スパコン「京」16日運用終了 後継「富岳」21年稼働目指す
理化学研究所のスーパーコンピューター「京(けい)」(神戸市)は16日、大学などの研究者や企業による利用を終える。データのバックアップなどを経て、30日にシステムを停止する。2021年をめどに、後継機の次世代スパコン「富岳(ふがく)」を稼働させる予定だ。
京は06年に開発が始まり、1秒間に1京(1兆の1万倍)回の計算をこなすことにちなみ命名された。09年の民主党政権下の事業仕分けで「2位ではダメなのか」と予算を一部削られたが、約1111億円が投じられて12年9月に本格稼働した。開発研究段階だった11年、スパコンの計算速度を競うランキングで世界1位を獲得している。
理研によると、延べ約1万1000人の研究者、200社以上の企業が使用した。巨大地震の揺れと津波、地殻の動きを同時に予測できるソフトウエアの開発や、台風の発生を高精度で予測する研究など防災研究を発展させた。また、医療分野でも、心臓をコンピューター上で分子レベルで再現し、病因の解明や手術方法の選択につなげる研究など多くの成果を出し、約1300本の学術論文に貢献した。
しかし、スパコンの開発競争は激しく、今年6月公表のランキングで京は世界20位に後退した。上位は中国や米国のスパコンが占める。
富岳は14年から理研と富士通が共同開発し、計算速度は現在の世界最速スパコン「サミット」(米IBM社)の2倍超となる1秒間に約40京回を見込む。シミュレーションでの性能は最大で京の100倍以上となる予定だ。世界1位を奪還できる可能性もあるが、20年代のスパコンは京の100倍以上の速度の「エクサ級」が主流になると予測され、楽観はできない。
政府は「富岳」を用いて行う研究として、健康長寿社会の実現、防災、エネルギー問題など九つの重点課題を挙げている。【松本光樹】