「寝落ち電話」をSNS投稿するカップルの心理
2015年、筆者らは「間接自慢」という言葉を創りました。これは、今の若者たちが、「直接的・ストレートにではなく、間接的・婉曲的に言いにくいことを表現するようになっている」という内容、意味です。
『間接自慢する若者たち』という書籍でも紹介していますが、SNSでつながり過ぎた若者たちは、直接的な表現、特に自慢をすると、SNS以前より多くの人たちから「うざい」と思われるようになってしまっています。場合によっては炎上してしまうこともあります。
そんな間接自慢という言葉ができてから早3年。最近では間接自慢の新しい手法が出てきているので、現役の大学生たちがそれらを紹介してくれます。
■夜から朝までLINE通話したままの「寝落ち電話」
最近、LINEの無料通話を利用した「寝落ち電話」が若者の間で流行っている。寝落ち電話とは彼氏や彼女(もしくは仲のいい友達)と夜に寝る前から通話を始めて、次の日の朝まで通話しっぱなしという状態を示す。無料通話アプリが当たり前になり、通話しっぱなしでもお金はかからないのだ。
通話しっぱなしといっても、ずっと話し続けているわけではなく、「まったく会話をしない時間がほとんど」というカップルも少なくない。寝落ち電話という名前にある通り、どちらかが先に「寝落ち(電話をしたまま眠りに入ってしまうこと)」もしばしば。相手のいびきさえ聞こえてくることもよくあるそうだ。
都内の女子大に通うKさんは、彼氏と毎晩寝落ち電話をしている。彼女いわく「寝落ち電話をしていたらずっと彼氏が隣にいる気がして落ち着く。彼氏が朝起きたときの声で自分が目を覚ますのが同棲している感じがしていい」とのことだ。
まるで同棲という言葉からもわかるように、寝落ち電話は、相手のいびきが聞こえても、長時間通話して無言になっても、まったく気兼ねしない間柄でないと実行しにくいという面がある。つまり、自然体で付き合っているカップルでなければ難しく、いろいろなカップルがいる中でもハードルはやや高いものなのだ。
この寝落ち電話、TwitterをはじめとするSNSを通して、通話時間の画像とともに投稿されることが多い。自分の周りの友達に、自分たちカップルが寝落ち電話をしていることを見せることで、「こんなにもお互いに自然な姿でいられる、深い関係なんだ」ということを、間接的に自慢したいという面もあるのではないだろうか。
■両親同行でデートを楽しむ「彼親デート」
恋人とのデートに自分か相手の親が同行する、または恋人が不在の状態で相手の親と出かける。そんな行動をする若者たちがいる。「彼親(かれおや)デート」と呼ばれることもあり、昨今、SNS上で見かけることが増えている。
彼親デートを行う場所としては、実家から近くて気軽に出かけられる、コストコやアウトレットといった広めのショッピングセンターやモールが多く見られる。中にはディズニーランドや水族館といったテーマパークへ行く人たちもいるようだ。
彼親デートのSNS投稿には特徴がある。多くがインスタグラムへの投稿なのだが、タイムラインでなく、ストーリーズ機能を通して投稿されるのだ。その理由として、「彼親デートはインスタ映えするようなデートではないから」「インスタに彼親デートの様子を投稿してしまったら相手の親に対して失礼だと思うから」といったことが挙げられた。
相手の親と一緒に出かけることを、多くの当事者たちが「インスタ映えするものでもないし、相手の親に迷惑もかけたくない」と思っている。一方で彼親デートは、相手の親と買い物に行くほど親しい関係である証明ともいえる。
そんな「彼親デートをしていること、そんな親密な間柄のカップルであることを、周りの友達にちょっとアピールしたい」という気持ちもあるかもしれない。そんな若者にとって、投稿から24時間で消えるストーリーズ機能は絶好の手段なのだろう。
都内の女子大に通う社交的なAさん。彼女は、彼氏と交際を始めて3カ月で彼親デートをしたという。Aさんいわく、「彼親デートは、相手の親に二人の関係を認められたという満足感を得られる」とのこと。
彼親デートをすることで、相手の親と出かけるほど、自分たちはお互いの関係を長い目で見てもらっている仲だということを実感できるそうだ。そうした意味のある彼親デートを、周りの友達にSNS上などで発信することで、自分たちの交際は親が公認するほど誠実で深い関係なのだと表明しているのだとも言える。みんなにそれとなく知らせたい、つまり間接自慢していると言ってもいいだろう。
最近の若者のトレンドコーデといえば「シミラールック」である。インスタグラムの投稿件数を見るとおり、まだまだおそろコーデまではいかなくとも、増えているのは確かと言える。
