9月30日でポケベルのサービスがすべて終了になる。バブル期には外回りに営業マンへの連絡手段として普及し、90年代に入ると女子高生の間で一気に広まり、当時はプリクラ・ルーズソックスとともに女子高生の三種の神器とまで言われた。

 しかし、携帯電話の普及とともにそのブームは一気に引き、2007年にはNTTドコモがサービスを終了し、唯一サービスを提供していた東京テレメッセージも2013年に新規の受付を終了していた。

 1996年には1000万件以上あった契約も、現在では首都圏のみに1500件を数えるほどに減少し、そのほとんどは医療関係などの法人契約だという。そんな中、最後までポケベルを利用している男性・藤倉健さんを発見。インタビューを敢行した。

もしかして、個人契約最後のひとり?

――法人ばかりの中で、数少ない個人契約のポケベルユーザーとしてお話を聞かせてください。

藤倉健さん(以下、藤倉):もしかしたら、数少ないではなくて個人は僕一人かもしれないんですよ。というのも、こないだ東京テレメッセージから電話がかかって来て「テレビ局の人が、個人契約のポケベルユーザーを探してるんですが、藤倉さんを紹介してもいいですか」って言われたんですよ。

――キャリア直々に(笑)

藤倉:僕も、誰か他に使ってる人いるのかと思ってTwitterとかで探したんですが、見つからなかったですね。

――ここ数年でポケベルを使っている人に会ったことはありますか?

藤倉:ないですね。もう何年も。

今、何のためにポケベルを使うのか?

――なぜ、現在でもポケベルが必要なんですか?

藤倉:80歳になる母がいまして、近所ではあるんですが一人暮らしをしてるんですね。母からの緊急時の連絡手段として使っています。

――携帯やスマホではダメなんですか?

藤倉:高齢なので「外出してる個人に電話で連絡をとる」という感覚がピンとこないみたいなんですよ。だから、文字が送られてくるわけでなく、通知が来たら母の自宅に電話をかけています。ポケベルの番号は母しか知らないので、スマホでなくポケベルがなることで、内容を見なくても母からだとわかるんです。

――他にメリットはありますか?

藤倉:電波がめちゃくちゃいいところですね。携帯やスマホと違う帯域の電波で、建物の中とか地下とかどこでもつながります。だから医療関係で使われているんでしょうね。

――最近はその帯域の電波を防災ラジオなどに使う自治体も増えてるみたいですしね。来月以降はどうされるんですか?

藤倉:全く未定なんですよ。母にスマホを教えるか…。母が覚えたとしても通知がスマホに来ますからね。このポケベルの番号は母しか知らないから、ポケベルがなれば母からだとわかったんですが、スマホになると、ほかの通知に紛れて緊急性の高いものかわからなくなってしまいますので、困っています。

ポケベルとともに歩んだ30年

――初めてポケベルを持ったのはいつごろだったんですか?

藤倉:30年くらい前ですね。私の母が父に持たせてて、その延長で持ってましたね。その当時はまだ文字とかは出ずに鳴るだけでしたけどね。

――利用者の減少を実感したのはいつごろですか?

藤倉:実感したのはPHSが出て来た頃ですね。

――90年代の終わり頃にあたりますかね。

藤倉:そうですね。PHSにはPメールっている機能があって、あれは相互に送受信できますよね。圧倒的ですよ。ポケベルは受信しかできませんから。

――藤倉さんにはポケベルが必要かもしれませんが、社会には必要だと思いますか?

藤倉:いらないんじゃないですかね。だってこれ、直近の請求書なんですけど、単なる受信機なのに月々2500円もかかるんですよ(笑)。この追加の100円ってのが文字を打つためのサービスなんですけど、100円で9文字しか打てないんですから(笑)。

ポケベルとの思い出は、やはり「出会い」だった

――ここ数年はお母様専用とのことですが、全盛期はどんな使い方だったんですか?

藤倉:1990年代後半くらいに文字が出るやつに変えたんですけど、それで結構「楽しみ」ましたよ。これ、内容的にテレビでも話してなくて、大丈夫ですかね?(笑)

――もちろんです(笑)。「楽しんだ」というと?

藤倉:簡単に言いますと、出会いのために使いましたね。私がやってたのは、というか、結構やってる人も多かったと思いますが、闇雲な番号のポケベルにメッセージを打つんですよ。そこからメッセージのやりとりして会ったり。闇雲に打っても相手は8割くらい女性でしたね。

――まだ出会い系やSNSが出てくる前ですからね。いつの時代も男は、手元にあるツールで頑張りますね(笑)

藤倉:30歳になったくらいの時に、自分に似た番号に適当にポケベルを打ったら、たまたま自分が通ってたのと同じ大学の子に当たったんですね。これは僕の経験からの予測なんですけど、最初の4桁が地域ごとに割り振られてたんじゃないかと思うんですね。というのも、自分の番号に似たところにかけるとだいたい近所の人が捕まるんですよ。それで、その大学の後輩とはよく会ってって遊んだりもしましたし。

――それまでは手紙でも電話でも、家族のいる家に届くものだったのが、ポケべルは個人に直接アプローチできますもんね。今では事件の匂いしかしませんけどね(笑)

藤倉:でも当時は結構みんな会ってましたね。僕もその大学の後輩とポケベルを通じて知り合って、初めて会ったのは多摩センターの公園だったのを思い出しますね~。

 時代とともにコミュニケーションの方法も変わる。平成前半のコミュニケーションの主役だったポケベル。その最後を見届けた気がした。

遺影に「1141064」 30日終了、ポケベル葬

 「個人向け通信呼び出し」のポケットベルが今月30日でサービスを終える。終了を前に、「みんなのポケベル葬」が29日、JR秋葉原駅そばであった。主催は東京都葬祭業協同組合。仕事柄、急な連絡が頻繁な葬祭業者にとってポケベルは必携だったといい、お葬式は「感謝の気持ちを込めた」としている。

 2時間半の催しには買い物客などを含め約300人が参加。「1141064」(愛してるよ)と表示された「ポケベル」のパネルを遺影に見立て、訪れた人が次々と白いカーネーションを献花し、頭を下げた。

 主催者の一人、協同組合青年部の前部長、渡辺幸次さん(31)によると、自らはスマホ世代。そこで遺影のポケベルにどんな数字がふさわしいか、先輩らに尋ねてみると、「49106(至急テル=電話をして)」や「0840(オハヨー)」などが挙がり、最も多かったのが「愛してるよ」だったという。

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