大きく路線変更した「Sony Xperia 1」のカメラ その中身を解説

大きく路線変更した「Xperia 1」のカメラ その中身を解説

 Xperia 1の体験会が開催されたのは既報の通りだが、そこでカメラ機能に特化した説明会も開催されたのである。

 「そこで出てきた新事実!」という派手な話はないけれども、従来のXperiaのカメラから大きく路線変更されたのがよく分かったので、その辺の話を中心にお伝えしたい。

●トリプルカメラに進化、1200万画素の理由は?

 カメラが3つ並んだトリプルカメラの構成自体は今や珍しくないのだけど、まず目に付いたのが画素数。Xperia 1の3つのカメラは全てが1200万画素なのである。

 最近のスマートフォンでは珍しくも何ともないけど、今までXperiaといえば高画素が代名詞みたいなところがあったから、ちょっと意外だ。

 2013年に登場した「Xperia Z1」は2000万画素(ちなみに同じ年に出たiPhone 5sはまだ800万画素だった)といち早く高画素のセンサーを搭載。2015年の「Xperia Z5」では2300万画素にまで画素数を増加。2017年の「Xperia XZ1」で1900万画素に落ちたものの、ずっと高画素カメラの雄、みたいな存在だったのである。

 それが今回はトリプルレンズカメラの全てが1200万画素。

 ソニーモバイルの担当者に「画素数が思い切り減ったんですが?」と尋ねてみると、でも「メインカメラはデュアルPD(フォトダイオード)センサーだから、実際には2400万なんですよ」だという。

 イメージセンサーは、光を検知するフォトダイオードを無数に(といっても1200万個とか2000万個とか)びっしり並べたもの。

 デュアルPDは1つの画素にフォトダイオードを2つ割り当てた構造で、既に、キヤノンがデジタル一眼で「デュアルピクセルCMOS」を、サムスンも「デュアルピクセルセンサー」を搭載したイメージセンサーを採用しているので目新しくはないが、2つのうち片方をAF時のセンサーとして使うのだ。

 それにより、AFはより高速になる。

●3つのカメラの役割

 3つのカメラのうち、一番上がメインカメラで、26mm相当のレンズを搭載。レンズのF値は1.6。1220万画素のデュアルPDセンサーで、光学式手ブレ補正を搭載している。ソニーもやっと光学式手ブレ補正を搭載してくれたかという感じだ。このセンサーはソニーが開発したメモリ積層型になっており、超高速読み出しに対応。

 真ん中は望遠やポートレート用のカメラで約1220万画素、こちらも光学式手ブレ補正付き。レンズは52mm相当(メインカメラのちょうど2倍)でF2.4。

 これら2つのカメラは連動して動作し、説明会では全く触れていなかったが、背景ぼかし機能も搭載されている(その場合は望遠カメラの画角になる)。

 3つ目は超広角カメラ。ちょっと周辺がゆがむタイプの超広角レンズで、16mm相当でF2.4。こちらには手ブレ補正はなし。

 他の2つとはちょっと扱いが違っていて、26mmから52mmまではデジタルズームを使ってシームレスにズーミングできるが、16mmだけはそれがなく、独立したカメラとして動作するのが面白いところだ。

 各カメラの連携は実機が来たときにちゃんとチェックしたい。

●Xperia XZ3より4倍明るく撮れる理由は?

 カメラのもう1つの売りは「αシリーズ」でおなじみの瞳AFと秒10コマのAF/AE追従連写。

 スマートフォンの場合、被写界深度が深いので瞳AFと従来の顔検出の違いがそう出るとは思えないけれども、正確で高速なAFで「リアルタイム瞳トラッキング」を実現している。要するに、こちらに走ってくる人を撮るときも、瞳にピントを合わせたまま連写できるということだ。

 もう1つ、昨今のスマホカメラトレンドになっている暗所での撮影。これは「Xperia XZ3」比で4倍明るく撮れるようになったそうな。

 センサーの画素ピッチはXZ3(1920万画素)に比べて32%大きい1.4μmとなって、約3割増し。画素ピッチが大きいということは、1つ1つのフォトダイオードの面積がその分広いということなので、より多くの光を捉えられる。

 次にレンズがXZ3のF2.0からF1.6に明るくなって4.5割増し。最後にRAWノイズ低減処理と新しい画像処理エンジン「Bionz X for mobile」で2倍という計算。

 普通、イメージセンサーから来た信号をデジタルデータ(RAWデータ)に変換してから現像処理でノイズ低減を行う。RAWデータには必ずノイズが含まれているし、高感度で撮るとそのノイズがぐっと増えるので、うまくノイズを減らさなきゃいけない。で、RAWノイズ低減処理というのは現像処理の前にもノイズ低減処理をかけるという技術。

 4倍ということは、暗所での撮影にも強くなったこということだ。

 というところを見ると、とうとうXperiaもスマホカメラのトレンドに追従してきたか、と思えるわけだが、どうもそれだけではないらしい。説明会で尋ねてみても「それは違う」という。

●クリエイターのためのスマートフォンとは

 今回の発表で何度も出てきたのは「クリエイティビティの実現」や「クリエイターのため」という言葉、そして「好きを極めたい人々に想像を超えたエクスペリエンスを」というコピーだ。

 こうしたコンセプトが一番具体的に現れたのが、動画撮影機能だ。

 通常のカメラモードでは4K動画までしか撮れないのだが、専用アプリ「Cinema Pro」を使うと16:9ではなく21:9の「DCI-4K」で秒24コマで撮れる。DCI-4Kはデジタルシネマ用の規格で、通常の4Kが3840×2160ピクセルなのに対し、4096×2160ピクセルと少し横長なのだ。

 それを秒24コマというデジタルシネマと同じフレームレートで撮る。

 Cinema Proにはソニーの映画撮影用ビデオカメラ「CineAlta」の技術が生かされている。同シリーズのカメラ「VENICE」に合わせた画作りの設定8つを用意し、ホラーやコメディーなど内容に合わせて調整できる。アプリではVINICEと同じUI(ユーザーインタフェース)や用語を使い、VENICEと同時に使っても違和感ないという。

 有機ELディスプレイもBT.2020の色域に対応し、マスターモニターの技術による画質モードも持っており、映像製作の現場でサブモニターとして、あるいはサブカメラとして使える。あるいはハイアマチュアがデジタルシネマのような映像作品を撮るのに使うことを想定している。

 Xperia 1の体験会から感じたのは、映像や写真やその他コンテンツを視聴して楽しむスマートフォンではなく、クリエイトするスマートフォンを目指したいということ。

 さらに今回はα7シリーズと連携したプロ向けのワークフローも発表された。

 私が知っているのはスチルカメラの世界だが、スチルカメラの世界ではソニーはいち早く廉価な普及型デジタルカメラではなく、高価だが高性能なハイエンドカメラ(その代表がα7だ)に軸足を移して成功したわけで、Xperia 1もそういう方向を向いたハイエンドなシリーズを目指すのだろう。

 今のスマホカメラはデジタル処理によって誰でも見栄えのする写真を失敗なく撮れる方向がトレンドだが、そちらの方向へは行かないという。「クリエイターのためのハイエンドスマートフォン」という万人向けとは言いづらいジャンルだけれども、ソニーらしいスマートフォンになりそうで、実機を触るのが楽しみである。

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