シミラールックとは、英語の“similar”に由来しているとおり、おそろいのアイテムではなく、似たようなテイスト(フォルムや柄、ブランドや色など)のアイテムで組み合わせるコーデを示す。カップルだけにとどまらず、友達同士でシミラールックをする若者も少なくない。一見して普通のコーデだと感じても、並んだ姿を見てみれば確かにテイストが似ている、といった合わせ方がシミラールックの特徴として挙げられる。
このシミラールックも「間接自慢」の一形態ということができそうだ。
■よりさりげなくアピールできる「シミラールック」
都内の某大学に通うCさんは、友達4人とディズニーランドで遊ぶときにシミラールックをしたそうだ。はじめは全身を全員同じにそろえる「おそろコーデをしよう!」と1人の友達から提案されたCさんたち。しかし、Cさんは全員が全身の服装をそろえることで、ファッションに自分らしさが出なくなってしまうのが嫌だった。それに、おそろコーデ写真をSNSに投稿すると「いかにもな仲よし自慢」になってしまうことも危惧した。
そこでCさんは、シミラールックを提案したのだという。
シミラールックは「おそろコーデ」のように、わざわざ新しい服を買いそろえる必要がなく、もともとお互いが持っている服でコーデができるという、金銭的なメリットもある。
「お互いのセンスは尊重したいし、浪費も避けたい。だけど、さりげなく仲良しアピールはしたい」。シミラールックは、そう考える若者ならではの折衷案的なやり方だということが、Cさんの事例から見てとれる。
シミラールックは誰かが提案した一つのコーデにそろえるだけでなく、自分たちなりのセンスで工夫をして統一感を出すコーデである。カップルでも友達同士でも、それぞれの人に工夫が必要となるため、ファッションセンスはおそろコーデよりも高度なものが求められる。そうした難易度の高い、シミラールックを行うことで、彼氏(彼女)や自分の周りの友達とはただ仲がいいだけでなく、服の価値観やセンスまで合っている関係性なんだ、とアピールすることもできる。これも、うまい間接自慢といってもいいのではないだろうか。
「寝落ち電話」「彼親デート」「シミラールック」、3つの事例に共通して言えることは、自分と彼氏や彼女との関係性の豊かさを、SNSを駆使して間接的に自慢していることである。「寝落ち電話」であれば気兼ねしない関係であること、「彼親デート」であれば誠実な付き合いであること、「シミラールック」であれば共通したセンスや価値観を持っていることである。
従来までの若者は、自分に彼氏(彼女)がいるのかどうか、友達がたくさんいるのかどうか、などといった人間関係の広がりについて、SNSを通じてそれとなく公開してきた。そこでアピールされてきたのは「友だちの多さ」「恋人の有無」といった表面的なものであったかもしれない。
しかし、3つの間接自慢の事例に見られるとおり、今の若者が価値を置くポイントは少し変わってきているかもしれない。すなわち、自分の周りをとりまく人間関係の「深さ」に価値を置き、人にも伝えたいと思っているのではないだろうか。
■原田の総評:”深さ”を間接自慢したい若者たち
現場研究員のリポート、いかがでしたでしょうか。それぞれの事例とも、「今の若者らしい特徴・事情」と、SNS以降に生まれた若者文化である「間接自慢」が、うまく掛け合わされて新しい事例となって広がっていることがわかります。
例えば、「寝落ち電話」は、通話無料のLINEが普及しなければ生まれなかった事例だと思います。LINE以前の若者たちは、携帯電話代を過剰に気にして、なるべく通話をしないようにしていました(逆にだから、今や世界的にミレニアル世代の文化となったメールの絵文字や顔文字が生まれた)。
ところが、LINEが普及して以降、カップルが寝落ちするまで通話をし続けるといった、「贅沢なまでの長時間通話ニーズ」が生まれ、ラブラブ状況を他者にも見せびらかしたいという間接自慢が掛け合わされ、この事例が生まれていることがわかります。
「彼親デート」は、前提として、今の若者たちは両親との関係が非常に密接になってきていることがあります。それに伴って、交際相手の親との関係も大変よくなっており、こうした状況と間接自慢が掛け合わさり、新しい事例が生まれています。
「シミラールック」にも背景があります。大体ここ5年以上10年未満くらいでしょうか、若者たちの間では、「ニコイチ」「サンコイチ」「おそろコーデ」など、友達や恋人やサークルなどの集団で、おそろいの服を着ることが流行っていました。しかし、皆がおそろコーデをやると、ちょっとその行為がありきたりでダサい行為と認識されるようになっていきます。こうした、「おそろコーデはしたいけど、まったく同じだとダサい」という若者の複雑なニーズと間接自慢が掛け合わさり、この事例が生まれていることがわかります。
いずれにせよ、読者の皆さんも、自社商品やサービスによって、若者たちが新しい間接自慢ができるように仕組むことができると、自社商品やサービスがヒットするだけではなく、若者たちの新しい習慣や行為や文化を生み出すことにつながっていくかもしれません。
