iOS 13では位置情報追跡アプリを可視化。地図情報と「なぜ追跡しているのか」を表示

iOS 13では位置情報追跡アプリを可視化。地図情報と「なぜ追跡しているのか」を表示

アップルは今月初めのWWDC19にてプライバシー保護の姿勢を強く打ち出していましたが、次期メジャーバージョンiOS 13ではバックグラウンドで位置情報を送信するアプリが可視化されていると報じられています。米アップル関連情報サイト9to5Macによれば、開発者向けiOS 13ベータ版では、アプリがバックグラウンドでユーザーの位置情報を使用しているとき、ポップアップ通知を表示。この通知には特定のアプリが追跡した位置データが地図付きで表示されるとのことです。

同サイトがスクリーンショットを例示したのは、TeslaアプリとApple Storeアプリの2つ。通知には地図に加えて、なぜそのアプリが位置情報を追跡しているのかの論拠も提示されています。

たとえばTeslaの場合は「あなたの車に近い地域を表示し、サポート車のPhone Key(車のキー代わりとなるスマホ)を最適化するために位置情報を使用しています」と表示。そしてApple Storeアプリでは「私たちはあなたがどこにいるかに応じて関連製品や機能、そしてサービスを提供します」と説明されています。

iOS 13ではこうしたポップアップが定期的に表示されるとのこと。WWDC19では、これまでアプリに対する位置情報の使用許可は「常に許可」「許可しない」「このAppの使用中のみ許可」と3つだったところに、新たに「1回だけ」許可も追加されると公表されていました。その後、アプリが位置情報を必要とするとき、改めてユーザーに許可を求めるわけです。

先日のWWDC19ではアップルは「Sign In with Apple」ほか、ユーザーの匿名性を強化して個人データを第三者に利用させない姿勢をアピールしていました。こうした「攻めのプライバシー」により、FacebookやGoogleといったユーザー情報を広告収益に繋げる企業との対立をますます深めていくのかもしれません。

「iOS 13」でプライバシー保護を強化するApple 個人データからFacebookとGoogleを遠ざける新機能も

米Appleが6月3日(現地時間)に開催した開発者会議「WWDC 2019」の基調講演はご覧になりましたか? 米Googleの開発者会議「Google I/O 2019」より30分も長かったのですが、長さを感じさせない盛りだくさんな内容でした。

 Google I/Oではかなり「プライバシー」を前面に打ち出していましたが、WWDCではプライバシーは通奏低音のように流れていました。

 Googleのスンダー・ピチャイCEOがI/Oで「プライバシーはぜいたく品じゃない」とAppleに当てこすったことについて、ティム・クックCEOが応酬するかなと思ったら、素通りでした。

 ただし、新機能の紹介の度に、「当然だけど、データは集めませんから」と一言入りました。The Independentのインタビューで「ピチャイさんのあの当てこすりには驚きましたよ」と語ったソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長のクレイグ・フェデリギさんは、今秋リリース予定の「iOS 13」を紹介する際、「プライバシーは基本的人権だから」と言いました。

 これは、iOS 13の以下の3つのプライバシー関連機能を紹介したときの言葉です。

1. サードパーティーアプリによる位置情報収集の規制

2. GoogleやFacebookのアカウントでのログインに代わる「Sign in with Apple」

3. ホームカメラの録画をメーカーのクラウドに保存しない「HomeKit Security Video」

 全部、サードパーティー、特にFacebookとGoogleをユーザーデータから遠ざけるものです。

 1は、サードパーティーはユーザーの位置情報にアクセスする必要がある度に許可を求めるというもの。これはめんどくさいなと思ったらユーザー側で許可もできるけれど、そうするとバックグラウンドトラッキングについてのレポートが届く。こうした規制をくぐりぬけて端末の近くのWi-FiスポットやBluetoothから位置情報を割り出そうとすることも(方法は説明しなかったけど)ブロックします。

 2のSign in with Appleは、GoogleやFacebookが2007年くらいから提供している「OAuth」採用のログインサービスのように、初めて使うサービスへのログインで新たにユーザー名やパスワードを作らずに、手持ちのアカウントを使う機能です。OAuthによるログインは手間が省けて便利ですが、アカウントの元締めであるGoogleやFacebookに個人データをもっていかれるからプライバシー的によろしくない、ということです。

 Sign in with Appleは、対応するサービスに「Face ID」を使って名前だけでログインする機能。メールアドレスを求めるサービスに対しては、その度に生成する新しいメールアドレスが提示され、それを選ぶとサービスからのお勧め情報などはそのアドレス経由で自分のメールアドレスに転送されます。サービスごとに違うアドレスだから、お知らせの拒否も簡単です。

 3のHomeKit Security Videoは、ホームカメラで録画したビデオを暗号化してユーザーの「iCloud」に保存するというもの。ビデオの解析はクラウド上ではなく、カメラとつながっている「iPad」か「Home Pod」か「Apple TV」で行います。つまり、録画はAppleも、カメラメーカーも見られません。暗号化された録画の保存分はiCloudの容量とは別にカウントしますが、iCloudの有料プランが必要。まずはNetatmo、Logitech、Eufyから対応するカメラが発売される予定です。

 この他、「watchOS 6」のヘルスケア関連アプリのデータは全て「Apple Watch」側で暗号化されるし、iCloudにバックアップするときも暗号化されるから、安全だという話や、騒音レベルがこの90dB(このレベルの騒音を週に4時間聞くと耳に悪い)を超えると警告するアプリ「Noise」も、周囲の音を集めてるわけじゃないからね、と一言。

 アクセシビリティ機能として紹介した、音声でmacOSとiOSデバイスを操作する機能の紹介でも、プロセスは全てデバイス側で完結し、クラウドにデータが保存されることはないと付け加えました。

 Googleも「オンデバイスAI」や「フェデレーションラーニング」などの技術で、データを集めずに便利にする方法も開発していますが、Appleと違って主な収入源は広告なので、ユーザーデータを全く集めないというわけにはいきません。

 この基調講演だけで、何だかAppleにまかせておけばプライバシーは安心な気がしてきました。でも広告で成り立つ無料アプリの開発者たちは、ターゲティングが難しくなるので大変そうです。Androidアプリは無料でもiOSアプリは有料にするとか、いっそiOSアプリはやめようか、となったりしないといいのですが。

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