なぜ歯医者は急に行っても診てくれないの? 現役歯科医が明かす「予約制」の理由
からだの病気を診る内科のクリニックなどと違って、歯科は「予約制」が原則です。なぜ、そのようになっているのでしょうか? 遅刻やドタキャンはやはり、迷惑なのでしょうか? 痛みが出るなど、すぐに診てもらいたいときは予約なしでも対応してもらえるのでしょうか? テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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内科の場合、病気の診断がついて治療法さえ決まれば、次の診察からは「問診→薬の処方」という手順で終わることも多いでしょう。
しかし、歯科は違います。歯科医師が手を動かす処置が必要です。軽いむし歯の場合でも、歯を削ってそこにコンポジットレジンを詰めるという一連の作業があります。重いむし歯では削る部分が多くなり、その後、かぶせものを作るための型取りなどもあるので、かなりの時間を要します。
抜歯が必要な場合は麻酔の準備から始めるので、さらに時間がかかることも。こうした歯科治療の性質上、1日に診ることのできる患者さんの数が決まってしまうため、予約制になっているのです。
なお、経営的な側面もあり、保険診療では1人の患者さんに時間をかけすぎるわけにはいきません。歯科医院にもよりますが、1人あたり約30分の治療時間を想定し、予約制としているところが多いようです(経験の浅い、若い歯科医師では同じ治療が30分では終わらないことも多く、1時間で設定していることも多いです)。
歯科医師は予約の時間内でその患者さんにどのような治療を、どう行うかを事前に考えます。いわゆる治療計画です。そして30分という時間は決して余裕がある時間ではないので、治療開始が予定より遅れると困るのです。
多くの歯科医院では、仕事や学校が終わる夕方ごろから予約が集中し、次々と患者さんがやってきます。このため、後ろに引きのばすことは難しい状態です。
例えば治療が10分遅れでスタートした場合、その患者さんに使える時間はケース・バイ・ケースではありますが、20分しかないということになります。
時間がない中で急いで処置をすると治療が中途半端になってしまう恐れがあります。これは歯科医師にとっても、患者さんにとってもデメリットです。
ドタキャンは歯科医師との信頼関係を失う原因になります。予約時間は1人の患者さんのためだけに空けてあるので、治療に来なかった場合、その時間が無駄になってしまいます。
ちなみに、ドタキャンをされた場合、歯科医師は怒るというよりは患者さんに何かあったのではないかと心配することのほうが多いと思います。ですから、当日、受診できなくなった場合は電話一本でいいので、ぜひ連絡をしてください。
仮にその歯科医院に不安を感じ、受診をやめたいと思った場合もできれば無断キャンセルではなく、その旨を伝えてもらったほうがありがたいです(それで怒るような歯科医院であれば、そのほうが問題です)。
■歯科医院の都合でたびたび治療開始時間が遅れる場合は要注意
一方、歯科医院の都合で、予約時間を過ぎて10~15分も待たされる場合もあるかもしれません。
前述のように、どこかで治療スタートが遅れたことで、後ろにずれ込んでしまっていることが理由かもしれません。しかし、それは歯科医院の問題です。
こうしたことを繰り返していると、患者さんも「どうせ遅れるのだから」と予約時間を過ぎてからやってくるようになります。みんなが同じことをすると患者さんの待ち時間はどんどん長くなり、治療が中途半端になる危険性だけでなく、「予約制なのに30分も待たなければならない」といった事態になります。これは好ましくありません。
歯科医師に技術があり、治療計画がきちんと立てられている。歯科医師とスタッフの連携がとれていて、無理な予約(同じ時間に複数の患者さんを入れる、など)をとっていない。こういった歯科医院であれば、治療のスタートがたびたび遅れるようなことはないでしょう。言い方を換えれば、予約をきちんと守ってくれるのが「いい歯科医院」といえるのです。
歯の痛みなど、急患には随時、対応してくれる歯科医院がほとんどです。歯科医師も医師と同じく、苦しんでいる患者さんに対して、できる限りの対応をすべきという意識を持っています。ホスピタリティーですね。急患の依頼がきたら、診療の合間や空き時間をやりくりして、治療枠を作ります。
ただし、他の患者さんの予約が入っている時間は空けられないので、いきなり歯科医院を訪ねてこられてもすぐには診療ができません。再度、出直してもらうことが多くなってしまうので、まずは電話で問い合わせるのがいいでしょう。
◯若林健史(わかばやし・けんじ)
歯科医師。若林歯科医院院長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演
