iPhone 11 / 11Pro、カタログだけじゃ分からない実機で確認できた7つの「進化点」(西田宗千佳)
本誌読者のみなさんならiPhone 11のWebページをすでに穴が空くほど眺めたはず。そのうえで予約済みの人もいれば、まだ「どうかなあ......」と悩んでいる人もいるだろう。
ここではそんな読者の方に向けてiPhone 11 / 11 Pro Maxを例にし、実機に触れてみないとわからない色々な進化点を抜き出してご紹介したいと思う。カメラのレビューなどは、きっと他のレビュワーの記事が本誌にも掲載されているはずなので、そういう観点ではなく"使うとちょっと驚く"、そんなiPhone 11シリーズの進化点を7つに分けて解説してみたい。
その1:11と11 Proシリーズ、意外と違う仕上げと質感
デザイン的に「カメラが3眼」であることが注目されているが、iPhone 11 / 11 ProシリーズとこれまでのiPhoneでは、仕上げがかなり変わっている。
iPhone 11は背面のガラス光沢が目を惹くが、アルミ部はちょっとマットな仕立てだ。
それに対してiPhone 11 Pro Maxは、背面がしっとりとしたつや消し加工で、サイドのステンレスは光沢仕上げである。背面の仕上げはかなり良質で、すいつくような肌触り。これはけっこうクセになる。
カメラが載っている「台座」のような四角い部分は、背面が光沢仕上げなiPhone 11ではマットであり、マット仕上げなiPhone 11 Pro Maxでは光沢仕上げになっている。
カメラの「台座」の仕上げは背面とは異なり、iPhone 11が「マット」でiPhone 11 Pro Maxが「光沢」
そして過去のiPhoneとは異なり、背面からは「iPhone」のロゴが消え、リンゴのマークだけになった。しかもリンゴマークの位置は下がり、ほぼ本体中央まで降りてきている。上に大きなカメラ部があることから、バランスをとってシンプルにしたのかもしれない。
その2:iPhone 11もiPhone 11 Proもメモリは4GB
ベンチマークソフト「GeekBench 5 Pro」によるテストの結果は以下の通りだが、CPUの動作クロックやメモリ量は、iPhone 11もiPhone 11 Proシリーズも同じと考えられる。Appleはメインメモリの容量を公開していないが、今回はどちらも4GB。iPhone XSと同じである。一方、3GBだったiPhone XRと比較すると、増えていることになる。
モデル名が「iPhone 12,1」と表示されているのがiPhone 11で、「iPhone 12,5」となっているのがiPhone 11 Pro Max。メモリ量や動作クロックはどちらもほぼ同じだ
iOSの場合、メモリ不足で動作速度などに影響を与える場面はAndroidに比べて少ないが、それでもメインメモリは多い方がいい。アプリを複数切り替えながら使っている際、勝手にアプリが終了していて中断状態でなくなる......ということが減るからだ。移動しながらアプリ切り替えを頻繁にする人、例えば、「ドラゴンクエストウォーク」や「ポケモンGO」などの位置ゲーを遊んでいる人にとっては、3GBより4GBの方がありがたいシーンは多いだろう。
そのためベンチマークソフトでの差は誤差に近く、プロセッサー速度も、両機種ともほぼ同じと思われる。A13 Bionic内のARMプロセッサコアの性能は、シングルコアではなんとiPad Pro(2018年モデル)より速い。とはいえ、性能向上量は少ない。
画像はiPhone 11の結果だが、プロセッサ性能はiPhone 11 Proシリーズとほぼ同じ。シングルコア性能は若干だが昨年のA12 Bionicを上回る
マルチコアではさすがにiPad Proに負けているが、シングルコアの結果以上に昨年モデルよりも速くなっていて、順当な進化が見える。
GPUを中心とした演算性能である「Compute Bench」では、iPhone同士で比較すると劇的といえる性能向上が見える。さすがにiPad Proにはかなわないが、iPad Proはそもそも、GPU性能がiPhoneに比べかなり高い。だから価格も高いのだが。iPhoneとして2017年のフラッグシップiPadに肩を並べるところまで来た、というのは、ゲームにしてもAI処理にしても、かなりの負荷軽減が見込める。ようは「今年のiPhoneはCPUよりGPUが進化した」ということだ。
その3:「撮れるだけ」じゃない超広角、実は使い勝手にも大きく寄与
iPhone 11シリーズには、35mm判換算で13mm相当の「超広角」カメラが追加された。そのために広がりのある写真が撮れる、というのはみなさんご存じのとおり。この効果はなかなかすごい。
13mm相当の超広角と26mm相当の広角で撮った写真を比較。バーッと広がりのあるような風景では気持ちのいい写真が撮れる。モデル協力:Caoさん
だが、カメラの評価については他のレビューを読んでほしい。ここで説明するのは、13mmカメラの別の使い方だ。
以下の画像をご覧いただきたい。撮影中のフレームの「外」にも映像がぼんやり見えるのがおわかりいただけるだろうか? 基本的に、記録されているのはもちろんフレームの中。外は撮影時に"ガイド"の役割を果たしている。これが意外なほど使いやすく、フレームが決めやすい。
「フレームの外側」を見ながら撮影できるのはちょっと新鮮。実はこの機能、撮影には直接使っていない超広角側のカメラの映像を使った「合成」なのだ
この機能は、26mmと52mmのカメラでのみ使える。このあたりでわかった人もいると思うが、実はそれらのカメラと同時に13mmのカメラも動かし、その映像から「合成」する形で作っているわけだ。
