「100円ショップ」は時代遅れ!?「300円」ショップが急成長している理由
100円ショップが300円ショップに取って代わられる日は来るのか――。このところ頻繁に目にするようになった300円ショップ。この影響もあってか、100円ショップ大手の業績は低迷している。「デフレモデル」の代表格だった100円ショップだが、時代は100円から300円に移行し始めているのかもしれない。(流通ジャーナリスト 森山真二)
● 300円ショップが 急成長している
都内にあるショッピングセンター(SC)。その一角だけ黄色い声でにぎわっている店舗がある。300円ショップの「ミカヅキモモコ」だ。
コンビニを一回り大きくしたような店内は、若い女性であふれんばかり。店内の通路は身をかわさないとすれ違えないほどだ。ウワサには聞いていたが確かに人気だ。
商品を見ると、100円ショップのような品数はない。しかし、商品をよく見ると、いろいろなキャラクターがデザインされていたり、シンプルながら100円ショップとは違ったおしゃれなデザインの生活雑貨があったりする。「3COINS(スリーコインズ)」という店舗ではドラえもんやポケモンなどと子どもに人気のキャラクターをあしらった商品もあるから、300円ながらコストパフォーマンスは悪くない。
「おしゃれ」、「かわいい」という付加価値をつけて100円ショップの商品に飽き足らなくなった顧客層を吸収している形だ。
300円ショップ急拡大の代表格は複数のアパレルブランドを持つパルグループホールディングスが展開している「スリーコインズ」、また「CouCou(クゥクゥ)」、「ミカヅキモモコ」などがあるが、その堅調な勢力拡大は続いている。
● ビジネスモデルは 生活雑貨が中心
300円ショップのビジネスモデルは生活雑貨が中心、しかも商品は毎日新商品を入荷するチェーンも多く、定番商品もあるが、売り切れご免の商品の比率が高いとみられる。商品のサイクルは短く売り場に新鮮感を出している。
300円ショップ代表格の「スリーコインズ」の売上高は2017年2月期で218億円だったが、18年2月期は11.4%増の243億円、また19年2月期の上期(18年3~8月)は前年同期比9.9%増の135億円とこのところ2ケタ前後の伸長を続けている。
最近は業態も「スリーコインズ」だけでなく、「スリーコインズプラス」やエキナカ中心の「スリーコインズウープス」や「スリーコインズステーション」などといったように利用シーンなどに応じて業態を広げている。スリーコインズの店舗数は18年8月時点で約190店という状況だ。
● 300円ショップは 黎明期から成長期に入った
300円ショップは100ショップと違って粗利益率の低い食品の割合は少なく、チラシを大量に配布するスーパーとも違う。値引き販売をせず300円という定価販売のため販売効率は高い。
パルグループの雑貨部門の19年度上期(18年3月~9月期)の営業利益は13億円で前年同期比4.9%減。しかし、これはスリーコインズが原因ではなく、他の雑貨専門店が不振だったことが主因。
雑貨部門の売上高が179億円だから大半の利益をスリーコインズが稼いでいるとみられ、営業利益率は10%を超えている形だ。
この3コインズを筆頭に「クゥクゥ」は約35店、「ミカヅキモモコ」の店舗数も70店超になっている。さらに、パルグループはスリーコインズのほかにもアクセサリーなどファッション雑貨の「Lattice(ラティス)」という業態の展開を始めており、300円ショップの業態分化を進めている。
つまり黎明期から成長期に入ったといえるし、まだまだ伸びしろはありそうだ。
100円ショップ業界の 業績は振るわない
300円ショップが成長期に入る一方で、均一ストアの主役の座にある100円ショップだが、このところの業績は振るわない。
100円ショップの業界ランキングは1位の大創産業の「ダイソー」で18年3月期売上高が4548億円、国内3278店舗(18年3月時点)、2位のセリアが19年3月期の売上高予想が1710億円、店舗数は1506店(18年3月末時点)、さらにキャンドゥが18年11月期の売上高707億円、店舗数が1005店(19年3月末時点)となっている。
100円ショップは単品を大量に仕入れ、量を拡大して規模の利益で仕入れ原価を下げる仕組みだから、店舗数の拡大を先行してきたきらいはある。
しかし、そんな拡大戦略も300円ショップの台頭、もっといえば消費者の購買行動の変化を背景に転機を迎えるといえるのかもしれない。
● 上場企業の 「セリア」や「キャンドゥ」の動向
ダントツの大創産業が展開する「ダイソー」は非上場のため、業績はつかめないが、「セリア」や「キャンドゥ」は上場しているので業界の傾向はつかめる。
セリアの19年3月期の第2四半期(18年4月~9月)の決算は売上高が前年同期比7.0%増の833億円、営業利益は同2.0%減の79億円である。
会社の説明の人件費の上昇で利益が減少したというのは分かる。どこの小売業も人件費の上昇に苦しんでおり、とくにアルバイト・パート比率が高い業態は収益を直撃されているからだ。
しかし、セリアが転機を迎えている様子は、前期、前々期までの決算で伸び率を見ると顕著だ。
17年3月期の売上高は前期比11.0%増の1453億円、営業利益は同26.3%増の151億円、18年3月期の売上高は同9.5%増の1591億円。営業利益は同8.6%増の164億円と2ケタの高い成長が続いていたからだ。
人件費が圧迫したとはいえ、19年3月期第2四半期の急減ぶり。しかもセリアの既存店の客数が減少していることは見逃せない。18年4月以降、前年を上回ったのは6月だけで、18年9月まで前年同月前年割れである。売り上げは新規出店を続ければ伸びていく。しかし、既存店の客数の前年割れは深刻である。
またキャンドゥはもっと深刻で17年11月期、18年11月期と2期連続で減益、19年11月期も減益を見込んでいる。
● 消費者の購買行動の変化は 顕著に出ている
「300円ショップと、100円ショップでは客層は違うでしょ」というご指摘があるかもしれないが、低価格の均一ストアという“くくり”では同じ。どちらも若年層の女性をメインターゲットにしているのは間違いない。
まだ300円ショップは店舗数全体で100円ショップの足元にも及ばないし、100円ショップでは4500億円の売り上げがあるダイソーという「巨人」も君臨している。
しかし、あれほど高成長を続けてきたカジュアル衣料専門店の「ユニクロ」の国内事業でも、19年8月期の上期(18年9月~19年2月)は減収減益。営業利益は23.7%減だ。
消費者の購買行動の変化は顕著に出ている。
よくデフレが続き節約疲れの反動が出始めているという指摘もある。少し良い物を求める心理的なインフレ状態をくすぐる300円ショップが、これから伸び、100ショップを凌駕(りょうが)するかどうか。今後の消費傾向を占うバロメーターになるかもしれない。
