オリンパスの「OM-D E-M1X」タフな環境でタフな仕事をする人のカメラ、でかいけど手ブレ補正は超強力

タフな環境でタフな仕事をする人のカメラ「OM-D E-M1X」 でかいけど手ブレ補正は超強力

 なんともデカいミラーレス一眼の登場である。

 いや、デカいだけなら他にもあるけど、マイクロフォーサーズ機では一番デカい。それがオリンパスの「OM-D E-M1X」。

 もちろんデカいのには訳がある。

 縦位置グリップを一体化し、バッテリーを2個内蔵してる。しかも処理能力を上げるために画像処理エンジンを2つ搭載している。そりゃデカいわけだ。

 さらにただでさえ強力な手ブレ補正がさらに強くなり、防塵防滴耐寒耐衝撃とタフさも強化された。

 新製品発表会で紹介されたシーンなんてこれである。

 そこら中から水を浴びて平気というのをアピールしてるわけで、土砂降り上等、汚れたら水洗い上等というハイエンド機なのだ。

 ミラーレス一眼って「タフ」のイメージがあまりなかったし(むしろその逆)、マイクロフォーサーズのメリットって「センサーが小さいのでシステム全体を小さく作れる」ことだったのだが、E-M1Xはその逆なのである。

●E-M1Xが大きいのは理由がある

 E-M1Xはどのくらいデカいか。「E-M1 Mark II」と比べて見るとよく分かる。

 縦位置グリップのぶん、背が高くなったわけだが、ボディサイズに対してセンサーが小さいのが妙にアンバランスで面白い。

 しかもグリップ部のデザインも変わり、シャッターボタン周りについていたダイヤルが分離された。

 で、質量は約997グラム(バッテリーを2個入れた場合)と1キロ近い。一眼レフと変わらない重さだ。

 でもボディはある程度重い方が大きなレンズを付けて構えたときに安定するわけで、腕は疲れるけど、確かにどっしりと構えられる。

 ボディが大きくなった分、操作系も見直され、主な機能に専用のボタンが付いた。

 マウントの脇には2つのボタン(指で触ればどっちのボタンか分かるようになっている)。物理的には4つあるけど2つは縦位置用だから。

 縦位置でも基本的な操作はほぼ変わらないのだ。

 背面を見ると、E-M1 Mark IIに比べてボタンが増えてる。モニターの右上にAFポイント操作用のスティック(マルチセレクター)が付き、モニターの下にはWBボタンが用意された。

 上から見ると露出補正の隣にISO感度ボタンがつき、左肩にはブラケットボタンが追加された。

 ISO感度とWBに専用ボタンが付いたのは便利。

 さらにそれらのボタン類はめちゃ細かくカスタマイズできる。

 背面にあるLOCKレバーは間違って触って反応しないよう縦位置用ボタンやレバーをロックするものだが、C-LOCKを使えばどのボタンをロックするか設定もできる。

 必要なセッティングをとっさに行いさっと撮るために考えられた設計なのだ。

 ただデカいだけじゃないのである。

 縦位置グリップの中にはバッテリーが2つ入っている。

 もちろん片方だけでも動作するけど、タフな現場ではバッテリー交換してる場合じゃないこともあるわけで、これは必須。バッテリー自体はE-M1 Mark IIのものと同じだ。

 しかも、OM-Dでは初のボディ内充電に対応。USB-C端子を使ってUSB充電できるようになった。USB充電は遅いけど、USB PD対応のモバイルバッテリーやACアダプタを使えば高速な充電も可能だ。まあ、USB充電に関しては「やっとできるようになった」って感じだけど。

 メディアはSDカードのデュアルスロット。より防塵防滴性能を高めるために、スロットの蓋の開閉はレバーを回さなきゃいけない。

 とまあこんな感じだ。

●超強力な手ブレ補正や手持ちハイレゾショットを搭載

 E-M1XはE-M1シリーズのeXtend版……という意味のXなのかどうかは知らないけど(今思いついた)、だからE-M1 Mark IIを置き換えるものじゃない。

 イメージセンサーもおそらくはE-M1 Mark IIと同じ。マイクロフォーサーズで約2037万画素だ。

 撮影性能で進化したのは、まず手ブレ補正。もともとE-M1 Mark IIは5.5段分という驚異的なボディ内手ブレ補正を誇り、これと手ブレ補正機構を持つレンズを組み合わせると手持ちで1秒以上もokという非常識な手ブレ補正がスゴかったのだが、E-M1Xの手ブレ補正は非常識を超えた。

 何をいってるんだかよく分からないけど、ボディ内で7段、手ブレ補正機構を持つレンズと組み合わせたら7.5段分の手ブレ補正というもはや何がなんだか分からないレベルだ。

 もちろんスローシャッター時は撮影者の能力も大事なのだが、シャッタースピード4秒でこんな感じ。F8に絞りISO200でシャッタースピード4秒で手持ちで撮った夜景だ。

 もともとすごいのがさらにすごくなったわけだ。製品発表会では、望遠で4秒の手持ち撮影が可能といっていた。ちょっとムチャ振り感あるけど、プロの写真家ならできそうだ。

 もう一つE-M1Xならではの機能がある。E-M1 Mark IIでセンサーを微妙に動かしつつ8枚連写して合成する「ハイレゾショット」機能が付いたが、それは「三脚使用時オンリー」だった。