これはまさに、複数のカメラがあって常に演算で写真を作る「スマホのカメラ」でしかできない芸当であり、写真が苦手な人ほどありがたいと思う機能だろう。
その4:ナイトモードは星まで撮れる(らしい。ただし、暗いところで三脚があれば)
iPhone 11には、暗いところでの撮影を改善する「ナイトモード」が搭載された。この機能も、使うのがとても簡単だ。Appleはとにかく「簡単」「自動」にこだわっている。
周囲が暗く、ナイトモードが必要な状況になると、カメラ自身が勝手にナイトモードになる。ナイトモードでは一定時間の間に複数回、露出の違う写真を内部的に撮影、それを合成した上で「1枚の写真」に仕上げる。以下の画像の右端にある、黄色いマークにご注目。これが「ナイトモード」の証で、内側の数字が「何秒写真を内部で撮影するか」という値となる。その間iPhoneを動かないように保持していれば、夜でも明るい写真が撮れる、というわけだ。一応手ぶれ補正は効いているようなので、「できるだけゆらさないように注意」するくらいでいい。
さて、ナイトモードでの撮影時間だが、マニュアルで「伸ばす」こともできる。といっても、iPhoneが自動で設定したものに比べて「もっと明るくなる」わけではない。撮影時間が伸びるといっても「露光時間を伸ばす」わけではないからだ。合成のために撮影する写真のパターンが変わり、より微細な光を記録できるようにはなるものの、「自動」と極端に異なる写真になることは稀だ。
テストしてみた感触だと、街頭のある夜間の屋外で1〜3秒、月明かりだけの下で3秒から5秒、夜間に室内で照明をつけない状態でも7秒くらいまでしか撮影時間は伸びない。手動設定だとさらに撮影時間を伸ばせるが、それでも、夜間の照明のない室内で10秒がせいぜいだった。
Appleによれば、ナイトモードでの最長撮影時間は28秒。「本当に暗い場所で三脚を使い、iPhoneがぶれないようにする」とその設定になるらしい。暗い空に向けて十数秒以上の設定で撮影すれば、夜空の星も撮れるという。
試用期間中は天候とスケジュールの問題があって、さすが「iPhoneで星を撮るチャレンジ」はできなかったが、いつか試してみたいと思っている。
その5:「スクエア」「16:9」で撮影してしまっても大丈夫
スマホのカメラには「1:1(スクエア)」や「16:9」といった縦横比での撮影機能がある。
だが、ぶっちゃけあまり使われていないのではないだろうか。
元々の写真は4:3なので、スクエアや16:9では、その写真を「カットして撮影する」ことになる。カットした部分は写らない。だったら、最初から4:3で撮影しておいて、使う時にトリミングした方が安全だ。
それが、iPhone 11ではちょっと変わる。
撮影の設定を変えて「スクエア」で撮ってみよう。そして、その写真を「トリミング」機能で加工しようとする。すると、スクエアな写真の上下にぼんやり、カットしたはずの「フレームの外側」が見えないだろうか。
上下にぼんやり「フレームの外側」が見えるのに注目
仕組みは簡単。実はこれ、フレーム縦横比の設定にかかわらず「4:3で写真は記録」し、フレーム設定に基づいて「マスク」して表示しているのだ。だから、あとからトリミング位置を変えることも、縦横比を変えることもできるのである。
その6:映画を見る時の「音」がすごい
iPhone 11 / 11 Proシリーズともに、スピーカーが「空間オーディオ」に対応した。これは具体的にはどういうことかというと、映画やドラマの配信でも使われているオブジェクトオーディオ規格「Dolby Atomos」に対応した、ということだ。そしてそれだけでなく、5.1 / 7.1chといったサラウンドで収録された音声のデコードにも対応した、ということである。
結果的に、それらの規格に対応した映画やドラマを見ると、音の広がりがまったく違う。iPhone XS Maxで聞くと左右に音が動くものの平板な感じだったものが、iPhoneをとりまくように音が広がり、細かな位置の違いまではっきりとわかるようになる。スマホ内蔵のスピーカーによる体験としては、最上級のものではないか。
こうした音質・画質面での強化は、Appleが「自社で映像配信を行う」からこそ効いてくる。11月にスタートする定額配信の「Apple TV+」はもちろん、単品レンタル・販売の「iTunes Store」でも、Dolby Atomosは活用されている。そうしたコンテンツを気軽に視聴する環境としての意味合いがあるのは大きい。
ちなみにiPhone 11でも画質は良いが、iPhone 11 Proシリーズの有機ELは画質がさらに良い。iPhone XS Maxに比べ、輝度と発色の向上が明確で、特にHDR対応の映像を見た時の感じがかなり異なる。「スマホで映画やドラマを見るが、体験にこだわりたい」なら、iPhone 11 Proシリーズの方をおすすめしたい。
その7(おまけ):パッケージまで「カメラ推し」
これまで、iPhoneのパッケージには「ディスプレイを表にした」写真が使われてきた。そして、iPhoneもディスプレイを表にして箱に入っていた。
だが、iPhone 11もiPhone 11 Proシリーズも、パッケージにはディスプレイ面ではなく、カメラを強調するように背面が写っている。
iPhone 11(グリーン)とiPhone 11 Pro Max(ミッドナイトグリーン)のパッケージ。いずれも背中を向けて写っている
そして、パッケージを開封すると、こちらにカメラを向けた状態で入っているのである。これはiPhoneとしては初めてのやり方だ。
そして上箱を見ると、ご丁寧にカメラの部分だけ裏が凹んでいる。出っ張りをキャッチし、中でガタガタしないようにしているのだ。今回Appleは、ここまでこだわって「カメラ推し」なのである。
箱をあけるとカメラとご対面。むせる。上箱も、カメラのでっぱりが邪魔にならないように凹んでいる
