「5G」免許交付 4キャリアのエリア、料金、端末はどうなる?
既報の通り、総務省の電波監理審議会は4月10日、同省から諮問を受けた「第5世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設計画の認定」について、原案を適当とする答申を行った。これを受け、同省は同日中に申請者に認定証(免許)を交付した。
周波数帯(帯域)の割り当てを受けた各キャリアは、どのように5G(第5世代移動通信システム)の通信サービスを展開していくのだろうか。
●商用サービス:各キャリアともに2020年上期までに開始予定
免許の交付を受け、各キャリアは全国に5G用基地局を設置できるようになった。総務省に提出された計画書によると、各キャリアは以下の時期に5Gの商用サービスを開始する予定を立てている。
・NTTドコモ:2020年春
・KDDIと沖縄セルラー電話(以下まとめて「KDDI」):2020年3月
・ソフトバンク:2020年3月頃
・楽天モバイル:2020年6月頃
多少の時期の前後はあるが、2020年前半までには各キャリアの5G商用通信サービスが始まることになる。
それに先立ち、NTTドコモでは9月から11月にかけて日本各地で開催される「Rugby World Cup 2019」の会場でのプレサービスを予定している。またKDDIは「2019年9月」(広報部)にトライアルサービス、ソフトバンクも「2019年夏以降」(広報室)にプレサービスを提供する予定となっている。
暑さが和らぎ始めた頃には5Gを間近で体験できる機会が増え、寒さが和らぐ頃合いにはさらに身近になるだろう。
●展開エリア:キャリア間で違いあり
今回の免許交付では、認定者に以下の条件が課されている。
・2021年度末(2022年3月31日)までに全都道府県で5G通信サービスを提供すること
・2024年4月10日までに5G基盤展開率(全国を10km四方のメッシュで区切った際のカバー率:計4464メッシュ)を50%以上にすること
この2点は計画提出段階における「絶対審査」の基準(最低要件)となっているので、各キャリアともに計画上はクリアしている。ただ、その詳細を見ると、キャリアによって目指す方向性に差が見られる。
2024年度末までに各キャリアが計画している全国の5G基盤展開率は以下の通り。
・NTTドコモ:97.0%(4331メッシュ)
・KDDI:93.2%(4160メッシュ)
・ソフトバンク:64.0%(2855メッシュ)
・楽天モバイル:56.1%(2506メッシュ)
少なくとも今回の割り当てにおいては、ドコモとKDDIは広範囲のエリア化を想定する一方で、ソフトバンクと楽天モバイルはエリアを広げることにそれほど積極的ではないと思われる。
5G基地局を束ねる機能を備えた「高度特定基地局」に視点を向けると、違う光景が見えてくる。2024年度末までに各キャリアが計画している高度特定基地局の全国展開数は以下の通り(かっこ内は関東総合通信局管内の展開数)。
・NTTドコモ:4331局(399局)
・KDDI:4160局(392局)
・ソフトバンク:2855局(325局)
・楽天モバイル:7948局(4419局)
総務省では高度特定基地局を「1メッシュに1つ」設置することを想定しており、ドコモ、KDDIとソフトバンクはそれに準拠した(メッシュ数と高度特定基地局数が一致する)計画を提出している。
一方で、楽天モバイルはメッシュ数の約3.2倍の高度特定基地局を設置する計画を立てている。しかも、その過半数を関東に設置し、東海・近畿でも他キャリアの倍以上の数を設置するようだ。ただ、地域別基盤展開率を見ると関東が58.4%、東海が57.1%、近畿が58.4%と他キャリアよりも低めの計画となっている。
楽天モバイルは東京23区、大阪市、名古屋市を中心とするいわゆる「三大都市圏」に“全振り”をした5Gサービスを展開しようとしていると思われる。
●基地局数:KDDIが総数でダントツ 楽天もドコモ超え
ただ、先述の基盤展開率はあくまでもメッシュベース。10km四方内に1局でも対応局があれば「カバーしている」と見なされてしまう。
5Gは現状、LTE(4G)よりも高めの周波数帯で展開されるため、電波の届く範囲が狭め。特に、ミリ波(30GHz超の電波帯域)に近い28GHz帯ではかなり“ピンポイント”なエリア展開を強いられる。そうなると、基地局の設置数も重要な要素となる。