 E-M1Xは「手持ちハイレゾショット」が可能になった。

 いつものガスタンクでチェックしてみよう。

 実際に手持ちハイレゾショットでディテールの描写力は上がったか。差が分かりやすいよう文字部分にフォーカスして等倍で見比べてみた。

 全然違う。明らかに差が出ている。電子シャッターを使って連写し、微妙な手ブレによるずれを使って合成するという手法なので被写体が動いてると(風で木が揺れるとか)、不自然になったりするが(でもある程度は対応してくれるようだ)、手持ちでこれができるのはすごい。

 さらに、E-M1Xならではの機能として、被写体追従AFの強化も挙げたい。

 E-M1Xは望遠での動体連写ってのも重要な仕事の一つ。

 特に被写体を指定することで、自動的に追従する「インテリジェント被写体認識AF」が用意された。指定できる被写体は「鉄道」「モータースポーツ(自動車やバイク)」「飛行機」の3つだ。とくに自動車やバイクは「ドライバーに自動的にフォーカスする」という念の入りようだ。

 追尾被写体を設定し、C-AFの被写体追尾モードにするとこの機能が働く。

 電車の場合はこんな感じ。本物の電車だと画面撮影してる余裕がないので、プラレールで代用してみた。プラレールでもちゃんと認識してくれたのがなんか面白い。まず電車だと認識してそこにフォーカスが合い、運転席にぴたっと追従するのだ。運転席を見つけたのが分かるかと思う。

 普通の車両はフロントがフラットなので運転席にこだわらなくてもいいけど、特急車両や自動車、バイクとなると、ピントの山が先端部に来るとちょっと良くない。合わせたいのはドライバーだからだ。

 実際に撮影したの写真はこちら。ちゃんとフロントの窓に食いついたまま高速連写してくれた。連写速度は最高で秒18コマ(AF/AE追従)、電子シャッターでAF/AE固定なら最高で秒60コマの高速連写が可能だ。

 これはなかなか良い。連写時のファインダー表示もしっかりしていて被写体を追いながら連写できる。

 メインターゲットはモータースポーツかなと思う。雨の中、モータースポーツを撮ったことあるけど、あれ、かなり過酷だから。

 将来は動物や鳥といった被写体にも対応して欲しいと思う。個人的には動物の瞳AFは欲しい。

 人物に関しては、すでに瞳AFは対応していたわけで、そこは変わらず。もうちょっと進化して瞳が小さいときでも捕まえてほしいとか、顔が見えてなくても人物検出して欲しいとか思うけど。このクラスのカメラならもうガシガシとなんでも追従してほしい感じだ。

 ちゃんと手前の瞳にあっているかどうか分かりやすいよう、25mm F1.2のレンズで絞り開放で撮ってみた。

 当たり前だけど、縦位置グリップがあると縦横の切替が楽だし、縦位置での撮影もしやすいわ。

 もう1枚、横位置でズームレンズを使ったポートレートを。ブランコに乗っている姿をC-AFで追いかけて狙ってみた。

 被写体を自動的に見つけて追従する以外の被写体の時は、新しく追加されたマルチセレクターが便利。これを親指で押してAFポイントを指定するわけで、最近のデジタル一眼でトレンドとなっているインタフェースだ。

 ISO感度はISO200からISO25600。

 今回たまたまあらたに発表された「M.ZUIKO DIGITAL 24-200mm F3.5-6.3」をお借りすることができたので、それで撮った室内高感度作例を。

 シャッタースピードは最高で1/8000秒、電子シャッター(静音モード)を使うと1/32000秒まで上げられる。

 背面モニターはタッチパネルになっており、タッチパッドAFを使うこともできる。

 モニターはバリアングル式でモニタを横に開き、縦位置や横位置でローアングル・ハイアングル撮影をさっとできる。自撮りもできるけど、これで自撮りする人は……あまりいないと思う。

 EVFは約236万ピクセルの液晶パネルを使用。パネル自体はE-M1 Mark IIと同等と思われるが光学系が変わって少しファインダー倍率があがった。明るくて見やすい(明るく写りすぎて露出を間違えそうになることはあるけど)。

●タフな環境でタフな仕事をする人のカメラ

 E-M1Xは素晴らしいカメラである。構えたときの安定感はあるし、1ボタン1機能で使えるので操作もしやすい。ドライブモードやフォーカスモードはもっと素早く切り替えられる位置にスイッチかダイヤルが欲しかったかなと思うけどそのくらいか。

 しかも頑丈だし、防塵防滴はハイレベルだし、ボディ内手ブレ補正の機能はおそらくトップだ。これに慣れちゃうと、他社のカメラの手ブレ補正がぬるく感じるといって過言ではないレベル。

 フィールドワークで便利なGPSも内蔵しており、手持ちで超望遠レンズを構えてスポーツや野鳥やその他動体を撮る人、山や川、海などカメラにとって過酷な環境へ持ち出す人に向けた、タフなミラーレス一眼、という希有な存在なのだ。

 だからE-M1Xはフラッグシップではあるけど、E-M1 Mark IIとは方向性が違う。ハイエンドのOM-Dを求める人は、E-M1XかE-M1 Mark IIか自分にあったものを選ぶべきかと思う。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