「東芝のLibretto」シリーズ【平成を彩ったPC】世界初で始まり世界初で終わった

【平成を彩ったPC】世界初で始まり世界初で終わった「Libretto」シリーズ

 “平成”という元号が終わる2019年、「PC USER」は9月に創刊25周年を迎えます。そんな年だからこそできる、平成30年間のガジェットを振り返る連載「30年に渡る“平成のツワモノ”に光を当てる」。第1回のソニー「バイオノート505(PCG-505)」、第2回の松下電器産業(当時)「Let's note AL-N2」、第3回のカシオ計算機「CASSIOPEIA」に続き、東芝の「Libretto 100」に迫ってみます。

●ミニノートPCというジャンルを作り出した「Libretto」シリーズ

 東芝(現Dynabook)のPCといえば、やはり1989年(平成元年)に登場したDynaBookシリーズが、鈴木亜久里さん出演のTV CMと合わせて印象深いという方が多いかと思います。このDynaBookシリーズは自らを「ブックコンピュータ」と名乗り、当時一般的に使われていた「ラップトップコンピュータ」との違いを打ち出していました。何より20万円を切る価格と、2.7kgという軽量ボディーで大いに注目を集めていたのも忘れてはいけません。

 それから7年後の1996年、Windows 95が本格的に動くモバイルPCとして同社は「ミニノート」の代名詞となる「Libretto 20」を投入、予想外ともいえる大ヒットを飛ばします。ここで取り上げる「Libretto 100」は、同20~70へとバージョンアップを続けたLibrettoシリーズ初となるフルモデルチェンジを果たしたモデルです。

 ずばり選出の理由は、筆者が初めて欲しくなったLibrettoシリーズだったからです。今では通じにくい“VHSビデオテープ”サイズというコンパクトボディーのLibretto 20も衝撃的でしたが、PCとして利用するにはあまりにも小さく、普段使いをするには妥協を強いられる部分が多かったのです。“PC”として使うにはもうちょっと何とかならんものかと思っていたところに現れたのが、このLibretto 100でした。

 1998年3月に発表されたLibretto 100は、開発コード名Tillamook(オレゴン州の保養地)と呼ばれた最新の0.25μm版MMX Pentium 166MHzを搭載していました(従来の0.35μmから微細化することにより、消費電力が定格で2.9Wにまで低減)。システムバスが、これまでの60MHzから66MHzに引き上げられたのもポイントです。メモリも32MBのEDO DRAM、HDDも2.1GBと着実に強化されています。

 さらに液晶ディスプレイが7.1型と一回り大きくなり、画面解像度も800×480ピクセルと従来の640×480ピクセルから拡大し、パームレストも幅広になりました。Libretto 70から導入された14.5mmピッチのキーボードも継続となり、液晶パネルの脇に並んだリブポイント(左右のクリックボタンは液晶天面に配置)と合わせて、ようやく通常のPCとして利用できるような環境になったのです。

 その分、ボディーサイズは210(幅)×132(奥行き)×35(厚さ)mmと「B6ファイルサイズ」まで大型化(Libretto 70+大容量バッテリーとほぼ同じ)したのに加え、重量も約950g(大容量バッテリー搭載時は約1060g)とサブノートPCに近づいてしまいました。さらにバッテリー駆動時間は標準バッテリーで約1.5~2時間、大容量バッテリーでも約3~4時間(いずれも公称値)とLibretto 70よりも短くなってしまったのです。

 PCカードスロットがTYPE II×2(TYPE III×1)に増加してZVポートやCardBus対応となり、レジューム機能のサポートや標準添付のI/OアダプタにPS/2ポートが追加と、細かな改良も目に付きますが、“あちらを立てればこちらが立たず”という、当時のミニ・サブノートPCが抱えていたジレンマ状態から抜けきれなかったモデルでもありました。

 その後のLibrettoシリーズですが、さらなるスリム化や着脱式のカメラ「SCOOPY」とリモコン(i.Shuttle)を備えたエンターテインメント化、原点回帰化といった変遷を経て、2010年に同社のノートPC事業25周年記念モデルの一環として登場した「libretto W100」で復活を遂げました。このlibretto W100は、ハードウェアのキーボードを省いてマルチタッチ対応の7型ワイド液晶ディスプレイを2枚装備した意欲作で、さまざまな世界初を獲得してきた同社らしい製品でもありました。

 2018年にシャープ傘下となり、新生Dynabookとして生まれ変わった今後に果たしてLibrettoシリーズが再登板となるでしょうか。新dynabookシリーズの行方とともに、見守っていきたいと思います。


市場シェアの推移

東芝のダイナブックは日本においてはノートPCの代名詞となった。世界市場においても(なお海外ではダイナブックの商標は使われていない)、東芝は北米と欧州に強固な基盤を持ち、東芝のノートPCは1986年から1993年までノートPCシェア世界1位を獲得した。1994年にはコンパックにノートPC世界シェア1位を奪われ、東芝が初めて世界2位となる「コンパック・ショック」を経験したが、1994年にふたたび東芝が1位となり、1994年から2000年までノートPC世界シェア7年連続1位を獲得した。

東芝のノートPCシェアは2001年にはDellに抜かれて世界2位となり、その後もコンパックを買収したヒューレット・パッカードや、さらにはAcerやレノボと言った新興メーカーにもシェアを抜かれていった。2009年の世界PC販売ランキングは、HP、エイサー、デル、レノボに次いで東芝が5位となったが(出荷台数ベース、IDC調査)、それからさらにシェアを下げた。2016年度のノートPC世界シェアは世界8位の1.6%(出荷台数ベース、TrendForce調査)で、2017年度はランキングから消えた。

日本市場においては、2006年BCNランキングにてPOSデータ集計セールスナンバーワン・ベンダーを選ぶ第8回「BCN AWARD 2007」実売数ノートPC部門1位を初受賞するなど、日本国内におけるノートパソコンの販売シェアは堅調である。世界シェアがほとんど無くなった2016年度においても堅調で、日本のPC市場全体における東芝のシェアは4位で、12.4%のシェアを持つ(出荷台数ベース、MM総研調査)。

シャープへのPC事業譲渡、そしてDynabook株式会社へ

2017年の販売台数は180万台。2018年6月現在、東芝のPC事業は5年連続の赤字に陥っており、シャープへTCS株式の80.1%を約40億円で売却し、PC事業から撤退。1981年に発売されたオリジナルパソコン「パソピア」シリーズから始まった東芝のPC事業はシャープへの事業譲渡により37年の歴史に幕を下ろした。一方のシャープにとっては2010年のMebius生産終了以来、8年ぶりのPC事業再参入となった。

2018年12月3日、TCSは2019年1月1日付で「Dynabook株式会社」(Dynabook Inc.)へ社名変更することを発表した。これに伴い、東芝ブランドのパソコンは名実共に歴史に幕を下ろす。Mebiusブランドの復活については「商品のニックネームとしてはあるかもしれない」と含みを持たせている。

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