中国の通信機器大手、華為技術ファーウェイ、世界市場から姿消す可能性も 米措置で出荷急減、日本に悪影響も

ファーウェイ、世界市場から姿消す可能性も 米措置で出荷急減

トランプ米政権が事実上の輸出禁止規制を導入した中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]について、アナリストの間で今年の出荷は最大24%減少し、将来的に同社のスマホが世界市場から姿を消す可能性があるとの見方が出ている。

米中通商摩擦が高まる中、米政権は今月15日、ファーウェイが米政府の許可なく米国の重要な技術を購入することを禁止するとともに、国家安全保障を理由に米国の通信ネットワークから同社の製品を事実上排除する措置を発表。 措置は米国の技術もしくは材料を少なくとも25%利用している製品とサービスに適用されるため、米国以外の企業も影響を受ける可能性があり、これまでに米アルファベット<GOOGL.O>傘下のグーグルのほか、ソフトバンクグループの英半導体設計会社アームがファーウェイ向け供給、および製品アップデートを停止すると明らかにしている。

ファーウェイは現在、数量ベースで世界第2位のスマホメーカー。フボン・リサーチ・アンド・ストラテジー・アナリティクスによると、米政府が規制を解除しなければ、同社のスマホ出荷は2019年は4─24%減少する可能性がある。

ストラテジー・アナリティクスのスマホ担当ディレクター、リンダ・スイ氏は、20年の出荷は23%減少すると予想。「ファーウェイが米グーグルへのアクセスを失えば、同社のスマホは20年に欧米から姿を消す可能性がある」と述べた。ただ中国市場の規模を踏まえると、ファーウェイが破綻することはないとの見方を示した。

フボン・リサーチは従来、ファーウェイの19年のスマホ出荷台数は2億5800万台になると予想していたが、現在は最悪のケースで2億台にとどまるとの見方を示している。

実際、価格比較サイトのプライススパイによると、米政府が事実上の輸出禁止規制を発表してからファーウェイの機器に対するクリック数は減少している。 

IDCによると、ファーウェイの世界シェアは約30%。18年の出荷台数は2億0800万台で、このうち半分が中国外での出荷だった。同社は欧州を上位機種の重要市場として位置付けている。

ファーウェイはこれまでも、自給自足を可能にするための技術を開発していると表明。ただ、必要な主要部品や知的財産権は米国を避けて通れないため、ファーウェイのこうした主張には疑問が出ている。 

上海のコンサルタント会社、イントラリンクの半導体産業専門家、スチュワート・ランダル氏は、ファーウェイは最終的には数千人規模の従業員を解雇する必要に迫られ、「いつかは世界市場から姿を消す」との見方を示した。 

アナリストは、ファーウェイ製スマホの潜在顧客が上位機種では韓国サムスン電子<005930.KS>や米アップル<AAPL.O>、中位機種では中国のOPPO(オッポ)やVIVO(ビボ)に乗り換える可能性があると予想。IDCの世界スマホ市場調査担当、ブライアン・マー氏は、「ファーウェイは競合社が獲得できる市場シェアを残すことになるが、欧州などでの強みを踏まえるとサムスンが最も恩恵を受ける可能性がある」と述べた。 

このほか、ジェフリーズのアナリスト、エジソン・リー氏は、ファーウェイに対する事実上の輸出禁止規則で中国の次世代通信規格「5G」ネットワーク構築が遅れる可能性があるとの見方を示した。

ファーウェイ騒動 日本に悪影響も

 ファーウェイショックが日本のスマホ業界を直撃している。

 米商務省は5月15日(米国時間)、ファーウェイと関連企業68社を、同省産業安全局の「エンティティリスト」に加えた。これにより、リストに記載された企業に米国から製品やサービスを輸出する場合、産業安全局の承認が必要となったのだ。結果としてファーウェイと米国企業との取引は絶たれることになる。

 日本のスマホ業界関係者の頭をよぎったのが、昨年のZTE騒動だ。ZTEも同様の措置となり、製品のアップデートができなくなるなどの被害を受けた。

 そんな中、ファーウェイとグーグルはいち早く「既存のファーウェイ製品に対してアップデートを継続する」と発表。

 5月21日にはファーウェイの日本法人がP30シリーズの新製品発表会を開催したのだった。

●「HUAWEI P30」普通に買えたが

 「セキュリティアップデートは継続し、アフターサービスに影響しません。安心してご購入、ご利用ください」

 同社のデバイス部門、日本・韓国リージョンプレジデントの呉波氏はあらためて、製品に対するセキュリティアップデートやアフターサービスについて言及。消費者に安心してファーウェイ製品を使ってほしいとアピールした。

 しかし、その翌日、事態は急変する。

 KDDIとソフトバンクが24日発売予定のHUAWEI P30 liteの販売延期を発表したのだ。これに続く形でNTTドコモも「今夏発売予定」になっていたHUAWEI P30 Proの予約受付を停止した。確かにいずれもファーウェイの製品ではあるが、「キャリアの商品」という扱いとなるため、販売に関してキャリアが責任を負う部分も出てくる。キャリアとしては「本当に今後も継続的にアップデートが提供されるか」という確証が得られないため「いったんは様子見」として発売延期を決断したようだ。

 さらに本来であれば「SIMフリー」で、メーカーが責任を負うはずのMVNO向け製品も、MVNOが相次いで販売延期を発表した。

 そして、HUAWEI P30、HUAWEI P30 liteの発売日である5月24日。

 ビックカメラやヨドバシカメラなどの家電量販店では通常通り、HUAWEI P30とHUAWEI P30 liteが店頭に並んだ。ネット通販購入者には「本当に購入するのか」という確認のメールが送信されたようだが、購入を希望する返信を送れば発売日にはきちんと届いたようだ。

