「かめはめ波を打ちたい」を現実に 日本発の新たなスポーツ競技「HADO」
誰もが子どもの頃に思い描いた世界を現実にするべく、ARスポーツ「HADO」は誕生した。
HADOは、ヘッドマウントディスプレイ、腕にアームセンサーを装着して楽しむ、AR技術を活用したARスポーツのサービス。ユーザーは3対3のチームに分かれて、光の球(エナジーボール)やシールドなどの技を駆使して対戦し、80秒間の試合時間内に取り合った点数で競う。
「かめはめ波を打つためにはどうしたら良いのか」そんな問いから生まれた、新たなスポーツについて、CEOを務める福田浩士氏に話を伺った。
「かめはめ波を打ちたい」が原動力に
──はじめに、創業の経緯を教えてください。
分かりやすく言うと、かめはめ波を打ちたい。そんな想いが昔からありました。どうやったらかめはめ波を打つことができるのか。時代の流れを見ながら開発のタイミングを伺っていました。そんな中、Oculus(オキュラス)やGoogle Glassなどのデバイスが登場し始め、ウェラブルのAR型であれば、いけるのではないかと思い、開発をスタートしました。
──「HADO」をスポーツにしようと思ったのはいつ頃ですか。
最初のプロトタイピングを行なっていた頃、現CCOの本木がチームに入り、大きな方向性が決まりました。ゲームにしてしまうと開発コストも掛かり、大手との戦いで資本的にも厳しい。対戦型のスポーツにした方が消費者に飽きられないコンテンツになり、世界で勝負できるのではないかという考えのもと、本木が企画を作り、開発を進めることになりました。
──いま展開している店舗はどういった形が多いのでしょうか。
基本的には体験型のエンタメ施設がメインのターゲット。テーマパークもあれば、ゲームセンターもあります。トランポリンパーク、レーザータグ、フットネスセンター、さらにはスポッチャなど様々な施設に提供してきました。その中でも一番ハマっているのがスポッチャのタイプです。
「スポーツ業界」はまだまだイノベーションの余地がある
──福田さんから見て、スポーツという市場に対してテクノロジーでアプローチできることはまだまだ可能性を感じますか。
それはもちろんです。(スポーツは)まだまだアナログなので。最近では、アスリートの動きの分析、インターネット配信、ギフティングなどテクノロジーを活用した新サービスが出てきています。
ただ、そもそもの競技自体にイノベーションが起きていないのを強く感じています。テクノロジーの進化が激しいこの時代に、昔から変わらず同じスポーツをやっていますよね。新しい技術でもっと大胆なことをやる人も出てきて良いと思います。それにまともに向き合っているのって誰もいないんですよね。そこらへんを自分達で成功事例を作っていこうと思っています。
──「HADO」のように新たなスポーツを作るというのはなかなか聞きません。
難しいから、誰も取り組まないんだと思います。みんな最初から無理だと思ってしまっていると。サッカー、野球、アメフトなど、一部のスポーツだけが興行的に成功していて、その勢力がひっくり返るということは、ほぼ起きていないので、みんなが無理だと思っているのではないでしょうか。
──スタートアップがイチから何かをやるのには難しさもあると思うのですが、どのように市場を開拓していったのでしょうか?
私たちが起業した5年前でもそうだったのですが、昔に比べるとスタートアップを応援しようという雰囲気がすごく強くなってきています。それは本当に有難いです。私達もドコモのアクセラレタープログラムやKDDI∞Labo(無限ラボ)に参加して様々なアドバイスや支援をしていただきました。
∞ラボでは3ヶ月間メンターが付いたり、DemoDay(デモデイ)で何百人に来てもらったりとそこで一気にリソースが集まりました。知名度が上がって、売り込みやすくもなりました。
言い方はあれですが、スタートアップを利用してやろうと思ってくれる人達が出てきてくれているのは有難いです。例えば、∞ラボではKDDIさんを軸とした企業連合があるのですが、私達はそこでテレビ朝日さんなど、さまざまな大手企業と一緒にビジネスを作ることができました。その点で私達はKDDIさんにすごく感謝をしています。
今年中には新競技のリリースも
──HADOにとってのターニングポイントを感じた瞬間はありましたか?
1つ目はKDDIのDemoDayです。そこをきっかけに火が付いて、色んなメディアにどんどん取り上げて頂けるようになりました。基本的に私達の商品は画がテレビ受けしやすく、露出がさらに取材を呼ぶという良い流れができました。そのおかげで知名度が上がり、ビジネス案件を頂けるようになりました。
もう1つは海外展開ですね。私たちはプロモーション動画をつくり、SNSで継続的に流しています。昨年の3月には、その動画を海外のフェイスブックメディアに取り上げていただき、2000万ほど再生されたのです。一気にそこで海外に広がり、日本だけでなく、毎日色んな国から問い合わせが来るようになりました。COOの冨田や執行役員のリムが事業をリードしてくれており、店舗数は世界23カ国55箇所まで広がってきています。
──今は店舗を増やし、大会の規模が大きくなってきていると思いますが、これからの5年ではどういった姿を目指しているのでしょうか。
私たちは2つのビジネスを展開しています。
1つは店舗事業。そしてもう1つは観戦事業です。店舗事業では店舗を展開し、プレイ人口を増やして収益を上げていく。観戦事業はHADOを放送コンテンツとして流し、観戦人口を増やして放映権や協賛という形で収益を上げていく。スポーツといえばどちらもあると思いますが、その2軸でやっています。
これら両輪を回してプレーヤーと観戦者の相互送客ができるようにしていきたいと思います。プロリーグが憧れの存在となり、観戦者が店舗に訪れる。逆に店舗プレーヤーからプロを目指す。どちらの流れも作っていければと思います。
7人のHADO強豪プレーヤー「ビースト」と一般参加者「チャレンジャー」のバトル番組「HADO BEAST COLOSSEUM」
──HADOが競技として認められたときに、様々な困難も出てくると思いますが対策などはお考えですか?
とにかく他社を巻き込んで企業連合を作って行きます。自分達だけでは何も出来ないので。例えばメディア、広告代理店、スポーツ企業、エンタメ企業など色んな会社を味方につけて1つのパワーを作っていくという動きをいかに出来るかが大事になります。HADOは世界中の注目を集められているので、積極的に企業を巻き込んでさらなる成長につなげたいと考えています。
──これからはHADOに次ぐ、新たなスポーツも考えているのでしょうか。
はい。今ちょうど、作っているところです。新競技も今年リリースする予定です。楽しみにしていてください。