AI泣かせ「重箱読み」地名、兵庫・三田市内で地図アプリ使うと、ことごとく「ミタ」

AI泣かせ「重箱読み」地名  兵庫・三田市内で地図アプリ使うと、ことごとく「ミタ」

 「ミタ市役所への経路の案内を開始します」-。スマートフォンで音声読み上げ機能付きの地図アプリに「三田(さんだ)市役所」と打ち込んで検索すると、こんな案内が流れてきた。慶応大が本部を置く東京の「三田(みた)」と間違えられるのは、よくある話。しかし、最先端の情報端末まで誤るとは…。理由を探ると、そもそも「さんだ」は読み方として異質という事情が見えてきた。

 ミタ警察署、JRミタ駅、関西学院大学神戸ミタキャンパス…。

 米アップル社製スマホ・アイフォーンの地図アプリで、経路案内の機能を使って兵庫県三田市内の施設名を検索してみる。すると位置は正しいものの、三田市役所と同様、ことごとく誤読した。

 そもそも東京の「三田(みた)」は市名ではなく、港区内の地名。全国で兵庫のほかに三田市と表記する自治体はなく、「三田市役所」も一つしかないのに。試しに「三田市」と打ち込んでみると…「さんだし」。あれ、今度は正解だ。

 人工知能(AI)に文字を読ませる電子機器を開発する大手メーカーHOYA(東京)は「多数派の読み方に埋もれた可能性がある」と指摘する。どういうことか。

 「三田(さんだ)市」はシステム開発の段階で単語登録されているとみられ、正しく「さんだし」と読み上げられる。ただ、女優の三田佳子さんや三田寛子さんのように、人名を含め「三田」は「みた」と読むのが一般的。このため、三田の後に「市役所」「警察」など別の単語を付けると、多数派の「みた」になってしまうようなのだ。アップル社日本法人にも問い合わせたが、返答はなかった。

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 関西学院大の大鹿薫久(おおしかただひさ)教授(67)=国語学=は、読み方の異質性を指摘する。地名や人名の場合、1文字目の漢字が音読みなら次も音読み、訓読みなら次も訓読みが一般的という。一方、「さん・だ」は音読みの「さん」と訓読みの「だ」が交じる。「音訓交じりの『重箱読み』は異質。AIでもてこずるでしょう」

 実際、全国で「三」が頭に付く自治体を調べたが、重箱読みの例は見当たらなかった。例えば、埼玉県の「三郷市」は、訓読みを重ね「み・さと」市。同じ表記でも奈良県の「三郷町」は、音読みを重ねて「さん・ごう」町と読む。

 地名でも、例えば神戸の「三宮(さんのみや)」は重箱読みのように思うが、「三」と「宮」の間に「の」が入る。京都の「三条河原(さんじょうかわら)町」は、音読みの「三」と訓読みの「河原」に「条」が挟まる。音訓交じりの場合、「の」「条」など番号を意味する文字が入るケースが多いという。

 三田市によると、地名の由来は諸説あるが、市内の古刹(こさつ)・金心寺(こんしんじ)に伝わる室町時代の一文がよく知られている。「当地を松山の庄と云(い)う。之(これ)を金心寺三福田(さんぷくでん)により三田と改む」

 三福田とは仏教の教えで「恩田(恩を忘れぬ心の田)」「敬田(人を敬う心の田)」「悲田(困った人を助ける心の田)」。この地にはそんな三つの田があるとして改名されたとの説がある。

 それなら訓読みの「みつた」でよかった気もするが…。三田市は「江戸時代の三田(さんだ)藩など、古くから親しまれてきた地名。読みにくさも愛嬌(あいきょう)と捉え、全国に知ってもらいたい」とする。

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■近年は「神戸三田」が増えてます/「サンタ」読みでPRも

 三田(さんだ)市内では近年、名称に「神戸三田」を冠する施設が目立っている。「神戸」の知名度を生かす効果に加え、東京・港区の「三田(みた)」との混同を防ぐ狙いもあるようだ。

 元祖とされるのは、1988年にできた中国自動車道「神戸三田インターチェンジ」。場所は神戸市北区だが、すぐ隣の三田の地名も入った。これにヒントを得たのか、三田市内でもその後、「神戸三田ゴルフクラブ」、野外活動施設「神戸三田アウトドアビレッジTEMIL(テミル)」など神戸を付けるパターンが相次ぎ登場した。

 今年1月には「三田ホテル」が「ザ・セレクトンプレミア神戸三田ホテル」に改称。旧名時代には、関東にあると間違えて宿泊予約した人もいたといい、担当者は「『神戸』を付け、場所をイメージしてもらいやすくなった」とする。

 一方、知名度アップを模索する三田市は2015年度から、毎年12月になるとサンタクロースにあやかり「サンタシティ」と称してPR。東京で市のラッピングバスを走らせた年もあったほか、神戸電鉄は昨年12月、クリスマスまでの期間限定で三田駅を「サンタ駅」に変更した。(山脇未菜美)

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