各キャリアが提出した、2024年度末における基地局数計画は以下の通り。
3.7GHz帯及び4.5GHz帯(第1~第4帯域:3600~4000MHz)
・NTTドコモ:屋外8001局+屋内等3498局=計1万1499局(第2帯域を獲得)
・KDDI:屋外3万107局+屋内等2201局=計3万2308局(第1帯域を獲得)
・ソフトバンク:屋外7355局+屋内等300局=計7633局(第4帯域を獲得)
・楽天モバイル:屋外1万5787局+屋内等1385局=計1万7172局(第3帯域を獲得)
3.7GHz帯及び4.5GHz帯の第1~第4帯域は、全キャリアに1つずつ割り当てられた。設置計画数ではKDDIがダントツで多く、新規参入の楽天モバイルが次点となっている。
先述の通りKDDIは比較的メッシュが広範。そのメッシュの中でも多くの場所で5Gサービスを使えるようにしようと考えていると思われる。
一方、ドコモもメッシュは広範だが、設置計画上の総数はKDDIの半分にも満たない。ただし、屋内基地局は一番設置計画数が多い。屋内でのカバレージを優先しているものと思われる。
楽天モバイルは全キャリアの中でメッシュのカバー率が一番低いにもかかわらず、ドコモやソフトバンクよりも基地局の計画総数が多い。先述の高度特定基地局の配置と相まって、その大半は三大都市圏に配置されるものと思われる。ある意味で、かつての「イー・モバイル」をほうふつとさせる展開となりそうだ。
3.7GHz帯及び4.5GHz帯(第5帯域:4000~4100MHz)
・NTTドコモ:屋内5001局+屋内等1205局=計6206局
・KDDI:屋内4160局+屋内等2201局=計6361局(獲得)
・ソフトバンク:屋内3863局+屋内等300局=計4163局
第5帯域は楽天モバイルを除く3キャリアが利用を申請。計画基地局数が一番多かったKDDIが獲得した。
KDDIはこの帯域を第1帯域と重ねて用いることで高トラフィックエリアでの収容数増加に活用するものと思われる。
3.7GHz帯及び4.5GHz帯(第6帯域:4500~4600MHz)
・NTTドコモ:屋外5001局+屋内等3498局=計8499局(獲得)
・KDDI:屋外3373局+屋内等2201局=計5574局
第6帯域はドコモとKDDIの一騎打ち。結果、計画基地局数が一番多かったドコモが獲得した。
ドコモはこの帯域を第2帯域と重ねて用いることで高トラフィックエリアでの収容数増加に活用するものと思われる。
28GHz帯
・NTTドコモ:屋外5001局+屋内等1335局=計6336局(第2帯域を獲得)
・KDDI:屋外1万2756局+屋内等2201局=計1万4957局(第3帯域を獲得)
・ソフトバンク:屋外3885局+屋内等300局=計4185局(第4帯域を獲得)
・楽天モバイル:屋外7948局+屋内等1385局=計8883局(第1帯域を獲得)
28GHz帯は各帯域ともに幅を400MHz確保されている。そのため、各キャリアともにより高速度かつ収容度を高めるべきエリアでピンポイントに使われるものと思われる。
楽天モバイルでは、この帯域の屋外基地局と高度特定基地局の設置計画数が一致している。そのため、高度特定基地局はもれなく28GHz帯での通信に対応すると思われる(あくまでも臆測)。
KDDIの場合、屋内など(屋外でない場所)に設置する計画基地局数が全ての希望帯域で一致する。そう単純ではないかもしれないが、屋内エリアでは全帯域対応の基地局が設置される可能性がある。
●料金プラン:多少の値上げはあっても単価は下がりそう
高速かつ大容量な通信が特徴の5G。3G(W-CDMA/CDMA200)→LTEのときと同様に、世代交代によってよりデータ通信が旺盛になるものと思われる。
そこで気になるのが料金プラン。各キャリアは以下のように5G通信サービスのプラン設計をするとしている(一部体裁を整えて掲載)。
・NTTドコモ:トライアルやプレサービスの利用状況を踏まえて、多様な料金プランを幅広く検討し提供
・KDDI:これまで以上に多種多様な利用者の使い方に応じた安価で最適な料金プランや5Gの大容量コンテンツをデータ量を気にせず楽しめる料金プランを提供