 筆者も、5月24日の午前10時前、都内にあるビックカメラに開店前に並び、HUAWEI P30を購入してきた。

 HUAWEI P30の売り場にはグーグル公式アンドロイドツイッターアカウントがつぶやいた「アメリカ政府の要求に従いながら、Google PlayやGoogle Playプロテクトのセキュリティのようなサービスが、既存のファーウェイ端末上で引き続き機能することを保証いたします」という文言が記載された紙が一枚掲示されていたのみで、特に変わった様子はなかった。

 店員さんから「本当に購入します?」と確認されることもなく、通常通りのオペレーションで購入することができた。

●日本企業と8000億円規模の取引

 5月21日の新製品発表会で、ファーウェイのデバイス部門、日本・韓国リージョンプレジデントの呉波氏は「ファーウェイは、米商務省産業安全保障局の決定に反対する。誰の得にもならない。巨額な経済損失をもたらし、米国の10万人におよぶ雇用に影響する。グローバルのサプライチェーンに影響する。ファーウェイは、できるだけ早く解決策を見つけて影響を減らしたい」と力強く語っていた。

 まさに「誰の得にもならない」というのが、今回の騒動を端的に表しているだろう。

 当然のことながら、ファーウェイのブランドは毀損し、世界第2位のシェアは落ちるだろう。そこで困るのは、ファーウェイに部品を収めている日本メーカーだ。今年、ファーウェイは8000億円規模で日本メーカーから部材を購入すると言われている。この売り上げが落ちれば、日本メーカーにとっては大打撃だ。

 また、ファーウェイはグーグルとAndroidを共同開発してきた。ファーウェイがAndroidのコミュニティから抜ければ、Androidの進化は停滞しかねない。ファーウェイとグーグルはこれまで手を取り合ってAndroidを開発していたのに、今回の騒動でファーウェイが独自OSを作るとなれば、世界的にAndroidのシェアが落ちることになる。Androidでグーグルのサービスを使う人が減れば、グーグルの売り上げも落ちるのは間違いない。

 また、ファーウェイは5Gの特許を相当数取得している。ファーウェイが基地局で世界から排除されれば5Gの普及も遅れることだろう。本来ならファーウェイがいることで、安価で技術的にも先進的な基地局が普及するはずだったのに、ファーウェイが選択肢から外れれば、キャリアの設備投資額は高騰化し、しわ寄せはユーザーの通信費に跳ね返ることになる。

 そして、最も悪影響を受けるのは我々ユーザーだ。

●日本のユーザーが選択肢を奪われる

 ファーウェイのスマホは、コストパフォーマンスに優れながら高性能であることから人気を高めていった。特にカメラにおいては、仕上がり具合に好き嫌いがあるかもしれないが、他社に比べて秀でたパフォーマンスを発揮する。

 現在ファーウェイは日本において、2017年と2018年にはSIMフリースマホ市場で第1位のシェアを誇るだけでなく、直近の2019年第一四半期のシェアでは第3位にまで登りつめている。

 ファーウェイといえばSIMフリーのイメージが強いが、2年ぐらい前からはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクといったキャリア向け製品も定番化してきた。

 かなり前にもキャリア向け製品を手がけたことがあったが、当時は品質もブランド力もいまいちで、すぐに取り扱われなくなってしまった。しかし数年で世界的にブランド力を上げ、品質も高まり、技術的にも他社を圧倒していたことから、SIMフリー市場で圧倒的な人気を獲得、さらにキャリアでも扱われることになった。

 日本ではNTTドコモも新料金プランを導入したことで、3キャリアで「分離プラン」が一般的になってくる。

 通信料金と端末代金が分離されるため「端末もできるだけ安いもの」が好まれるようになる。そんな中、ファーウェイが提供するミドルクラスの製品はまさに分離プラン時代には最適な1台になるはずであった。だからこそキャリアがこぞってファーウェイ製品を導入してきたわけだ。

 まさに「ファーウェイ製品が買えない」というのは、日本のユーザーの選択肢を奪うことになっている。

 トランプ大統領には、なんとか考えをあらためてほしいし、習近平主席との交渉がまとまり次第、キャリアとMVNOには早急に発売延期を見直してほしいものだ。

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中国排除、もろ刃の剣=米先端産業に影-ファーウェイ問題

先端技術分野で中国排除を狙うトランプ政権の姿勢は米企業にも影を落としている。

 華為技術(ファーウェイ)への禁輸措置は、同社との取引額が大きい企業の業績を直撃。資金調達や技術者確保にも影響が及んでおり、米国にとって「もろ刃の剣」でもある。

 スマートフォン用部品を手掛けるルメンタム・ホールディングスとコルボは、ファーウェイへの禁輸措置を受けて、それぞれ業績予想を下方修正。両社ともファーウェイ向けの出荷が直近で売上高の15%程度に上り、「いつ再開できるか予測できない」と口をそろえる。

 文書を高速スキャンして保存する技術を持つベンチャー企業リップコードは、米政府が対米投資審査を厳格化したことを受けて外国からの出資割合を制限した。フィールディング最高経営責任者(CEO)は「何倍ものペナルティーとして跳ね返ってくるリスクがある」と語る。

 同社は既に百度(バイドゥ)など中国企業から出資を受けている。ただ、どの投資家であれば問題がないか事前に知るすべはなく、「とても恐ろしい」と警戒する。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、輸出規制の対象となる技術を扱う職に外国人を雇う際に必要な米当局の許可について、中国人への承認が停滞していると報じた。「高度技術職の人材層が薄い半導体業界には特に痛手」とする業界関係者の声を伝えている。

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