どこまで行けば、iPhone 11スマートフォンのカメラはカメラを超えるのか

どこまで行けば、スマートフォンのカメラはカメラを超えるのか

スマートフォンの高い処理性能で

写真の画質向上を進めるという方向性

 2018年、スマートフォンのカメラは2つの進化の方向性へと分かれていると思ったことがありました。

 複数のカメラを搭載して切り替えて利用するハイエンドスマートフォンに対して、Google「Pixel 3」とApple「iPhone XR」は1つのカメラでありながら、機械学習処理で写真を磨き上げる。いずれも、いわゆる普通の「カメラ」の世界にはない独自の進化でした。

 Pixel 3は画像処理専門の機械学習エンジンを搭載し、ポートレート撮影や暗所でも明るく撮影できる機能を実現しました。iPhone XRも、上位モデルで2つのカメラを用いて実現していた背景をぼかすポートレートモードを、1つのカメラとアルゴリズムで実現しました。

 Androidスマートフォンでは早くから3つのカメラを搭載するモデルが登場してきましたが、よりスマートフォンらしいと言えるのは、Pixel 3とiPhone XRの機械学習処理を用いた画質向上だったと振り返ることができます。

 そのiPhone XR自体は併売モデルとして残りましたが、これを進化させたiPhone 11には超広角レンズが搭載されて2つのカメラを搭載するようになりました。複数のセンサーを搭載して同時に稼働させて画質向上に役立てることもまた、スマートフォンらしいカメラの高画質化の結果だと思うのですが。

スマートフォンは、カメラの深みに迫れるか?

 そもそもカメラとスマートフォンは、「写真」に対する考え方で相容れない思想があると常々感じていました。

 カメラの品質は、いかに目の前の情景を正確に描き出すかが光学的に追求されている世界というイメージです。一方スマートフォンでは、理想の写真を共有して驚きや感動といった反応を得られることのほうが重視され、それが写真ではなく画像だと言われても大きな問題ではなかったのです。

 しかし、たとえ画像が劣化するInstagramに写真を載せるとしても、スマートフォンで撮影した写真と、一眼レフカメラやミラーレスに明るい単焦点カメラを組み合わせて撮影した写真では、一目瞭然の差がつきます。細かく見ると、色の深み、解像感、ボケの量と綺麗さなどで違いが大きくなっていきます。

 ところが、こうした違いがわかっているということは、スマートフォンの写真の撮影時の加工や演出で、カメラの画質に迫ることができる要素も少なくないということも意味します。荒い画像の解像感を高めることは難しいとしても、それ以外の要素は編集で再現できるからです。

そうした視点で、iPhone 11のカメラの進化を見てみる

 最新のiPhone 11のカメラは、これまでの順当な進化とは一線を隠すような、非線型の進化を感じました。前述のように、色の深みやボケ方が、より筆者の好み、つまり普段使っているフジフイルムの明るい単焦点レンズをつけたカメラのそれに近づいていたからです。

 いやむしろ、そういう味付けを強めているのではないか、と思える瞬間もあります。普通にスナップで撮っているとき、意図せずに狙っている被写体の手前に人やものが映り込むと、そちらにフォーカスを合わせて、わずかに背後になった被写体までボケてしまうからです。若干の使いにくさも含めて、明るい単焦点レンズっぽい、と思った次第です。

 2019年モデルのiPhoneのカメラを、こうした普段からのスマホとカメラについての思考から考えてみると、iPhone 11シリーズに新たに搭載された超広角カメラは2つの意味でユニークだと思いました。

 13mm/F2.4というカメラは、どちらかというとGoProやOSMO Pocketといったアクションカメラやスタビライザー付きカメラのそれに近く、目の前の風景をFPV(ファースト・パーソン・ビュー、一人称視点)で撮影するカメラのような存在と言えます。

 確かにこれまでは収まりきらなかったビルを根本から撮影できるようになりましたし、体の前に構えてビデオを撮れば、冒険のダイナミックさを伝える面白いタイムラプスビデオが撮影できます。

 もちろんスタビライザーが省かれるなど、GoProを使うべきシーンの方がまだまだ多いのですが、アクションカメラで撮れる絵はiPhone 11でも撮れるようになった点は事実です。いままでのカメラにはないアクションカメラが切り開いた新しい価値観の写真やビデオを、iPhoneが取り込んだという印象でした。

そろそろスマートフォンのカメラが臨界点を突破する

 iPhone 11の超広角カメラは、通常の広角カメラを使っているときにも常に動作し続けており、写真を撮る際の画面に、フレーム外の光景を表示して構図を考える助けをしてくれたり、写真を撮影した後からフレームをより外側にずらし、欠けてしまった被写体を含めた写真へ加工することもできます。

 センサーが複数あり、一昔前のスパコン並みのプロセッサで処理できる性能を誇るカメラという意味では、元々のカメラの世界には競合はありません。それでも筆者が感じていた通り、光学的な性能のほうが、写真の仕上がりをより支配してきたこれまでのカメラの価値観が、そろそろ臨界点を超え、スマートフォンが上回り始めるタイミングを迎えつつあるのではないかと感じるようになりました。

 今年の秋のソフトウェアアップデートで、iPhone 11には「Deep Fusion」という、最大9枚の写真を合成してより高解像度な写真を得る機能が有効化されます。そうなると、画像処理で解像感まで大きく改善することになり、筆者が感じていたスマホとカメラの違いの主要な部分を克服してしまう可能性があるのです。

 あとはカメラで写真を撮っている、という行為に残る“撮影感”がポイントになるのかもしれませんね。

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

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