・ソフトバンク:利用ニーズに応じて、4Gで提供している料金水準を一つの基準として、ユーザ利便性の高い料金プランを提供
・楽天モバイル:スマホ向けに低廉かつ需要に応じた料金を、5Gの「高速大容量」「超多接続」「超低遅延」といった特徴を踏まえて設定(期間拘束、違約金付き自動更新および端末契約と通信契約を一体化した料金設定は行わない)
海外で今月(2019年4月)、先行して5G商用サービスを始めた米Verizon Mobileと韓国KTにおけるスマホ向けプランを見てみると、以下のような料金設定となっている。
・Verizon:「Unlimited Plan」に税別10ドル(約1120円)加算(契約から3カ月は加算なし)
・KT:専用プランを税込5万5000~13万ウォン(約5500~1万3000円)で提供
VerizonのUnlimited Planは、データ通信容量が条件付きで無制限となる月額プラン。その料金は契約回線数や通信条件(※1)によって3種類(2回線以上の場合は4種類)用意されており、1回線では75ドル(約8400円)から利用できる。5Gスマホを利用する場合は10ドルの加算料金を加算することになるので、85ドル(約9500円)から利用できるということになる。
※1 条件は主に「優先的に高速通信できる容量の有無(ありのプランではその容量)」「ストリーミング動画視聴時の画質(ビットレート)」「テザリング」の3つ。最安値のプランでは「優先高速通信なし」「ストリーミング動画は480p相当のビットレート」「テザリングは容量無制限だが通信速度は上下600kbps」となる
KTの5Gスマホ向けプランは「5Gスリム」「スーパープラン ベーシック」「スーパープラン スペシャル」「スーパープラン プレミアム」の4種類が用意されており、5Gスリムのみ月間8GBの容量制限(超過時は上下1Mbps)が設けられており、スーパープランは端末単体での通信には月間容量制限がなく(※2)、海外でのデータローミングを追加料金なしで利用できる(※3)。
※2 テザリング利用時はベーシックは月間20GB、スペシャルは月間50GB、プレミアムは月間100GBの容量制限あり。超過時は上下200kbpsの通信速度制限あり※3 ベーシックとスペシャルでは上下最大100kbps、プレミアムでは上下3Mbpsの通信速度制限あり
翻って、日本でLTEスマートフォンが投入された頃を思い返すと、ドコモのLTE通信サービス「Xi」のスマホ向けパケット定額は、3Gサービス(FOMA)のそれらと比べて約500円前後プラスした料金設定。テザリング(PC接続)利用時の料金についてはむしろ値下げされた(その代わりに通信容量による速度制限が課されたが……)。
海外の動向と国内での過去を見る限りは、日本において5G用料金プランが現状よりも極端に高くなることはなさそうだ。
●端末:いきなりスマホ推しの可能性大
5G通信サービスを始めるには、当然端末も重要となる。
Verizonの場合、2018年10月の「5G」通信サービス(※4)開始時に固定回線代替の据え置きルーターを投入した。一方、KTの場合は今月、商用規格「5G NR(New Radio)」で5Gサービスを開始すると同時に5Gスマホ(Galaxy S10 5G)を投入した。
※4 5G NRで採用される予定だった要素技術を取り入れた通信サービスで、商用規格ではない。今月開始したスマホサービスは商用規格である5G NRに準拠している
日本ではどうなるだろうか。ドコモのLTE通信サービスはデータ専用端末からスタートしたが、これはLTEで通信ができるスマホやタブレットの開発が間に合っていなかったという背景もあってのこと。KTの事例のように、5Gではすでに商用スマホが登場している。
それを踏まえると、日本では5G商用サービス開始時にスマホを前面に出すことになると思われる。もちろん、大容量通信がより活用できるPCのためにデータ通信用端末も出るだろうが、スマホと比べると「控え」の役割になるだろう。
5Gは当初、「より高速・低遅延なLTE」として普及していくことになると思われる。建設機械の遠隔操作や自動車の自動運転など、5Gの特徴を“本格的に”生かせるユースケースは、2020年代半ばあたりで花開くことになるだろう。
ともあれ、日本でもいよいよ5Gの「足音」が身近に聞こえるようになった。サービス開始が待ち遠しい。